第2章 15話 爆乳からの生還
「では大地様、今回シャオさまレープ商会より指名依頼がありましたのでお伝え致します。その内容は・・・。」
同時にセリーが先程の緑色に変わった用紙を俺の方に向けカウンターの上に提示した。
「こ、これは・・・」
「うん、読めない・・・セリーさん今回もお願いします。」
やっぱりこの異世界文字とでも言おうか、読めないと困るな。
いつもギルドで仕事を受ける時はセリーに読み上げて貰ったり、マリリ・マリスが居る時は2 人に読んで貰ったりしていたが、何時までも甘えている訳にもいかないな。
普段の仕事中は言葉が通じるので然程の不便さは無いのだが。
「賜りました。では、今回のシャオさま率いるレープ商会さまからのご依頼内容ですが、『レープ商会の主力となる、最高の荷馬車の制作』となっております。」
「「「最高の荷馬車???」」」
俺とマリリ、マリスの3人がハモった。
「はい、そう記載されています。また、大地様並びにマリリ様とマリス様にもその補佐としてご指名がなされています。」
セリーが淡々と読み上げる。
普段セリーは俺達の事を『さん』付で呼ぶのだが、こういった時の敬称は『様』になる。
ベテランらしい使い分けだ。
指名による依頼の場合、当然だが指名相手がその依頼内容に則した資格をもっていなければならない。
今回の案件ならば、鍛冶職人の資格を持った者でなくてはならない。
マリリとマリスはその資格を有してはいないが、請負う側の主となる人物がその資格を有していれば、その補佐に成る者にはその資格は必要が無い。
故に、今回はマリリとマリスも連名で指名がなされているのだ。
勿論、連名で指名された者にも報酬金が生じるので、その分の支払いは高額となる。
「大地様、並びにマリリ様、マリス様、今回の案件どうなさいますか?」
形式上セリーからの確認が成される。
荷馬車を一から作った経験なんて当然無いが、元の世界で仕事でそれなりに機械を弄ってきた経験上、構造うんぬん面では問題が無いだろう。
だが、こちらの世界にどれ程の工具類が有るのかといった事や、こちらの世界で俺が培って来た知識や経験がどれほど通用するか分からない不安は有る。
とはいえ、何事も恐れ躊躇していたのでは何も始まらな無い。
成らば、折角の機会を不意にする事は無いだろう。
俺達3人は互いに顔を見合わせ確認を行う。
「「「勿論、承ります!」」」
依頼受領のサイン等の必要手続きを済ませる。
「では、詳細につきましては直接シャオ様の方にご確認をお願い致します。」
「了解致しました。」
セリーが先ほどの用紙を持って一旦奥の部屋へ行くのを見届ける。
「シャオさん、今回はご指名ありがとうございます。では早速ですが、詳細について・・・ってちょちょ・・モゴモゴ・・・」
「いやー、引き受けてくれて私は嬉しいよ!」
『最高の荷馬車』についての意味を確認しようとシャオの方へ向いた時だった。
突然、シャオが俺に抱き着いてきた。
溢れんばかりの巨乳を越えた爆乳のシャオに抱き着かれ、その爆乳に顔が埋まる俺。
漫画で有りがちなシーンで息が出来ないとか有り縁だろうとか読みながらツッコミを入れていたが、味わってみて納得、息が出来ずに窒息しそうだ。
「ちょ、シャオさんギブギブ、く、苦・・・」
もがきつつ、シャオを離そうと両手を付き出した。
『むにょん』とした柔らかい感触が両手の平に伝わる。
反射的にその感触を確かめる様に2、3度、手の平を動かし、そこで俺は全てを察した時にはもう手遅れだった。。
「んふ、大地殿ったら、みんなの前で大胆。」
そこでようやくシャオが腕を解き、その爆乳から生還をする事に成功した。
いや、正しくは成功では無かった。
特殊なスキルも何も無い俺でも感じる程の、強烈な何かを背中に感じた。
俺は恐る恐るその方向に振り替える。
「「大地さんの(大地の)えっち!!」
振り返った瞬間、マリリとマリスのビンタがダブルで炸裂した。
「ちょ、ちょまって誤解、誤解だ。というかどう考えても不可抗力!」
慌てて否定をするも、2人とも頬を膨らましお怒りモード状態だ。
困り果てた俺はいつの間にやらカウンターまで戻ってきていたセリーに、助けを求める様に視線を送る。
「スケベ・・・」
セリーまで起こっているのは何故なのか・・・
「あっははは!大地殿、カワイイからついついからかいたくなっちゃってね。」
そう言いながらシャオがケラケラと笑う。
「ちょっとシャオさん、勘弁して下さいよ。」
「いやーごめんごめん、ほらマリリちゃんもマリスちゃんも機嫌直して。ね?」
「「むーーー」」
姉妹揃って膨れるマリリとマリスをシャオが宥める。
なんだか悩みの種が増えたな・・・と自然とため息が漏れる。
とりあえず俺達はギルド酒場の席に移動し、そっちでシャオに依頼の詳細な確認を行う事にした。
にしてもセリーさん、どうしてまだ冷たい視線なんですかね・・・。
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。