ルーク・レインラント
「誰にだって表と裏の顔がある。ルークはとても良い奴だが、怒らせると恐い。」
マルコ・モンテーロ
ブラッカーズのメンバー
有栖は蛇に睨まれた蛙の如く、固まっていた。それを見たロイスが横からつつき、有栖は我に帰った。
「こ、こうさ…香坂有栖です…よ、よろしくお願いします…。」
緊張しながら名前を言う有栖。それを見たルークは小さく頷き、ロイスの方を見た。
「ロイス、すまないが席を外してくれないか?彼女と2人だけで話をしたい。」
「分かった。じゃあな、有栖。」
ロイスは有栖に手を振ると、部屋を出ていった。残された有栖は緊張し、汗を流していた。
「座ってくれ。」
「は、はい。」
ルークは有栖に椅子をすすめ、有栖はそれに従った。冷や汗を流す有栖に対して、ルークが口を開いた。
「怪我の方はどうだ?もう平気か?」
「問題ありません。」
「そうか…。まぁ、無理はするなよ。」
「は、はい。」
(何だろう。何か変わったような…。)
ルークから感じた畏怖が薄れ、代わりに哀しみが現れた。まるで、何か謝りたがっている様な…。
「すまんな。」
「…え?」
「君を巻き込んでしまったことだ。我々の爆発で君を巻き込み、君に怪我を負わせてしまった。一生残る怪我を。本当に、申し訳ない。」
そう言って頭を下げるルーク。有栖は困惑した。
「別に、大丈夫ですよ。もうどうでもいいので…。」
「…そうか。まぁ、とりあえず。これからよろしくな、有栖。」
「よろしくお願いします。」
そう言って、ルークと有栖は握手した。こうして、彼女は正式にブラッカーズの一員となったのである。
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その日の夜、ルークは窓から外の景色を眺めていた。すると、扉をノックする音がした。
「入っていいぜ。」
ルークがそう言うと、ガチャと扉が開く音がしてロイスが入ってきた。
「頼んでいたこと、調べたぜ。」
「ありがとう。」
ルークが頼んでいたこと。それは有栖の過去であった。彼女の身体にある沢山の傷痕、明らかに暴力を受けてできた傷痕である。彼女がこれまでどんな仕打ちを受けてきたのか、ルークは個人的に気になったのである。
「直義にも礼を言わないとな。いつも俺達に協力してくれる。」
「後で俺から言っておくよ。それよりも、見てくれ。」
そう言って、ロイスはルークに資料を渡した。有栖の過去が書いてある資料を。ルークはそれに目を通した。暫しの間沈黙が続き、やがてルークは資料から目を離し、再び外の景色を眺めた。背後にいるロイスが、恐る恐る聞いた。
「なぁ、ルーク…ちょっと聞きたいんだが…。」
「何だ?」
「その…もし…有栖を売り飛ばした奴がいたら…どうする?例えばそいつが…権力を持った奴でも。」
ロイスがそう問うと、ルークはゆっくりと振り返った。瞬間、目があったロイスは恐怖した。サブリーダーとして常にルークの側にいる彼でも、今の状態のルークには慣れない。激怒したルークには。
「決まってる。殺すまでだ。じっくりと痛ぶった後にな。」