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紅の魔女  作者: あかあかや
オーガン編
40/78

オーガ討伐

 坑道を進むと突き当たりに『第三採掘場』と書かれている看板と扉があった。鍵を開けて中に入ると、ジャンクがニコニコ笑顔に変わっていく。

「お、おお。金になりそうなヤツがすっげえあるぞ」

 しかし、すぐに意気消沈した。

「けっ。何だよ。セラミド鉱石かよ。こんなモン、重くて盗めるかよ。クソが」


 そんなジャンクの表情変化を、気楽な表情で眺めていたカリグラが繰り返し忠告した。

「町長と約束しているから、鉱石は盗むなよジャンク。でもまあ、こんな岩の塊なんか盗んでも売り先が無いよなあ」

 ジャンクが素直にうなずいている。

「そういう事だな、兄弟。仕方ねーな、真面目に仕事するか」

 ファビウスがジト目でツッコミを入れた。

「いつも真面目でいてください」

 グルバーンは目を逸らしている。どうやら、セラミド鉱石のカケラくらいは持ち帰ろうと考えていた様子だ。


 ファビウスが気持ちを切り替えて、採掘場の一角を指さした。トロッコ線路の発着場がある。トロッコも一台あった。

「ここは、そのトロッコが第三採掘場の各地へ向かう発着場なのでしょうね」

 カリグラが採掘場の中を見回した。かなり広い。

「そうか……ここが鉱山の中心部か。セラミド鉱石って鉄鉱石よりも重いしな。トロッコで運ぶのが良いのだろうな」


 グルバーンが発着場に付いている線路の切り替えレバーをいくつか見て、操作方法を理解した。レバーの操作手順と、それに対応する行先の地図もある。

「レバーを操作する事で、採掘場の各所へ行き来していたのだろう。最も使用痕跡が少ない方向へ進めば、オーガが居る場所へ行けるハズだ」



 とりあえず、この第三採掘場でもザコのモンスター駆除をしておくカリグラたち四人であった。グリーンスライムや大コウモリに大グモなどを駆除し終える。コボルドとゴブリンは居なかった。

 カリグラが自身の冒険者辞典を開いて、モンスター等駆除値を確認した。小さくため息をついている。

「すまんな、ジャンクよ。値は大して増えなかった。それじゃあ、トロッコに乗ってオーガが居座っている区画へ行こうか」

 グルバーンが操作手順と地図を見ながら、レバーを操作してトロッコに乗った。トロッコの底部に魔法具が取りつけられているのを確認する。エンジンの役目を果たしているようだ。

「起動した。早く乗れ。すぐに発車するぞ」


 トロッコが発車した。線路の分岐に従って小走りていどの速度で走っていく。そして、かなり狭いトンネルに入った。トロッコ一台がギリギリ通るだけの高さと幅しかない。

 カリグラが納得した。

「あー……そうか。これだけ狭いトンネルだと、ジャイアントは通行できないか」


 ジャイアントについては詳しく知らないカリグラだったが、先ほどの白い地層で見た青いジャイアントは背丈が二メートル半ほどあった。もっとあったかも知れない。そんな巨体では、このトンネルは通れない。

(町長の言う通り、白い地層に居るジャイアントやモンスターには何か理由があって、外に出てこないんだな。その理由は分からないけど)



 そんな事を考えていると、狭いトンネルを抜けて最深部の採掘場へ到着した。ここはまだ未開発区画のようで、鉱石を採掘している雰囲気は無い。

 トロッコが停止したので降りて、カリグラが周囲を見回した。

「なるほどね。オーガ討伐の依頼が遅かったわけだ。あの狭いトンネルを突破されない限りは、他の採掘場までオーガが来る事はない」

 グルバーンが同意しながら、魔法の発動状況を確認した。

「そういう事だろうな」

 そう言ってから、トロッコ駅にある周辺地図を眺めた。洞窟の一角を指さす。

「地図によると、あの方向に自然洞窟がある。その出口は山の中らしいな。山中に居たオーガがここへ迷い込んだのだろう」


 ここにも灯りは一切無いので、視界は十五メートル以内に限定される。その先の暗闇を凝視したジャンクがニヤリと不敵に笑った。

「居るぜ。重量級の足音がする。でかい人型のモンスターが二体だ。まだ、オレたちには気がついていないぞ。やっちまえグルバーン」


 しかし、グルバーンが困惑しながら謝る。

「すまんな。魔法は敵を視認しておかないと使えぬのだ」

 ジャンクがため息をついた。

「そういう事は早く言え。仕方がねーな。ちょいと接近するぞ」


 さすがシーフのジャンクである。オーガ二体が徘徊している場所まで忍び足で接近できた。距離としては暗視技能の十五メートル圏内、その外縁部ギリギリだ。

 オーガは身長が二メートル半あり、かなりの筋肉質だった。腕も筋肉質で長い。カリグラが先ほど遭遇した青いジャイアントは、脂肪を蓄えた相撲取り体型だった。

 どちらも同じような身長なのだが、体型の他に異なる点は体色だろう。オーガの皮膚は青色ではなく、日焼けしたような褐色だ。


 グルバーンが大真面目な顔で仁王立ちした。両脚が緊張でガクガク震えている様子だが。

「よ、よし。魔法攻撃を始めるぞ。まずはスリープをかける」

 その瞬間。トロッコが突如走り出して、そして線路上の石か何かに乗り上げて転んだ。「ガッシャーン!」と派手な音が響き渡る。

 グルバーンが沈痛な表情を浮かべた。

「すまん。トロッコをロックし忘れていた」


 同時にオーガ二体とカリグラたち四人との目が合う。グルバーンが悲鳴を上げ、オーガが吼えてこちらへ突撃してきた。灯りは無いのだが、感覚で分かるようだ。

 カリグラがファビウスの隣に立ち、ナタ包丁を構えた。もう片手にはエスケープ魔法書を握っている。

「グルバーンさん。オーガは俺たちを視認できていないようだ。落ち着いて魔法攻撃してくれ」


 確かにオーガが突撃した方向は、カリグラたち四人が立つ場所から外れていた。

 見当外れの岩を殴って粉砕した、オーガ二体の背中を見たグルバーンが気持ちを落ち着かせる。

「な、なるほど。心得た。オーガどもよ眠れ。スリープ!」

 しかし、効果はなかった。


 ジャンクが怒ってグルバーンにツッコミを入れかけたが、カリグラが急いで抑えつける。

「もがもが……」

「落ち着けジャンク。成功するまで我慢しろ。続けてくれグルバーンさん」


 グルバーンが冷や汗をローブの袖で拭いてうなずく。

「り、了解した。次こそは眠れ、スリープ!」

 ようやく一体のオーガが「バタン」と突っ伏してイビキをかき始めた。小さくガッツポーズをとるグルバーン。

「よし! あと一体。眠れ、スリープ!」

 しかし効果は無かった。


 残ったオーガ一体が、仲間のオーガが眠ったのを見て起こそうとしている。

「やべっ」

 急いでカリグラが石を投げた。見事にオーガの頭に命中して「コーン」と高い音がする。


 怒ったオーガが仲間を起こすのを止めて、カリグラ目がけて襲い掛かってきた。カリグラが深呼吸する。

「俺が囮になる。グルバーンさん、頼む」

 グルバーンが冷や汗を大量にかきながら、連続して魔法を発動した。

「眠れ! スリープ!」

 しかし効果は無かった。


 オーガがあっという間にカリグラの眼前に迫り、その丸太のような太い腕を振り回して殴りかかった。

 まだカリグラとの距離は一メートル半ほどあるのだが、すでに敵の攻撃圏内だと直感するカリグラ。オーガの視線をしっかりと見て、敵の攻撃目標の位置から外れ、前に跳ぶ。

「ゴウ!」

 重低音を含んだ風切り音が響き、オーガのパンチが空を切った。カリグラが冷や汗をかきながらも内心でガッツポーズをする。

(よし。見切ったぞ!)

 しかし足場が悪かった。石につまずいて転ぶ。左手に持っていた木の盾が外れて転がっていく。それが運悪く、オーガによって踏み割られてしまった。

(マジか……)

 ファビウスも巻き添えを食らってしまい、一緒に転がっていた。メイスはしっかりと両手で握りしめているが。


 オーガがフルスイングのパンチをしたので、その場に一瞬だけ留まった。その隙を見逃さず、オーガの背中に向けてグルバーンが魔法を発動させた。

「眠れ、スリープ!」

 オーガが膝をついて、「バタン」と倒れた。すぐに大イビキをかき始める。

 ほっとするグルバーン。ほとんど半泣きである。

「良かった……効いた」


 カリグラが起き上がり、ナタ包丁の峰で自身の肩を「トントン」叩く。

「いたた……岩だらけなんだな、ここ。オーガじゃなくて岩に当たってケガしてしまったよ」

 ファビウスも立ち上がって、冷や汗をかいている。

「ですね。でもまあ軽傷で済んで良かった。これならライトワンズで治ります」

 ジャンクはニヤニヤして見物しているだけだ。

「オーガって意外と素早いんだな。おいグルバーン。さっさとマジックミサイルでやっつけてしまえ」


 涙をローブの袖で拭いたグルバーンがドヤ顔になった。

「任せたまえ! 光の矢よ、愚かな巨人どもを貫け。マジックミサイル連射! うりゃうりゃ!」


 ファビウスがジト目になってツッコミを入れた。岩で切ったのか、頭から血を流しているが。

「その前口上……限りなくアレですよ。そんなセリフを言わなくても、普通に魔法を行使できるでしょう」

 カリグラが同じようにジト目になりながらも、ファビウスの肩に手をかけた。

「……聞き流してやってくれ」


 手前のオーガはマジックミサイルを三発食らって、ようやく絶命した。呆れた表情を浮かべているグルバーン。

「何という耐久力だ。花子先生によると、オーガはジャイアント類では最弱なのだが。さて、もう一体だな」

 続いて奥の方でイビキをかいて眠っているオーガにマジックミサイルを撃ち込み始めた。しかし、二発目を撃ち込んだ時にオーガが目覚めてしまった。

 グルバーンが「ひっ……」と、立ちすくむ。


 カリグラがエスケープ魔法書をファビウスに投げ渡して、石を拾う。

「あと一発だ。ここは俺がまた囮になる。グルバーンさんが次で仕留めきれなかった場合は、ファビウスさんとジャンクが攻撃してくれ」

 そう言ってカリグラが大声を上げて、起き上がったオーガに向けて石を投げ始めた。オーガが怒り狂って吼える。


 カリグラが全力で走って逃げていくのを追いかけていくオーガ。その背中に向けて、グルバーンがマジックミサイルを撃った。

「これで倒れろ!」

 しかし、このオーガは倒れない。マジックミサイルを三発食らっているのだが。変わらない速度でカリグラを追いかけている。

 それを見て、グルバーンの顔が恐怖で青くなった。精神集中が途切れ、これ以上の連射が不可能になる。


 グルバーンの表情を見たジャンクが舌打ちした。

「ち。後は、オレとファビウスで仕留めるぞ!」

 ファビウスも即答した。

「分かりました!」


 ジャンクが軽クロスボウで狙いを定め、ファビウスがメイスを向けて魔法攻撃の準備を整えた。背中を向けていたオーガが立ち止まって振り返り、グルバーンを睨んだ。悲鳴を上げるグルバーン。

 しかし、次の瞬間。オーガが地響きを立てて倒れ伏した。


 すぐにカリグラが引き返してきて、倒れているオーガの首にナタ包丁を叩き込んだ。大量の鮮血が噴き出し、このオーガも絶命した

 それを確認したカリグラが、ニッコリと笑ってグルバーンにガッツポーズを送った。

「死んだ。成功だ、グルバーンさん」

 ほっとした表情になったグルバーンが、その場にしゃがみ込んだ。

「そ、そうか……成功したか」


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