プロローグ
花屋の娘ユリアンナは夢を見た。
夢の中で私は娼婦の娘カメリアの半生を見た。
儚くも凛として気品のある絶世の美女と謳われた元公爵令嬢メアリーの娘でもあった。
彼女は王太子の婚約者であったが婚約破棄を宣言され勘当の上放逐された。
王太子は研鑽のために通った隣国の学園で出会った平民出の男爵令嬢アリアに籠絡され、アリアとの婚約のために婚約者であるメアリーを罪に貶めたのであった。
その娘として育ったカメリアは当然のように母を貶めた王家を恨み、あっさりと母を捨てた貴族を憎んだ。
母への愛からでない。
自分の不幸の原点が母の悲しき過去にあると考え、その元凶さえなければ…と自分の生い立ちへの悲観からきたものであった。
夢の中のカメリアは、恨みや復讐心を原動力に自己研鑽を重ね、母の仇の現陛下(当時の王太子)の息子である王太子を手練手管で誑し込むことに成功していた。
彼女は王太子の婚約者であった隣国の王女を汚い手を使って追い落とし、後に陛下となった王太子の隣に立つことになった。
隣国の王女は罪人に落とされ、隣国で毒杯を仰いだ。
王妃となったカメリアは陛下を唆し、隣国へと戦争を仕掛け、戦争に巨額の費用を投入や、煌びやかな衣装や豪華な食事など王宮内で激しい浪費を行い、財政危機に直面させた。
また、残虐な性分で、造反者となり得る多くの貴族やその家族を公の場で残忍な方法で処刑を実施した。
生まれもった残虐性なのか、生い立ちによるものなのかはわからないが、極悪非道な彼女は権力を意のままに操り潜在的な反乱分子を根絶やしにした。
独裁国家となったこの国から要人は消えた。一人の貴族が立ち上がるまで数十年の時間を要し、それまでに何百人何千人という貴族や平民が罪なき罪で粛清された。
悪の権化の王妃とその配偶者たる陛下の処刑は広場の中央で行われた。
薄い金髪の髪にブルーの瞳、華奢な身体の彼女は、儚げで弱々しく、残忍さのカケラも感じさせなかった。
彼女の残忍な姿を知る者でさえも、彼女が無実なのではないかと誤解し、ギロチンに首を乗せる彼女から思わず目を背けずにはいられなかった。
皆が目を背ける中、唯一人見つめていた私は彼女と視線がぶつかった。
彼女は私を見るとにたりと気味悪い笑みを浮かべた。
「みつけた」
彼女の声が耳に飛び込んできて、気がつけば私はギロチンの下でカメリアとなっており、ギロチンの刃が迫ってきた。
*
目が覚めたら私はカメリアになっていた。
男爵の元へ養女となる前の14歳のカメリアになっていた。
伝記で読んだこともある悪女カメリア。
彼女はユリアンナが生まれる数年前に亡くなっている。
カメリアが亡くなったのはたしか25歳の時…
ユリアンナの両親は今9歳前後?
記憶にあるあの家にいるのかな…
会いに行ってみよう…