第2章 37話 大地さんって、妙に女子力が高いですね。
「「「「ただいまー」」」」
あれからまっすぐ帰宅。
道中、小型荷車の使用具合を確認したかったので、引くのをマリスに変わって貰った。
車体はしっかり出来てはいるが、車輪の転がりと前輪の首降りに関しては、重さというか少し引っ掛かりというかを感じる。
それなりの重量を積むとかなり重いと思うのだが、マリス曰く身体強化の魔法で自分自身のパワーアップをするから問題無いと・・・
取り敢えずで考えるならそれもアリかも知れないが、ずっと機械を弄る仕事をしてきた俺としてはNGだが、今は笑って流す事にした。
時間が出来たときにでも手入れをしたいと思うのは、余計なお節介だろうか?
不具合の原因はちゃんと突き止め、対処しなければ落ち着かない。
それにしても余りにもナチュラル過ぎて聞き流してしまいそうだったが、セリーもまるでこの家の住人の様に『ただいま』とか言っていた気がする。
ソファーのあの席はセリーの専用席の様だ。
既に寛いでいらっしゃる。
マリスが買ってきてくれたものを早速家の中に運び入れる。
生活雑貨と食料品がメイン、あと俺が頼んでおいた物を数点。
食料品は痛まない様にクーラーボックスの様な形状の木箱に、魔法で作り出した氷を保冷剤代わりに入れてある。
似た形状と言っても断熱材やアルミ材が使われている訳でも無いので、ただの箱とそう変わりは無い代物だ。
蓋の開閉部分に関しては、蝶番によるヒンジが設けられている所は非常に良い。
あと、蓋のロックも出来る様になっている。
断熱材の代替材料が有れば、それなりの物を作ってみようかと思う。
話が逸れた。
「さて、じゃぁ簡単な物だけど今日の昼飯は俺が作るから、3人は適当にゆっくりしててよ。」
「私もお手伝いしますよ。」
「ありがとう。 でもマリリにはいつも任せてばかりだから、たまにはね。」
と言う事で材料等を手早く用意してエプロンを装着。
エプロンはマリリ用、マリス用、俺用とそれぞれに有るが、元々マリリが使っていたヤツなので可愛い花柄のフリル付きの物だ。
しかもピンク色。
「可愛いですね、大地さん。ふふっ。」
それを見たセリーがニヤニヤしているが、適当にスルー。
ちなみにIHやガスコンロなどあるハズも無いが、魔術によるガスコンロ的な物は有るので俺でも難なく料理は出来る
寧ろ火加減などを声でコントロール出来るので音声認識コンロと考えれば、両手が塞がっていても調整出来るのでこちらの方が遥かに便利だ。
取り敢えずは前菜という程では無いが、簡単に野菜サラダを並べる。
シンプルにオリーブオイルとバジルソースを混ぜたものをドレッシングとして和えてある。
女性陣が話をしつつサラダに手を付けている間に、俺はメインディッシュ作りに取りかかる。
・・・。
「良し完成っと。こんなもんかな?」
なまじ独身生活が長いと中途半端に料理が出来たりもするもので、取り敢えずボリュームが有って万人受けし、作るのが手っ取り早い物にした。
「はい、お待たせ!
ふわとろ玉子のオムソバ出来上がり!
ちなみに、マリリがうさぎ、マリスがねこ、セリーがくま、ね。」
「「「わ!可愛い!」」」
折角なのでマヨネーズで絵を描いてみた。
絞り出すヤツは、濾し布に小さな穴を開けて作った応急品だ。
ちなみにマヨネーズもこの異世界に存在していなかった様なので、俺が自分で作ってみたものだ。
この異世界に来る前にテレビで観て気紛れで作った事があり、その時の経験が思わぬ所で役に立った。
あの時の番組に感謝だ。
ソースは元々この異世界にも有ったので、それをそのまま利用。
材料はよく分からないが、俺の知っている一般的なソースと味はそっくりだった。
マリスに頼んでいた物の内の一つは、今回このオムソバに使った麺と新鮮な卵だ。
「この白いのはソースの一種ですか?
にしても絵を描くって斬新ですね。」
セリーはマヨネーズ初見なので興味津々で一口舐めて感動していたので、簡単な作り方をレクチャーしておいた。
「にしても大地さんって、妙に女子力が高いですね。
はー、食べるのが勿体ない。」
マリリとマリスがセリーのコメントに頷く。
だが3人とも手に箸を構えてるあたり、食べる気満々の様だ。
「いや、食べてよ? まだ温かい内に。
というかオムソバはどちらかと言うと、俺の中では男飯なイメージ有るけどな。」
マヨネーズで絵を描いたのは好評の様で良かった。
また今度密かに練習でもして絵のバリエーションを増やしておこうと思う。
「「「「いただきまーす」」」」
皆残さず黙々と平らげてくれた。
嬉しい。
「では、例のゴム・モンスターの情報を簡単に纏めたので、報告したいと思います。」
そう言いながらセリーが自身のノートをローテーブルの上に広げる。
マリリが淹れてくれた食後の紅茶を頂きながら、俺たちは早速仕事に取りかかる事にした。
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