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ツンデレを辞書で引いてみた  作者: こーてい
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ツンデレを辞書で引いてみた あ行

 

「べ、べつにアンタのために作ったわけじゃないんだから!たまたまいっぱい作っちゃって捨てるのがもったいなかっただけなんだから!」


 そう言って幼馴染の佐倉あかりは今日も弁当箱を突き出すように渡してきた。

 一か月ほど前から、僕の幼馴染の様子がおかしい。

 あかりは小学校の時からの友人で、平均より少し小柄な見た目から子猫を連想させる女の子、なのだが。

 特にこの二週間だ。あかりは急に弁当を自炊するようになり、毎日一人前の分量より多く作ってしまうらしく、毎日欠かさず僕に持ってきてくれる。

 そして渡すや否や、顔を赤くしてぱたぱたと女子グループのほうへ逃げてしまうのだ。

 女子グループからは黄色い声が飛び交っていて、とてもじゃないが話を聞きに行こうと思えない。

 そりゃあ、いつも昼食は購買のパンをかじっている僕としては、栄養バランスの取れた食事は正直うれしい。うれしいが。


「変なヤツだな。」


 僕がぽつりとつぶやくと隣の席の永山君にじろりと睨まれた。


「そう思ってるのはこの学校でお前だけだぞ。」

「ん?どういう意味?」


 永山君はなんでもねえよ。と言うと机をくっつけてくる

 最近はこうして弁当派の永山君と男二人で昼食をとるのが日常風景となっていた。


「いやいや、なんでもないってことはないだろ。どういう意味だよ?」

「うるせえなあ、こういうのは自分で気が付かなきゃ意味ねーんだよ。」

「いや、僕は自分でわからないことは率先して聞くべきだと思う。ほら、聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥って言うじゃん。」

「しつこいぞ。お前は今、聞いたことで一瞬の恥、そんで俺に答えてもらえなくて一生の恥を背負ってくんだよ。」

「うわ、聞かなきゃよかった。」

「聞くなっつってんだよ。」


 ぐぬ。そう言われるとますます気になるが、これ以上突っ込んでも答えてくれないだろう。仕方ない。


「まあどうせ永山君程度の知ってることとかたいしたことないだろうし・・・。」

「お?なんだ?喧嘩か?」

「へへん、言っておくけど永山君なんて怖くないぞ。僕は永山君なんか三秒で―――――」

「お、言うじゃねえか。そっちがその気ならこっちだって―――。」

「三秒でボコボコにされた後に教師にチクりに行くもんね。無傷の永山君とボコボコの僕。おまけに僕の中間テストは総合二位だぞ。先生はどっちを信じるかな?」

「こすいなおいっ!?」


 当たり前だよ。僕はがっつりインドア根暗ガリ勉野郎だけど永山君はどっちかというと陽キャ側の人で野球部期待のエースとかいう体育会系の人だ。

 喧嘩なんてしたら怪我じゃすまない。僕が。


「僕が怪我をするならせめて永山君の学歴に消えない傷を残してやる・・・!」

「お前、全体的に色々最低だな!」


 失礼な。知略に富んでいると言ってくれ。


「でも僕も痛いのは嫌だからここは痛み分けといこうじゃないか永山君。」

「俺なんでお前とダチやってんだろうな・・・?」


 そんなの僕が聞きたい。


「それはそうと、毎日間違って弁当二個作ってくるとか実際あるのかな?」

「そのレベルで疑問持ってんのマジかお前。」


 信じられないものを見るような目で見られた。なぜに?


「いや、僕だって変だと思ったよ?例えばこの卵焼き。これ毎日入っててめっちゃ美味いけど、仮に卵二個で二人前になるなら次の日から卵一個にするんじゃない?」

「・・・その卵焼き毎日入るようになったのっていつからだ?」

「それ関係ある?」


 えーっと、僕が弁当箱返す時、あかりにこの卵焼き凄く美味しかったって言った日だから


「七日前かな。」

「お前ホントに馬鹿だな?」

「なんでさ!?」

「いや、わざとじゃないんだろうけど・・・なんならセイがこういうやつだって知ってるくせに意味不明の逃げ方する佐倉にも問題はあるんだが・・・。」

「永山君だけなんでわかった感じになってんのさ?」

「いやわかってないのお前だけだっつってんだろ。」


 その僕だけがわかっていないってワードがすごく嫌だな。

 でも永山君は教えてくれそうな気配ないし・・・。


「うーん・・・わからん。永山君。僕、解けない問題とかあると気持ち悪くて寝れないタイプの人なんだが・・・。」

「ダメ。」

「そんなぁ・・・。」


 うう、もにょもにょする・・・。


「ま、本人にでも聞けばいいんじゃねえか?」


 平然と言う永山君。僕はこれだから陽キャは・・・。


「いやあ、あの女子の集団に顔を突っ込む勇気はないよ・・・。なんで女子っていつも誰かしらと一緒にいるんだろうね?」


 群れで行動する生物学的な何かなのだろうか。後で調べよう。


「あー、弁当箱返す時、はすぐに逃げるんだったっけか。じゃあその弁当箱の中に手紙でも入れたらどうだ?」


 なるほど・・・。いい案かもしれない。

 もしかしたら深刻な理由かもしれないし、手紙なら面と向かって言えないことも言える気もする。


「あ、変なこと書くなよ?あとついでにこれ入れとけ。」

「いいけどなにこの封筒?」

「あと今度の日曜に駅前集合な。予定入れんなよ?」

「うん?いいけどなんで???」









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