なんでも欲しがる義妹は、前世この国を繁栄させた最強女帝だった!~さぁ、革命を起こすわよ~
それは、卒業パーティーで起こりました。
「エルサ、貴様とは婚約破棄をさせてもらう!」
「…………え?」
思わず、呆けてしまうと殿下からすごい目で睨まれました。
無意識に後ずさってしまい、自分でも情けないと思います。
「な、なぜでしょうか? この、婚約は陛下の取り決めにより決まった
もの。それを、……」
勇気をしぼり、理由を尋ねると殿下は冷ややかな目になり、
「分からないと?」
「……」
「分からないと?」
なんと答えたらよいか分からずにうつむくと、盛大な舌打ちが聞こえました。
「このようなときだけ、そんな態度か。まぁいい。
しらを切ると言うのなら、私から説明しよう」
「殿下ぁ~。怖いですぅ~」
媚を売る声が聞こえ、そちらを見ると、はしたないことに殿下にしがみつき
上目使いで見上げているではないですか!
「アイリーン、礼儀を守りなさいといつも言っているのに……」
最悪なことに私の義妹でした。
「お姉さまぁ。ひどいですわ。わたくし、同じ公爵家の娘ですのに。
そんなに当たらないでくださいませ。っっぐす。ぐす。殿下ぁ~」
「はぁ~エルサ。貴様はいつも血が繋がっていないとはいえ
家族であるアイリーンをいじめていたではないか。呆れてしまったぞ」
話が繋がらない上に殿下から訳のわからない話をされて、……
困惑しているのはこちらです。
「殿下。何をおっしゃっているのかが……」
「もういい、貴様とは話が繋がっていない。とにかく、
お前は義妹をいじめ、間違った礼儀を教え、その上持ち物を奪っているそうではないか。
そのようなものを王妃にはできない。婚約破棄の上、爵位剥奪、国外追放とする。
皆の上にたつものがそのような姿だったとは……。公爵からきいたぞ。愛人の娘であるため
おまえに教育を一任していたと」
私は、義妹をいじめていないし、ちゃんと礼儀を教えました。
それに、持ち物を奪っているのはアイリーンですのに。
最低限の衣装と装飾品を残し欲しがるから、仕方ないと思って
よく、勉強ができたら差し上げるというと、駄々をこねて、部屋を荒し回るものですから。
前半はともかく、後半は正論であるため、私には反論できませんでした。
私は、お父様から義妹の教育をい一任されていました。
『教師を雇うのもいいが、せっかくだから王妃教育の一貫として
教えてみなさい。……使うものはなんでも言うがいい。用意する』
と。なれないことの上、義妹は物覚えが悪く。根気強く教えていたつもりでは
ありましたが……。
「……最後にききたいことがございます。アイリーンを王妃になさるつもりですか」
「そうだと言えば?」
「アイリーンに王妃をつとめるのは無理でございます。元といえば私の教育不足
が原因。婚約破棄は慎んでお受けいたしますが、国外追放、爵位剥奪されることを
したことはございませんので、お断りいたいます」
それだけをいうと、優雅にカーテシーをして、会場を出ました。
後ろから、声が聞こえましたが、無視です。
はしたないことですが、会場をでると、そのまま走って馬車へと向かいました。
■□■□■□
うまくいった。心のなかで ほくそ笑む。
お姉さまには悪いけど、どうしても王太子を落とさないといけなかった。
私には前世の記憶がある。
何百年と昔にこの国の女帝として君臨し、国を栄えさせた。
民のためならと、剣術、黒魔術、白魔術、錬金術など、様々な技術を身に付けた。
ところが、生まれ変わってみると、この国は腐っていた。民は税に苦しみ
王候貴族は、贅沢三昧。そのくせ、反乱を防ぐ対策は
たくさんあった。平民だから、この国をもとに戻すのは無理かなって
思っていたところにきた、公爵家の隠し子。
チャンスだと思った。空白の何百年があるとはいえ、ここは私の国、私の故郷だ。
最初は、王太子の婚約者である、お姉さまに頑張ってもらおうと思っていたけど……。
はっきり言って、お姉さまは、この国に珍しく善人だけど、無能だ。
私がお姉さまの装飾品を奪っていたのも私が平民の貧困を指摘すると
装飾品をあげましょうと言い出すからだ。
幻術で、私が部屋を荒らし回ったとように見せたときの表情がなんかもう
聖女であきれた。
装飾品をこのままの状態であげるだけだとか、無能にも……いや馬鹿にも
ほどがありすぎる。
そして、王太子は馬鹿。
しかも公爵様は私に領地の経営を丸投げ。ほんと、頭がイカれてる。
まあ、領地をよくするチャンスではあったけど。
私がやったことといえば、公爵家にくる王太子を誘惑する。
その上、公爵様から殺されないよう領地経営をうまく、そして有能だけど無能なちょうどいい
手駒になるよう、努力した。もちろん、税は全部公爵様行き。
そんな中、私はお姉さまから貰った(奪った)ものを売り、お金にして、
領地を豊かにした。
誤算は、
「大丈夫なの? あんなこと言って。陛下にどう説明するつもりなの?」
王太子が馬鹿なふりをしていた王太子だったということだ。
「くくっ。さすがのお前でも、どうするかわからないか。」
「ちょ、ふざけないで! 私、陛下に、あったことなんてないから
為人なんて知らないし」
「悪いな、冗談だ。……陛下は自分が無能の癖に自分を有能だと思っている
正真正銘の馬鹿だ。陛下はやらかした息子を叱ったら満足する。
つまり、俺は叩かれにいってくるわけだ」
「ふふ、ご愁傷様」
少し、煽ったことで、溜飲が下がる。
「何を言う。お前もだ。必死で俺への真実の愛をいっておくんだな」
ぎょっとした私に殿下が笑いながら冗談だと言う。ほ~んと喰えない殿下だこと。
悔しいが、殿下のほうが私よりも一枚上手だ。
『何を企んでいる。俺に近づいて、なんの冗談だ』
鋭く言った彼を見たときは驚いた。
無能のふりをしている有能だと分かった私は
事情を説明すると
『大胆だな。……それもいい』
ダンッ! 壁をドンと叩き、
『……俺も同じ目的を持っている。なぁ一芝居、打たないか』
そのときの殿下は鋭い眼光とともに凛々しく笑ったいた。
まぁ私が願う未来に近づくためには有能な方が尻にひく手間が省けよかったが。
私が願うのは、この国の繁栄。それは、今も昔も変わらない。……はずだ。
さあ、革命を起こすわよ!!