第2章 14話 早速だけど大地殿を指名しての依頼、いいかな?
「おはよう!マリス!」
俺が部屋を出ると同時にマリスも部屋から出てきた所だった。
「あ、うん・・ぉ、ぉはょぅ・・・。」
俺の顔を見た途端、なんだかシドロモドロになるマリス。
ひょっとして昨日の、おっぱい見ちゃった事件のせいだろうか?
いつもなら、「おーっす!」とか言いながらパンチを軽く繰り出したり、場合によっては寝ている俺にフライングボディアタックを全力で仕掛けて来るのに。
なんか調子狂うな。
って、マリスも年頃の女の子だし、裸見られたらやっぱり恥ずかしいか。
ついついマリスの裸を思い出してしまう。
やばいやばい・・・朝の元気一番がややっと納まった所なのに、また元気になってしまう所だった。
ここで俺も引いたら、余計に気まずくなっちゃうよなぁ。
良し。
俺はマリスの頭を軽く2回ポンポンとする。
ビクッと肩を震わせたあと、小動物の様に俺を見上げるマリス。
「おどおどしたマリスもなかなか可愛いけど、いつもの元気いっぱいのマリスはもっと可愛いぞ。」
ふむ、こんな感じで良いだろうか。
するとマリスは俺を見つめたままみるみる内に耳まで真っ赤になって行く。
あれ?まずった?
「・・・。大地・・・ずるいよ・・・。」
そう言いながらマリスが俺の服の裾を掴む。
「えっ!?あっ、すまん。」
どうしたらいいか分からず、とりあえず謝る俺。
あぁ、なんかこういう時にどう言ったらいいのか・・・こういうシチュエーションでの女性との会話スキルが欲しい。
悩んだ挙句、俺はマリスを軽く抱きしめてみた。
「ひゃっ!だ、だ、だい・・・ち?・・・もう。」
マリスも俺の体に手を回し、少しの間だけ2人で抱きしめ合う。
「ん、もう大丈夫。ありがとう大地。ごはん行こっか。」
「そうだな。」
俺はもう一度マリスの頭を撫で、マリリの待つダイニングへ向かった。
「おはよう、マリリ。」
「おはよー、お姉ちゃん。」
「2人とも、おはよう。今日はギルドに行って大地さんの鍛冶職人としての登録もあるし、早く食べちゃいましょう!」
俺達はそれぞれ席に付き、早速マリリの作った朝食を頂いた。
今日は、シンプルにサンドイッチだ。
シンプルと言っても色々と種類は合って、タマゴサンドやハムサンド、カツサンド、ホイップケーキとフルーツのサンドと選り取りみどりだ。
あと何故か、緑色の焼きそば的なものが挟まれたサンドイッチもあるが、これは所謂、焼きそばパン的なものだろうか・・・
にしても緑色ってなんなんだ・・・
やはりファンタジー世界、油断が成らない。
少し恐る恐る口に運んでみるが、これは良い意味で裏切られた。
緑色の焼きそばパンならぬ焼きそばサンドの正体は、バジルが練りこまれたパスタだった。
なる程、それ故の緑色と妙に納得。
食べる際に少量のオリーブオイルに付けて食べるのだが、これがなかなかの美味。
昨日、昼前に寝てから食事をしていなかった事も有ってか俺達3人は残さず一気に平らげ、食後の紅茶の後、準備を整えギルドに向かった。
「では、後はこちらにサインをお願い致します。」
必要事項を記入した後、一旦セリーが目を通し不備がないことを確認。
その後、最終のサイン欄に名前を記入する。
用紙に掛けられた『ラング・コンバーション』の魔法により、少しの間を置いてから文字が浮かび、この世界の文字に変換される。
何度見ても不思議だ。
俺の横で今回も記入のサポートをしてくれるマリリとマリスに加え、今回の件の提案者のシャオも一緒に覗きこんでいる。
ギルドに来た時、丁度シャオさん一行がギルド酒場で朝食を食べ終えた所だった。
「ふーん、それが大地殿の世界の文字なのですね。なかなか難しそうな文字ですね。」
関心した様にシャオが腕を組み唸る。
俺からしたら、この異世界の文字のほうが余程難解に思えるが・・・。
まぁ慣れの問題かも知れない。
いつまでもこの異世界の文字の一つも読めないのはやはり問題が有るだろうし、また機会を伺いマリリやマリスに教えて貰うことにしよう。
シャオさんのレープ商会の推薦もあって、鍛冶職人としてのギルド登録の手続きは滞り無く完了された。
本来ならば、今回の俺のような場合は『仮登録』という扱いになるハズなのだが、特別に『本登録』扱いとなった。
理由は明確にされていないが、ギルド協会側からの提案も有ったらしい。
余りの例外中の例外に一同少しの戸惑いを感じたが、悪い話では無いし何でも疑うのは良くないと判断し、素直に提案を受け入れる事にした。
むしろ、仕事の窓口が増える事には変わりないので、ありがたいと言えばありがたい話である。
「これで大地殿に晴れて鍛冶職人としての仕事を依頼できるね!ではセリーさん早速だけど、大地殿を指名しての依頼、いいかな?」
シャオが待ってましたとばかりに切り出した。
「では、こちらの依頼申請用紙にご記入をお願い致します。」
「了解した!」
スラスラと記入を行うと、部下2人も一緒に記入内容のチェックを行いセリーに用紙を手渡した。
「はい、問題はありません。ではこれにて、ギルド協会は本件を正式な指名依頼として承認致します。」
セリーが用紙に大きめの判子を押すと、白色だった依頼申請用紙が薄い緑色に変化した。
「では大地様、今回シャオさまレープ商会より指名依頼がありましたのでお伝え致します。その内容は・・・。」
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