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声をかける

彼女に客対応を頼まれたその日の夕方、食品レジのシフトが貼ってある入口のそばに彼女が一人で立っていた。オレは何とはなしに彼女のそばに行くと

「阿部さん、さっきはありがとうね」

と声をかけた。すると・・・彼女はバァァと顔が赤くなり、

「あ・・・いえ・・・」

と何とか聞き取れるくらいの声で返事をした。その反応に思わず

「さっきは普通だったじゃん」

と吹き出してしまう。彼女は真っ赤になりながら上目遣いにオレを見て

「すみません・・・仕事の時は大丈夫なんですけど・・・」

と苦笑いしている。

「これだって仕事の一部だよ。困ってたお客さんを教えてくれたことに対してお礼をいっただけなんだから」

というと、彼女は顔をあげて妙に納得した顔でうなづいた。

「そうですよね・・・そう考えてみます。ありがとうございます」

ペコッとお辞儀をしてフロアーに戻っていく。その後ろ姿を見送ると入口の窓に自分の姿が映る。井上の方がいい体格をしている、と思っていたけど彼女からするとオレの方が男らしくなくていいってことじゃないか?そう思って自分の姿を見てみれば確かに中性的にも見える。なんだか肩の力が抜けた気がした。そういうことなら彼女が男に慣れていく手伝いくらいはできるかもしれない。そう思った。


その日を境に彼女は変わってきた。オレに対して笑顔で挨拶できるようになった。オレのそばにいることが多い井上にも笑顔で挨拶してくれる、と報告を受ける。報告義務なんてないからね。

挨拶の後、一言二言話すこともあった。「今日も暑くなりそうですね」「バックヤードでのお仕事、冷房がないから大変じゃないですか」「今日は早番なんですね」・・・たわいもない会話だけど、赤くなることもなくなった彼女をほほえましく見守る。

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