表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/257

第2章 28話 大地さんは優しすぎます。

 「ただいまー。」


 「おかえりー、大地。 意外と早かったね。」


 「まぁ途中までだったからね。。」


 家に着くと片付けを終えたマリスが、キッチンから戻ってきた。

 一口だけどは言え久しぶりに口にしたウイスキーに寄るものか、軽い眠気を感じつつとりあえずソファーに腰を下ろす。


 「じーっ・・・。」


 「え、えーっと何かな?」


 いつの間にか隣に座ったマリスが眉を顰め俺の顔を見つめる。


 「ふーん。」


 「ん???」

 

 ため息をつきつつ俺の首元にマリスが手を伸ばす。

 マリスの指先がそっと触れる。


 な、なんだ・・・まさかマリスまでこの酒を飲んで酔ってるの・・・か?

 俺はローテーブルの上に置かれたままの、ウイスキーに似た酒瓶を横目に確認する。

 量は・・・こんなもんだったか。

 それにマリスは年齢制限を守らずに酒を飲む様な子じゃ無い。


 「はーっ。 目を逸らした。」


 「え?いや別にそう言う訳じゃ無いんだけど、どうしたのかな、マリス?」


 ぐいっと顔を近づけるマリス。


 「・・・。大地って一見無害そうに見えて、そーいうところ有るよね。」


 マリスがすっと体を起こすと、俺の顔の前に指先に摘んだそれを見せる。

 毛だ。

 綺麗な栗色をした長い一本の毛。


 「メリルの毛・・・どーして大地の首元に付いてるのかなー?」


 「え?あー、いやなんでかな。はは・・。」


 ひょっとしてさっき抱きしめ合った時か。

 流石に気が付かなかった。


 「「そうですよ、なんでですか?」」


 さっきまで寝息を立てていたマリリとセリーがいつの間にか目を覚まし、2人してじーっと俺を見つめる。

 その目はまだ若干座っているので、少し・・・いやかなり酔いが残っているようだ。

 まぁそもそもそんな短時間で、これ程の度数のアルコールが抜けるはずが無いか。


 「「「ねぇねぇ、なんでですか?」」」


 マリリ・マリス・セリーが、3人して俺に顔を近づけ迫る。



 別に下心とか、そんなんが有った訳じゃない・・・いや、少しだけ有るかもだけど。


 冗談は置いといて、メリルのお兄さんの事、俺なんかが少しでもメリルの心の傷を癒やす・・・とまでは言わない、せめて少しでも支えになれればと思ってだ。

 まだ14の少女が背負うには、この異世界の現実は重すぎる。


 俺は3人を手で制す様に、一旦落ち着かせる。


 「3人ならメリルの生い立ちの事、当然知っていると思うが・・・実はな・・・。」


 俺はこの間の深夜にたまたまメリルと会った事。

 その後、温泉街にてメリルの口からメリル自身の生い立ちや、お兄さんの事とメリルが居た滅ぼされた村の事を聞いた事など。

 そして先ほどの事を説明した。


 一応、頬にキスされた事は敢えて伏せておいたが。


 「そう・・・だったんだね。 メリルの生い立ちの事は知ってたけど・・・。

  ごめん大地、僕、ちょっと大地とメリルの事を疑うというか、嫉妬しちゃって・・・う、うぇぇ。」

 

 ぽろぽろと涙を流しながら謝るマリス。


 「ごめんなひゃい、大地さん。わたひ、わたひ・・・うぅ・・。」


 マリスに続いてマリリも涙を流し目を拭う。


 「大地さん、優しいんですね。 ただの女好きなんだと思っていましたが、見直しました。」


 そういうセリーも目に薄っすらと涙を浮かべている。

 でも見直したって、しかもただの女好きとか、セリーの俺に対する印象はいったいどんなのだ?

 そして、セリーは恐らく完全にまだまだ酔いきっているな。


 マリリとマリスにセリーが泣きながら俺の胸に顔をうずめてくる。


 「え?ちょ・・・。まぁいいか。」


 どうしたものかと思いつつも、俺は両手でそっと3人を肩を少し抱きしめる。




 

 「大地・・・大地っていつも優しいね。」


 顔を起しマリスが呟く。


 「そうですよ、大地さんは優しすぎます。」


 マリリも体を起し俺の顔を見つめる。

 続いてセリーも体を起し、自分の席に座り直す。


 「余り優しすぎるのも、誤解を招きますよ。」


 セリーも落ち着いたのか、いつもの口調に戻る。

 いや目は座っているので、戻ってないか。


 「気をつけるよ。」


 3人に少し笑顔が戻る。



 ふとマリリが時計を見上げる。


 「あ、もうこんな時間ですね。 そろそろお風呂にしましょうか?

  大地さん、お先に。 私達は少し準備をしないとですので。」


 「ありがとう、じゃあお言葉に甘えて先にお風呂を頂くよ。」


 俺はソファーから立ち上がり、風呂へ向かった。


いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ