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キウ   作者: Dariahrose
修行
21/24

第二十章 ~ 婆ちゃんの夢 ~

『龍は、何を言っているんだ・・。 婆ちゃんは、とっくの昔に死んだ・・。 』


キウは、心の中で思った。

しかし、言葉として口から、それは出て来なかった。


『防護膜を張るって・・、どうやって・・。 』


◇◆◇◆◇


気が付くと、キウは、敷布の所に戻っていた。


ジッ!


蝋燭が消えかける音がした。

キウは、新しい蝋燭に火を移して、蝋燭を入れ替えた。


『あれ? どうやって、戻って来たんだろう・・? 』


キウには、川から、歩いて帰って来た記憶が無い。

しかし、敷布の所に居ると言うことは、川から歩いて、帰って来たずであった。


「キウ、キウ! 」


懐かしい声が聞こえた。

しかし、それは聞こえるはずの無い声。

どんなに、聞きたくても、もう、二度と聞こえてくるはずの無い声・・。


「キウ、よ~い・・。 」


やっぱり、婆ちゃんの声だ。


キウは、辺りを見回した。


キウは、敷布の右の隅っこに、正座している、小さな人形のような、婆ちゃんを見つけた。


「・・婆ちゃん? 」


「そうじゃ。 やっと気が付いたのぅ・・。 」


「婆ちゃん、何でそんなに小さいんだ? 」


「何かえ? そん言い方は・・。 久しぶりなんじゃき、もっと言い方があるやろう。 小さいっち、そげ、小さいかのぅ? 」


「小せぇ! 」


キウは、大笑いした。


「それじゃ! 何か、(わり)いことが、あってん、どん詰まりなっちから、いけん! 前を、向いちょらんと! ・・・・落ち込んだら、そげ、笑ろうたら、良いんじゃ。 」


「笑えんかったら? 」


「それでも、無理やり笑うんじゃ! 腹抱えちから、腹ん底から、笑うんじゃ! 」


「婆ちゃん、今やから言うけど、婆ちゃんが言いよること、半分しか分からんかった・・。 」


婆ちゃんは、目をつむって自分のおでこを中指で、優しく突いた。


「これで良いか? わしが、何を言いよるか分かるか? 」


「うん・・。 」


「今は、辛いじゃろう。 心も、体も。 心は、ハスミの身を案じて、体は、暗羽(くらば)()の磁場に中てられて・・。 」


「・・・・。 」


「龍が、言ってたけど、どうやったら、防護膜を張れるの? 」


(うぐいす)! 」


(うぐいす)!? 」


「そうじゃ。 (うぐいす)になるんじゃ。 」


「???? 」


「ほ~ほけっきょう! 」


「・・・・。 」


「“ほけきょう”と、心の中で言いながら、目と目の間を薬指の先で触るんじゃ。 」


「それで良いの・・? 」


キウは、眉間にしわをよらせながら、少し投げやりに言った。


「本当じゃ! やってみれ! 」


「ほけきょう・・。 」


キウは、そう言いながら、目と目の間を薬指で触った。

それと、同時に、婆ちゃんが、キウのおでこを触った。


すると、辺り一面に、真っ白な光が広がって、何も見えなくなった・・・・。


ジッ!


提灯の蝋燭が、消えそうになる音に、キウは飛び起きた。

婆ちゃんの姿は、消えていた。

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