表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

プロローグ

(あれ、何が起こったんだっけ…。)


朧気な意識の中、彼女はゆっくりと目を開けた。目の前には天井が広がり、電灯が弱々しく光っている。


(誰か…いるの?)


少し頭を上げ、震えながら周りを見た。ひっくり返ったソファ。壊れた棚。割れたグラスやボトル。床には飛散した、たくさんのガラス片と血。そして、人の形をした綺麗な死体と、頭の中身が溢れた死体。一体ここで何が起こったのか、自分はどうなったのか、彼女は記憶を巡らせる。ふと、顔に手を当てると何か水の様な、しかし水よりも粘り気のある液体が付いた。見ると手が真っ赤に染まっていた。そういえば左側の視界が見えない。どうやら左目を失明した様だ。気づいた途端、少し痛みを実感した。


(ああ…そっか…。私…死ぬんだ。)


流れ続ける血が耳にも、口にも入ってきた。鉄の味がした。だがその感覚も、次第に薄れてきた。もう、起き上がる力もない。彼女は静かに目を閉じ、これからくる自分の運命を受け入れる。


(あーあ…何で私って、いつもこんな目に遭うんだろう…。)


薄れゆく意識の中、彼女は人生を振り返っていた。貧しい環境で育ち、両親もはもちろん姉妹も兄弟もいない。それでも自分には帰る場所があった。大切な人がいた。差別や偏見を受けながらも、落ち込むことなく生きてきた。あの日、全てを失うまでは…。


(生まれ変われたら次は…幸せに…なりたいなぁ…。)


心の中で願った後、彼女の景色は段々と狭くなる。最後に見たのは、ぼんやりと浮かぶ人の影であった。そして彼女は闇に落ちた。

あんた、まだ生きたいか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ