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紅の魔女  作者: あかあかや
オーガン編
63/78

ユノの墓入り口

 翌朝になった。

 テントを出ると、テントが自動消滅した。ゴミとならないための、環境に優しい仕様である。


 前日ジャンクがこの高原で拾い集めた物品の中に、麻痺解除薬が一つあったので、ファビウスに渡している。

 武器と防具の落とし物は少なく、魔法で強化されたバックラーだけだった。ジャンクがドヤ顔になっている。

「オレの装備だな! リーダーには不要だろ」

 カリグラが素直にうなずいて答えた。

「そうだな。ジャンクの装備にしてくれ。しかし、誰が落としたんだろうな。やっぱりシーフかな」

 バックラーは小型の片手盾だが、同時に軽クロスボウを操作できない。そのためアサシンナイフを使う際に、この盾を装備する事になる。


 携帯食を食べてから洞窟へ入ってみると、かなり広かった。灯りも無いため、真っ暗だ。

 入り口より十メートルのラインから先は、頑丈な石壁で塞がれていた。その石壁中央に扉が一つあり、『ユノの墓入り口』という看板があった。


 カリグラが扉を開けようとしてみたが、鍵がかかっていてダメだった。ジャンクに代わっても、やはり開かない。

 グルバーンが扉の横に付いている注意書きを読んで指摘した。

「東端にある、通用口の扉から入るようだぞ。中に三つの試練が用意されている。

 それら試練を全て自力で突破した者だけに、この中央扉を通る許可が与えられる、と書かれているな」


 カリグラが中央扉から離れて、東方向を見てみた。十五メートル以上も石壁が続いているため、扉らしきモノは見当たらない。

「この依頼には、俺たち黒き狼の使いが、ユノの墓警備を務める事が可能かどうかを調べる目的も含まれているそうだしな。試練というのは多分、モンスターとの戦闘だろうね」

 ジャンクがジト目になる。

「これまで戦ったモンスターが総出で来るのかよ……下手したら、オレら死ぬぞ」

 グルバーンが目を逸らした。


 ファビウスは中央扉に顔を近づけていて、怪訝な表情を浮かべている。

「死臭が染み出していますね。中にアンデッドが潜んでいる可能性があります」

 カリグラが軽く肩をすくめた。

「噂は本当だったか……」


 石壁を東に沿って進むと、端に通用口の扉があった。鍵穴が十個ある。番号付きだ。

 カリグラが収納ポーチから鉄鍵を十本取り出して、鍵穴に差し込んでいく。

「鍵を多数使って開ける扉は初めて見る。狼団でも使えそうだな」

 グルバーンが気楽に答えた。

「そうだな。この扉はパラスミ先生の作だ。必要とあらば聞いておくぞ」


 カリグラが全ての鉄鍵を差し込んで、ドアノブをひねる。すると「ガチャリ」と重厚な音がして扉が開いた。

 中へ一歩入り込んで、キョロキョロしている。ここと同じく真っ暗だ。

「魔法具の照明は無いのかー……点灯スイッチがあると思ったんだけどな。そうだね、グルバーンさん。狼団に行ったら相談してみるよ」

 グルバーンがうなずいてから、鉄鍵を指さした。

「恐らく、ここに居るのは俺たち四人だけだろうが……念のために鍵を抜き取っておくべきだろう。依頼を達成した後で、ウラスミ先生に渡せば良い」

 カリグラが素直にうなずいた。

「そうだね」


 通用口の扉から中へ入ると、細い道が一本、奥へ続いていた。

 先頭にカリグラが立って、クリエーチャーキラーを持つ。その後ろにジャンクが軽クロスボウを構えて続く。

 十メートルほど離れた後方にグルバーンが続き、最後尾にはファビウスがヒーターシールドを背負っている。

 カリグラが振り返って三人の仲間たちに告げた。前方を指さすと看板が立っている。

「第一の試練会場って書かれてる。それじゃあ、行ってみようか」



 試練会場は三つあったのだったが、何とかモンスター群を撃破する事ができた。今は負傷を治療魔法で治してから、帰路についている。

 ここでの戦闘記録は残されていないため不明だ。恐らくは、魔術ギルドによる情報削除を受けたのだろう。


 カリグラがクリエーチャーキラーに刃こぼれが生じていない事を確認した。

「ふう……この参道で見かけたモンスターばかりだったね。群れで襲ってくると、なかなか厄介なものだな」


 ファビウスが同意している。冒険者辞典を広げて確認した。

「そうですね。黄文字がまだ現れていません。全力で戦えます」

 グルバーンも同じように冒険者辞典を広げていた。

「うむ。俺もまだ魔力量に余裕がある」

 一方のジャンクは不機嫌そうだ。

「け。落とし物が一つもねえぞ。小遣い稼ぎができねー、クソが」


 カリグラが笑顔でジャンクをなだめた。クリエーチャーキラーからアンデッドキラーに武器を交換する。

「まあまあ。試練会場だから、どのパーティも気を引き締めていたんだろうな。それじゃあ、中央扉へ行こう。扉の鍵が開いているハズだ」


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