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誰でも使える身体強化を鍛え続けたら、滅茶苦茶強くなってました ~人類最強の無能者~  作者: 木嶋隆太


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第三十六話

本日発売になります! 買っていただければ嬉しいです!



 冒険者たちと話をしながら、俺たちは半日程度かけて街まで戻ってきた。

 久しぶりって感じだな。森で暮らしていたときはこんなこと考えたこともなかった。

 馬車から降りた俺たちは、軽く伸びをしていた。


 俺たちの荷物は御者が屋敷まで運んでおいてくれるらしい。

 リーベだけはリュックサックを持っていたが、持ってきていた菓子類はなくなっているので、非常に軽そうだった。


 冒険者たちともそこでお別れだ。親しくなった彼女たちは、にこりと微笑んで頭をさげた。


「私の大切な剣を取り返してくれて、ありがとうございます!」


 リーベに一人が笑顔とともにいった。

 慣れないことにリーベは少し戸惑っていたようだが、それでも笑みを返した。


「つ、次からは気を付けてくださいましね」

「はいっ、もう二度ととられないようにしますね!」

「ええ、そのつもりでいるのですわよ」


 リーベと握手をしたあと、他の冒険者たちがこちらに顔を近づけてくる。


「あんなに強い人に勝てちゃうなんて、本当アークさんって凄いんですね!」

「私たちも負けていられません! もっともっと強くなります!」


 ぎゅっと手を握られる。

 少し頬を染めている彼女。……それだけ熱意がこもっているというわけか。


「ああ、頑張ってくれ。いつか一緒に仕事できるときもあるかもしれないしな」

「そ、そこまで強くは――」

「なれるさ、三人なら。それじゃあ、またどこかであったらよろしく」

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 三人が俺のほうを見て、改めて頭を下げた。

 そこでみんなと別れたあと、歩き出そうとするとシーアがじっとこちらを見ていたのに気づいた。


「どうした?」

「……いえ、別に。なんだか仲良さそうね、と思っただけだわ」

「仲良いか? そんなつもりはないが」

「仲良く見えたわ、少なくともあたしからはね。まあ、別に。好きな女ができたらどこへなりともいくといいわ」


 それじゃあ、一生どこにも行けそうにない。


「もちろんだっての。まあ、騎士くらいは続けられるのなら続けるけどな」

「……」

「……」


 シーアは唇をぎゅっとしめたあと、そっぽを向いた。

 俺は自分で言ったあと、後悔する。……さすがに言いすぎてしまった。

 ああ、くそ。

 もうちょっとだけ、素直に言えればいいのにっ。けど、シーアへの気持ちを悟られるわけにもいかない!


 難しい心境を抱えていると、リーベが学園を指さした。


「二人とも、とにかく今は学園に戻りますわよ! そして、依頼達成の報告をしますのよ!」


 リーベの言葉に合わせ、俺たちは歩き出す。

 ちらと横目でシーアを見ると、すでにいつもの表情だ。

 ……俺のことなんて、やっぱり気にもしていないようだな。



 〇


 

 学園に戻ってきた俺たちは、依頼を達成するために学園受付へと向かう。

 受付室……そこは冒険者ギルドとほぼ同じような造りをしていた。


 依頼の管理はそこでも行われているが、掲示板の場所よりも張り出されている量は少ない。

 ここで扱う依頼は、個人向けのものばかりだそうだ。


「夕方ってのは混むのか?」


 中は人で溢れていて、受付の列はずらりと並んでいる。

 それでも、受付の人数が十人いて、どんどん捌いていくので一人あたりにかける時間は少ないようだ。

 俺たちの番まで十分くらいはかかりそうだ。


「そうね。午前の授業が終わって、それからのんびり近場の依頼を達成するとだいたいこのくらいの時間ね。人によっては報告だけは次の日に済ませることもあるみたいよ」


 確かに、そっちの方が賢いやり方だと思う。

 俺たちの番が回ってきたので、出発前に剥がしていた依頼書を受付に提示した。


「Eランクの依頼ですね。魔石の方を確認します」


 討伐した魔石をすべて受付に渡す。すかさず、受付は鑑定魔法を発動して、それらを見ていく。

 確認の作業に少し時間がかかりそうだと思って周りを見ると、俺たちを見てくすくすと笑っている男がいた。


「……おい、見てみろよ。あいつら、Eランクの依頼だぜ?」

「って、見てみろ。あれノーム国のシーアじゃないか?」

「ああ、落ちこぼれの? 隣にいるのはリーベか?」

「ああ、バカの」


 ムカっとした様子で、リーベがそちらを睨んだ。

 シーアの睨みは効いていなかったが、彼らもさすがにリーベの睨みには怯んだ様子だ。


「……その隣のは?」

「知らん男だな。まあ、でも知らないってことは落ちこぼれんじゃないか? Eランクの依頼受けてるんだしな」

「それもそうか」


 ゲラゲラと笑っていた男は、受付に渡していた依頼書を奪い取るようにして、こちらに見せてきた。

 そこにはCと書かれた依頼書だ。

 リーベがむきーっと拳を固めている。


「あなたたち、何ですの!? こっちはそれ以上に大変な依頼をこなしましたのよ!」

「はっ? 何をふざけてやがる、サラマンダー国がっ! ノーム国の次に成績悪いおまえたちに何ができるんだって?」

「わたくしたち、強盗を倒しましたのよ! この学園から盗まれた魔道具を取り返しましたの!」


 リーベが大きな声で叫んだ次の瞬間だった。

 再び笑い声に包まれた。


「おいおい! それつい一時間前にBランク冒険者たちが達成したやつじゃねぇか!」

「何わかりきってる嘘ついてんだ! やっぱ、バカのリーベだ!」

「受ける―! マジ受けるわー!」


 この場にいる全員が笑っているわけではない。

 俺たちのことを知っている人たちは、口を閉ざしているものが多い。


 とはいえ、だ。俺とリーベの決闘を見に来ていたほとんどは、俺の同期たちだ。

 この場にいる人たちは、みない顔ばかりだ。

 恐らく、上級生なんだろうと思う。


 リーベが今にも魔法外装を発動しようとしたそのときだった。

 室内の空気ががらりと変わった。


 入り口から順に、笑い声は消えていく。

 その原因を探るように視線を向けると、そこには鍛え抜かれた体を持つ男がいた。

 教室の入口に頭をぶつけそうなほどの彼は、すっと周囲を一瞥する。


 強面の顔は、一瞬犯罪者を彷彿とさせる。

 しかし、室内にあったのは、怯えではなく羨望だった。

 彼はすたすたと俺たちの近くにまで来たところで、依頼書を受付においた。


「が、学園長……」


 口を開いたのは、先ほど俺たちに食って掛かってきた者たちだった。

 なるほど、この人が旅人学園をまとめる人なんだな。


 確かに、これだけの迫力を持つ男なら納得できてしまう。

 学園長がテーブルにおいた依頼書をすっととった。

 それを見た受付は、驚いたように目を見開いた。


「え、Aランク依頼書!?」

「ああ。アーク、シーア、リーベ。Aランク依頼達成ということで持ってきた。受理してくれるかね」

「も、もちろんです! 他でもない学園長の依頼書なんですから!」


 受付は急いだ様子で、処理を始める。

 学園長は俺たちを見てから、軽く頭を下げた。


「直接話すのはこれが初めてだったね、アークくん。改めて、ありがとう。貴重な旅人を失わずに済んだ」


 学園長がそういった瞬間、過剰なまでに周囲は騒がしくなり――。


「ふふん」


 唖然とこちらを見ていた男たちに、リーベが勝ち誇ったように笑った。

 子どもっぽいからやめろ、と思ったがシーアもちょっとからかうように笑っている。それが可愛かったので、黙っておいた。


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