第2章 38話 命の危険を伴う・・・な。
皆でセリーのノートを覗き込む。
細やかに纏められている辺り、セリーの性格が出ているのだろう。
「なるほど、これはつまり・・・」
「「「はい。」」」
マリリ、マリス、セリーがカップをテーブルに置き俺の言葉を待つ。
・・・。
・・・。
「全く読めん・・・。」
「・・・。」
「では、ご説明させて頂きます。」
マリリもマリスも何事も無かった様にセリーに耳を傾ける。
・・・・・何か一言位突っ込んで欲しい。
ていうか、突っ込んで。
うん、悲しい・・・。
数字だけじゃ無く、とにかく簡単な文字と文法位はとっとと覚えよう。
俺は心に誓った。
「・・・と言った所です。」
「成る程、つまりその幻惑の森に行けばソイツは居る・・と。」
「はい。目撃例の多く・・・と言ってもその目撃例自体が僅かで突き詰めて聞くと、『一瞬見たかも・・・』程度では有るのですが。」
正直な所もう少し明確な情報を期待していたのだが、そもそも『幻のモンスター』とまで言われている事を考えれば、目撃例に信憑性が薄くなるのは当然かもしれない。
そう頻繁に目撃されたのでは、幻のモンスターと言われないか。
例え異世界でも、世の中そこまで甘くは無いと言う事だな。
いや、寧ろこの異世界の方が色々と厳しいか。
「マリスが過去に一度見たと言っていたのも、その幻惑の森って所なのか?」
頷くマリス。
「なら行って確かめて見るのが一番だな!
火の無い所に煙は立たないと言うし、少ないとは言え目撃例が全てその幻惑の森なら確実にそこに居るのだろう。
何よりマリスも過去にそこで見たのなら、それこそ確実だろう。」
「う、うん。」
今一つ歯切れの悪い返答のマリス。
見ればマリリとセリーも少し困った様な表情をしている。
「3人共、どうした?」
少し間を置いてからセリーが困った様な表情で答える。
「問題はその幻惑の森なのです。」
セリーが神妙な面持ちで答える。
「うん、その問題とやらは?」
「どういう理屈かは判りませんが、方位磁石が全く意味を成さず最悪は森から抜け出せなく成り、やがては・・・」
「成る程ね。
なら、通った所に何か目立つ様な目印を施すとか?」
「それが出来れば良いのですが、『ここからが幻惑の森』という様な明確な境界が判らないのです。
大体この辺り・・・と言うのは判るのですが、気が付いたら迷い混んでると言った感じですね。
振り返ると目印も消えているとか。
目撃例が極端に少ないのも、幻惑の森からの生還者が少ない事に由縁しています。」
「僕の場合は深追いしなかったのが良かったのか、運良く迷わずに戻れただけで、もしあのまま追い掛けてたら・・・。」
「その幻惑とやらの原因というか、正体って分から無いとなると対処のしようが無いか。
命の危険を伴う・・・な。
ソイツの捕獲には、ちょっと作戦が必要だな。」
3人が頷く。
「ゴムに関しては一旦保留して置くとして、午前中に俺とマリリで纏めた内容を2人に説明しておくよ。」
俺は資料をローテーブルの上に置き、なるべく噛み砕いて説明を行う。
注釈に関しては読めないので、マリリが適切に補助を行ってくれた。
「はー、流石ですね。 こんなの見た事も聞いた事も無いです。」
「あの封印したスマホ?とか言うのもだけど、一体、大地の居た世界ってどれだけ文明が進んでたのか見当もつかないよ。」
マリスとセリーが感心した様に資料を何度も見返す。
確かに一番最初に考え付いた人は凄いと思うけど、改めて機械文明の差を認識した気分だ。
「あ、そういえば先ほどのスマホってなんですか?
ひょっとして、あの封印された箱の中の物ですか?」
「そうだよ。 うーんそうだな・・・
マリリ、マリス、お願い出来る?」
「「はい、いいですよ。」」
「じゃあ、例の箱を持ってくるよ。 ちょっと待ってて。」
俺はスマホが封印された箱を取りに2階へ上がった。
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。