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巻き込まれる

ある日、井上からボーリング大会の誘いがあった。閉店後に数台のタクシーでちょっと離れたボーリング場まで行くとのこと。正直めんどくさくて

「行かない」

と即答すると

「頼む!協力してくれ!!!」

と拝んできた。案の定山田さんたちの企画で彼女も参加するらしい。全くめんどくさいが、

「同期会も兼ねてるからさ。行こうぜ」

と井上に押し切られ、参加することになった。


ボーリング大会当日。オレは遅番で仕事が押していた。定時上がりの井上から先に行っているが絶対来るように!とLINEがあった。このまま帰ってしまおうかと思ったが、休憩室で会った山田さんと加藤さんから彼女がすごく楽しみにしていること、オレからのアドバイスを真面目に実践してだいぶ他の男とも話せるようなったこと、このボーリング大会は男といても楽しめるかの試験なのだ、と聞かされていたので渋々行くことにする。

職員通用口に行くと普段はほとんど会わない同期の中川が待っていた。

「・・・オレが逃げないように見張りか?」

嫌味をいうと中川は

「そういうことだ」

とオレを待たせてあったタクシーに押し込み、本人も座るとタクシーはあっという間に動き出した。

はあ、頭を抱えてため息をつくオレを見て中川は苦笑する。

「そんなに嫌がるなよ。まあ、正直この時間から遊びに行くほどの元気はないけどな」

「そうだろう。井上は目的が違うから、頑張れるだろうけどさ」

はは、と中川が笑う。同期のなかでオレと中川は中途採用組だったから話しやすかった。

「まあ、学生に戻った気分で?あと数時間楽しもうぜ」

「何年前の話だよ」

そんなたわいもない話をしているうちにボーリング場についた。

エレベーターで上がるとボーリング場独特の騒々しさに包まれる。そういえばボーリングなんて何年ぶりだ???

「お疲れ、お疲れ」

井上がニコニコと出迎える。

「ほんとにお疲れだわ」

というと

「じゃあ、お荷物お持ちいたしましょう」

と荷物を奪われ受付に連れて行かれる。どんなメンバーが来ているのかと見渡せば彼女がホッとしたように笑ってお辞儀をしてくれる。・・・オレが来ないんじゃないかと心配させたのだろうかと罪悪感に似た気持ちを感じ、いやいや、そんな責任ないだろうと振り払う。後ろで中川のふーんという声が聞こえた。

「あの子が後藤のファン第一号か」

「なんだよ、第一号って」

まるで第二号もいそうな言いまわしにつっこむと井上がどや顔で

「中川さん、第一号ではないですよ。唯一の、ファンです」

といったのでやっぱりボディに一発食らわせた。


彼女と同じグループにさせられるんじゃないかと思ったら、そこは厳格なくじによってグループ分けがされている、とのことでオレは山田さんと同じグループだった。中川が彼女と同じグループになる。ほとんど面識のない中川と同じグループで戸惑ったようだったが、赤くもならずちゃんと笑顔で挨拶できていた。うんうん、成長しているじゃないか、と思うが・・・オレ、来る意味あった???

山田さんが苦笑しながら

「井上くんはいい子なんだけどねえ。詰めが甘いよね。厳格なくじって何よ」

と話しかけてきた。

「あいつバカだから」

幹事なんだから狙ってる山田さんと同じグループになることもできたのに、隣のグループで恨めしそうにオレを見ている。

「まあ、今日忙しそうなの知ってたから、正直来ないかな?とも思ってたんだけど。ありがとね、来てくれて」

「あんだけ昼休みに来いって脅しといて、来ないでもよかったの?」

じろりと山田さんを見やると

「そんなことしたら、明日から店に来られなくなるよ」

と不敵な笑みを浮かべた。井上よ、このお姉さまのどこに惚れているんだ・・・。

「ま、ボーリングなんて久しぶりだから、楽しませてもらいますよ」

オレは第一投を投げるため席を離れた。

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