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誰でも使える身体強化を鍛え続けたら、滅茶苦茶強くなってました ~人類最強の無能者~  作者: 木嶋隆太


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第二十一話


 Zクラスに所属している生徒は、現在8名だそうだ。

 各国の代表者たちと、それ以外、俺を含めて四人のみ。

 入学式が終わり、クラスにやってきた俺は、静かな教室を眺めていた。


「なんで俺とシーアしかいないんだ?」

「わたくしもいますでしょう!」

「それは仕方ないでしょう。他の五名はZ世界への旅に向かってしまったもの」

「おーい、聞いていますの!?」

「なるほどなぁ……二人きりか。これなら別に学園に行かなくても屋敷にいるのとさして変わらないな」

「そうね。机と椅子を隅に運んで、ベッドでも持ってきてゆっくり休みましょうか」

「そいつはいいな」

「いじめですわ! わたくしを無視するなんて国際問題にしてやりますわ!」

「違うってリーベ。おまえが可愛いからいじめたくなっちゃうんだ」

「か、かわいい? ふ、ふんなるほど、それなら仕方ありませんわね」

「可愛い? アーク、あんたなに、こいつに惚れたの?」

「いや、やっぱ可愛くねぇわ」

「なんですの!? ぶっ飛ばされたいんですの!?」


 このクラスには今三人しかいない。

 ……なんでもリーベは他五人と違って他人との連携が苦手だそうだ。旅人は決して戦いだけではなく、状況によっては暗躍するような行動も求められるとか。


 リーベはそういうのが苦手だそうで、まだ一度も他世界にはいっていないそうだ。ただ、滅茶苦茶強いらしい。校内の武闘大会でも、何度か優勝しているほどだそうだ。


「わ、わたくしをコケにしやがって……っ。決闘の約束、覚えていますわよね」

「ああ、もちろんだ」

「今すぐやりますわよ」

「そういえばリーベ。決闘の予定をみたんだけど、あんたとアークの試合登録されてなかったんだけど、あれからしたの?」

「げぇっ! 忘れていましたわ!」

「……申し込みしないとできねぇのか?」

「一応ね。みんなの力ってかなり強力だから」

「詳しいんだな」

「あたし、怪我人が出た時の対応は任されているのよ。ほら、あたしって女神みたいに綺麗じゃない?」


 本当にそう思います。けど、それはたぶん俺だけだろう。


「ぶふーっ! 治療しか取り柄ないだけですの! 何言ってますの! あはは! いった! 痛いですわ!」

「あんた結構肉ついているわね」

「つ、ついていませんわよ!」


 シーアがリーベの脇腹をつまんでいる。

 こいつら、基本仲良しみたいだな。リーベがさっと距離を開けて、それから教室の外へと駆けだした。


「わたくし、決闘の申し込みをしてきますわ!」

「それなら、リーシェル家のお嬢様も望んでいるって言葉を添えときなさい。たぶん、午後のどっかでできるわよ」

「わかりましたわ!」


 権力で脅す気満々じゃねぇか。リーベはノリノリで教室を出ていき、俺は二人きりになってしまったこの状況に口をぎゅっと結ぶ。

 制服姿のシーアも可愛い。彼女は桃色の髪を指にからめながら、はぁと小さく息を吐いた。


「リーベの相手は疲れるわね」

「けど、面白いやつだな。おまえも仲良いみたいだし」

「あぁ? 仲良くなんてないわよ。まあ、からかって面白い相手ではあるわね」

「それに、良いやつそうだな。バカだけど。見た目はなんかお姫様みたいなのに、あんなに残念な奴ってのもなかなかいないよな」

「そうね」


 シーアもな。見た目だけでいえば、悪口なんて一切言わなそうなのに……。まあ、それはそれで好きなんだけど。


「リーベはどんくらい強いんだ?」

「……天才よ、なんだかんだいってね。魔法の中にはいくつか、極めた先の力って聞いたことある?」

「魔法外装……だったか?」

「そうよ。己の魔法を体に装備するっていう最強の魔法よ……それをすでに、リーベは習得しているわ。完璧にすべてを使いこなせているわけではないけどね」

「それでも、凄いな……」


 魔法外装なんて、本当に一握りの人間にしか到達できないような必殺技みたいなものだ。

 リーベの年齢で使える人なんて、稀だろう。


「戦うのが楽しみになってきたな」

「あんたって……相手の強さとかってなんとなくわからないの? ほら、強者は強者がわかるみたいなのを聞いたことあるけど、そういうのってないの?」

「……ないな。相手が肉体的に強いのなら、わかるけど……魔法を持ってないせいか、魔法に関する強者とかはよくわかんないんだよな」


 たぶん、剣の達人とかそういう相手と対面すればわかるものもあるんだろう。グルドと戦うときは、それを感じられていた。どうやっても勝てるビジョンが見えないのだ。


「そういうものなのね。まあ……ここで自分の力を理解するのにはいい指標になるんじゃないかしら?」

「勝てると思うか?」

「……勝ってほしいわ」

「わかった、なら頑張ってみるかね」


 勝てれば、シーアがきっと喜んでくれるだろう。

 俺にとってもアピールの良い場になるからな。


 廊下が騒がしい。教室の入り口を見ると、リーベがいた。

 彼女はアホッぽい笑顔とともに、一枚の紙を見せつけてきた。


「とってきましたわ! 午後一番の時間に、わたくしとアークの決闘ですわよ!」

「そんなすぐにあるのか。昼飯が喉を通らないかもな」

「ふっふっふっ、わたくしとの決闘に恐れおののくといいですわっ!」


 彼女が持ってきた紙をちらと見る。決闘の細かいルールが書かれているのだが、一つ気になったことがあった。


「なんだこの、勝ったほうは一つ命令を出せるってのは」

「それは決闘の基本的ルールの一つね。もともと、決闘って自分の意見を押し通すために行うものだったからその名残ね。学園側も審判を務める都合上、好き勝手に決闘の申し込みをされないための抑止力みたいなものね」

「命令ってのはなんでも出せるのか?」

「ど、道徳的に問題のあることは駄目ですわよ!」


 リーベが身を守るように後退する。


「んなことしねぇよ。おまえは俺に何の命令をするつもりだったんだ?」

「ふふふ、それはあとのお楽しみですわよ」

「何も考えていないんでしょうどうせ」

「か、考えていますわ!」


 考えてなかったのか。

 俺も別に何も考えちゃいねぇな。


「メイド服でも着て一日学園生活でも送ってもらうかね」


 ぱっと思いついたのがそんなことだった。俺の言葉にリーベは首をぶるぶると振っている。


「ど、道徳的に問題ですわ!」

「なら水着か?」

「悪化していますの!」


 何か良いことでも思いつけばいいんだがな。

 

「……そういえば。授業はどうなっているんだ?」


 さっきからのんびり教室で過ごしていたが、そもそも学園というのは授業を受ける場だ。


「Zクラスは人数が少ないから、基本的に他クラスに混ざって授業を受けることになっているわ。一時間目は自主休講にしておいたわ」

「……おい」


 俺はまったく旅人としての知識がないから、少しでも勉強をしておきたかったんだがな。


「担任とかはいないのか?」

「いるけれど、今は授業を行っているんじゃないかしら? あなたのことはよろしく頼む、といわれていたのよね」


 頼む相手が間違ってるぞ。

 とりあえず、他クラスの授業とやらに参加してくるか。

 俺が席を立つと、シーアとリーベも席を立つ。


「……おまえら、授業うける気あるんだな」

「あなた、あたしの騎士でしょ?」

「わたくし、授業にだけは参加しないと本気でまずいんですの」


 この二人と一緒だと、他クラスの人と交流ができそうにないんだよな……。


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