表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/257

第6話 こんな所で死んでたまるかよ!

 俺たち3人は登山道の様なルートを通り丘を下った。

 どうやら森を抜けたところの丘までの通り道は、一応人の手によりある程度整備された登山道らしい。

 整備といっても馬車が通れる程度に木や草が伐採され地面が踏み固められ、50メートル程の間隔で道であることを示す為の木の杭が両脇に打ち込まれている程度だ。

 決してコンクリートやアスファルトで固められた道路では無い。

 たまに杭の代わりに腰が掛けれる程度の低い柵の様な形の物が設置されていたがマリリに聞いた所、どうやら見た目通りちょっと腰を掛けて休んだりする為に設置されているそうだ。

 これに関してはこういった道などを作る職人を路工人と言うらしいのだが、その人たちの計らいや気遣いみたいなものらしい。


 マリスを先頭にマリリと俺が横に並び、その後ろを付いて歩いていく。

 丘を降りてからも馬車が通れるように踏み固められた道があり、街や村、王都などを繋ぐこういった道を一般的に街道と呼んでいるらしい。

 クムリ村へ向かいながら、2人に色々と質問をしたりしながら道を進んでいく。

 話していくうちに大分打ち解け、俺もマリリも言葉尻が随分と柔らかくなっていった。

 マリスに関しては最初からそんな感じだったが。


 「で、結局おにーさんはさっきの森に飛ばされる前は、何処に住んでたの?」


 街道の沿いの木になっていた青いリンゴに似た果実を齧りながら、マリスが訪ねてくる。

 この2人になら本当の事を話しても問題は無いだろう・・・森で助けてもらった事や、道中色々と質問や話をしていく中でそう考えていた。

 ただ何故、見ず知らずの俺にこうも色々と優しくしてくれるのかが気にはなる所だが。

 まがいなりにも中間管理職と言う立場で社内外の色々な人と接し見てきた経験からすると、この2人は本当にいい人なんだと思える。


 「日本って所に住んでいたんだけど・・・ん、どうかした?驚いた顔して。」

  

 「いえ、薄々と感じてはいましたが、改めて大地さんから知らされると少し驚いて。」


 「だよね、これは運命ってヤツなんかな、お姉ちゃん。」


 「ちょ、ちょっとまって日本の事知ってるって事?俺以外にも日本人が居るって事なの!?」


 予想していなかった返答に、驚きが隠せず声が裏返り少し手が震える。


 「はい、正確には『居た』なのですが。」


 「そ・・・うですか・・・という事は日本に帰ったって事?」


 「それが分からないのです。そうかも知れませんし、そうで無いのかも。」


 そう言ったマリリの表情にはどこか寂し気なものを感じたが、俺以外にも日本からこの世界に来た人間が居ると分かった途端、少し安堵した。

 今その人物の所存は分からないにせよ、会う事ができれば何らかの活路を見い出せるかもしれない。

 そう思うと先ほど悲しげな表情を見せたマリリには申し訳ないが、話を聞き出せずにはいれられない。


 「もし良ければ、その日本人についてもう少し詳しく聞いいいかな?」


 と言った時だった、マリリとマリスが武具を構え真剣なまなざしを向ける。

 ひょっとして深く突っ込んではいけない事なのか、だとしたら態々言い出したりはしないだろう。

 思案を巡らせる程も無い間にマリリがロッドを構え、魔法の詠唱を始めた。


 恐怖で体が凍りつく。


 助けて貰ったと思いきやこんな所でいきなり魔法で殺されるとか、いくらなんでもハード過ぎないか。

 とにかく謝るのが得策か、謝って済む話なのか、どうしたら・・・

 見ず知らずの俺をここまで助けて森から連れ出してくれたんだ、話せば謝ればきっと許してくれるハズ!

 ええい!迷ってる暇なんかあるか!!こんな訳分からん所で、意味も分からず死んでたまるかよ!

 

 「ご・・・」


 「大地さん、伏せて!!アクア・スピア!」


 俺の言葉をかき消すようにマリリがそう叫び、俺の頭上方向に向けて魔法を打ち放す。

 いわれるがまま咄嗟にその場で身を屈めた俺は振り返り視線を向けると、マリリの放ったアクア・スピアが上空に舞う巨大なコウモリの様なモンスターの1匹を貫いていた。

 『キュギュア!!』という耳に響くような甲高い断末魔を挙げたその巨大なコウモリは、ジュッという短い音と共に青い炎に包まれ消滅し、そこから現れた紫色のクリスタルが1粒地面に落下した。

 仲間が殺られた事に腹を立てたらしき他の巨大なコウモリ3匹が、鷹の様な鋭い爪を付き出しながらこちらへ目掛けて降下して来る。


 「いっただきー!遅いよ!」


 軽快な声と共にマリスが素早く矢を連続で放ち2匹を瞬殺、立て続けにマリリの放ったアクア・スピアがもう1匹を貫き、青い炎に包まれ消滅しクリスタルへと姿を変えた。

 どうやらマリリとマリスはこのモンスターが近寄っていた事に気が付いており、先手必勝の機を伺っていたらしい。

 その事を俺に先に話さずに突然魔法を放ったのは、俺が振り返る等の反応をしてモンスター共に先制攻撃を許してしまうのを懸念しての事らしい。

 お蔭で冷や汗をかいた。


 「石達よ、我が声に耳を傾け集いたまえ。コレクト・クリスタ・・」


 マリスが掌を広げそう唱えると、先ほどの巨大コウモリの成れの果てのクリスタルがぼんやりと光に包まれ地面から浮き上がり、マリスの掌に集約された。


 「一丁上がり!おにーさん大丈夫だった?」

 

 「お、おおぅ、大丈夫ありがとう。びっくりしたけど。さっきのでっかいコウモリも俺が最初に対峙した赤褐色のゴブリンと同じく、このクリスタルとコウモリを組み合わせて作られたって事??」


 まだ少しドキドキしている心臓の鼓動を押える様に深呼吸をしつつ、質問を投げかける。


 「そうだよ。エビルコウモリって言うんだけど、正確には鷹とコウモリと、このクリスタルだね。」


 そう答えながらマリスはそのクリスタルを懐から取り出した革製の小袋に入れた。


 「エビルコウモリは大きいですが実はそれほど強くは無いんです。ただ今回は運が良かったですが、火炎系の魔法が使え時には仲間を呼んだりするので少し厄介ですね。」


 マリリが補足を加える。


 「そっかー。コウモリって位だからどうも夜に活動するイメージが有っただけど、そうでも無いんだね。」


 「確かに先ほどの様に昼間も活動はしますが、夜の方が圧倒的に活発ですよ。主に谷間にあるような洞窟や森の中に巣が有るので、こういった開けた場所で遭遇するのは珍しい方ですね。」


 「だよねー。ひょっとして森からずっと付け狙われていたのかもね。そうだ、村まではまだ少し有るしおにーさん丸腰じゃなんだからコレ持っとくといいよ。」


 そういいながらマリスから腰に携えている短剣2本の内の1本を受け取った。


 「ありがとう。いいの?マリスの武器が減っちゃうけど。」


 「大丈夫だよ。もう1本有るし、基本的にはこの弓がメインの武器だからね。」


 折角の心遣いを断るのは失礼だと判断し、マリスの説明通り腰ベルトに装着した。

 

 「うん、似合ってるね!ねぇお姉ちゃん!」


 「ええ、カッコいいですね。」


 お世辞だろうと分かっていても、美少女2人に褒められ思わず照れてしまう。

 スムーズに構える事が出来る様にと、何度かホルダからの出し入れの練習をすると良いとのアドバイスを受け、練習する内にコツがつかめてきた。

 出来る事ならなるべくこれを使わないで居られる方が嬉しいが。

 

 刃の形状は例えるなら良くあるサバイバルナイフ的な形で刃渡りは大体20センチ程は有るので、もし現代社会でこんなものを持ってうろつけば確実に銃刀法違反で捕まるだろう。

 これを収めるホルダは非常に硬い木を加工して作ってある専用品らしく、奥まで納めるとカチッという感触とともにロックされ逆さを向けようが多少揺そうが落ちない様になっている。

 親切にバックルが備わっておりズボンのベルト等に固定できる様に作られていたので、これを利用し腰の後ろに水平に装着した。


 「さぁ、陽が暮れない内に先を急ぎましょう。」


 俺たち3人は互いに頷き合い、クムリ村への旅路を急ぐことにした。


本日の投稿は取りあえずここまでにしたいと思います。

ひょっとしたら夜中に投稿するかもですが、また明日以降に続きを投稿させて頂きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ