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第2章 30話 大地の・・・ばか・・・

 お風呂場の方からマリリ達の声が聞こえる。

 若干2名程はアルコールが入っているせいか若干声量が大きく、何を話してるかまでは分からないがなんだか楽しそうだ。

 しばらくして脱衣場からお風呂の方へ移動したのか、声が遠退いていく。


 「折角だし、もう一口だけ頂くとするか。」

 

 テーブルの上の酒瓶を手に取る。

 マリリの魔法で作り出された氷はまだ殆ど解けずに残っている。

 琥珀色をしたウイスキーに似た酒を注ぎグラスを少し傾けると、夜光石の照明に照らされたグラスの中の氷がタイガーアイの様に輝く。

 

 一口・・・旨い。


 じっくりと舌の上で味わいつつ確かめる様に喉の奥へ流し込む。


 人のお酒なので遠慮故に二口分程しか注いで無かったので、あっという間になくなる。


 「セリーさん、もう一杯頂きます!」


 セリーはお風呂に行って居ないので酒瓶に両手を合わせる。


 ・・・・・。


 気がつくと二杯目も空になってしまった。


 「うん、まぁ一口分しか注いで無かったからな。」


 もう一度、酒瓶に手を合わせる。

 今度時間の有る時にでも、飯かお酒でお礼させて頂きますんで・・・と言う事でもう一杯。



 ・・・・・。



 ・・・・・。



 「ん、・・・もう朝・・・か。」


 見慣れた、この異世界に来てから見慣れた天井だ。


 カーテンの隙間から差し込む陽の光と、僅かに聞こえる朝の音で目が覚める。


 「・・・。 まだ夢でも見てんのかな。」


 一瞬、何か有り得ない光景が視界に入った気がしたのでもう一度目を瞑る。


 ・・・。


 寝れない・・・ていうか夢では無い・・・みたいだな。


 再び目を開けいつもの天井を確認する。

 やはり間違いない、現実の様だ。


 「ん・・・大地しゃあん・・・。」


 「だい・・・ち・・・さん。」


 ・・・。


 有り得ない光景×2からの音声。

 その発生元はまだ目を覚ましていない。

 このあからさまにお約束とも言うべき、いったい何がどうなればこの構図が出来上がるんだ?


 よし大地、思いだせ・・・思いだせ。

 昨日、何が有った?


 たしか・・・家で皆でミニパーティーと言うなの夕食会をした。

 そのメンバーは、俺、マリリ、マリス、セリー、メリルの5人。

 そしてメリルは明日の・・・時間的には今日か・・・の仕事の都合で先に帰るとの事で俺が途中まで送り届けた。

 その時に色々有ったが、それはまぁ覚えてる。

  

 メリルの唇の感触とか・・・


 ってまぁそれは置いといて。


 帰ってきてから3人に問い詰められて、なんやかんやでその後は俺が先に風呂に入ったと・・・。

 で、3人が風呂に向かってから、セリーの買ってきてた酒を・・・。


 と、ノックと同時に突然部屋のドアが開く。


 「大地おはよー、お姉ちゃんとセリーさんどこ行ったか、知らな・・・。!?」


 「え?あ・・・。」


 ・・・。


 ・・・。


 「え・・と・・、だ、だい・・・ち?」


 「あ、マリス・・・いえ、これはだな・・・。なんと言うか、とりあえず何でも無い、誤解、そう誤解だ。」


 目が点になったまま宙を見つめる様に固まるマリス。

 まるでこの部屋だけ時の流れが止まったかの様に。


 だが、時が再び動きだす・・・最悪の言葉と共に。


 「ふぁ、もう朝ですか・・・大地しゃん、おはようございます・・・。昨日は凄かったです・・・。」


 マリリだ。

 俺の右側で俺に寄り添うように同じベッドで寝ているマリリが、寝ぼけながらどう考えても状況を悪化させる様な素晴らしい寝言と共に目を覚ます。


 そしてそれに追い打ちをかける様に、マリリとは反対側に俺の左側にいるセリーが目を覚ます。


 「ん・・・。ふぁぁ、おはようございます。

  私達あのまま疲れて寝ちゃったのですね・・・。それにしても大地さんなかなかでしたね。」


 二人共まだマリスの存在には気がついて居ない。


 「だい・・・ち・・・」


 マリスが呟き、俺は咄嗟にマリスの方に視線を戻す。

 するとドアノブを握ったまま俯くマリスの肩が少し震えている。


 「あ、その、マリス、違うぞ、多分色々勘違いしてると思うが、何も無かったぞ。」


 ダメだ。

 どう考えても、勘違いコースまっしぐらな台詞しか出て来ない。


 っていうかこの状況、マリリとセリーが俺を挟んで一つのベッドで寝ているこの光景は、誰がどう見ても勘違いする以外の何者でもない。


 「大地の・・・ばか・・・。」


 俺の方をまっすぐ見つめるマリスの目からは大粒の涙が一つ二つと溢れ出していた。


 「ちょっとまってくれマリス。 これは・・・」


 そこまで言いかけた所でマリスはそっとドアを閉め、その場から走り去った。


 「あー、これは参ったな。」


 取り敢えずなんとか誤解を解かねば・・・。


 俺は深くため息をついた。



いつもお読み頂きましてありがとうございます。

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