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第5話 私とおねーちゃんとのコンビは最強なんだよ!

時間が出来たので更に5話目も投稿致します。

 「大気に存在し水の分子達よ、我が願いを受け一本の槍となり、かの者を付き破れ・・・アクア・スピア!」


 マリリが詠唱を始めると、右手に握られた魔法の杖に施されたクリスタルの周りに光のリングの様な物が現れ、そのクリスタルを中心としクルクルと回転を始める。

 アクア・スピア・・・恐らくこれが俗にいう魔法名というやつだろう。

 それを叫ぶと同時にモンスターの群れ、ゴブリン共に向けた杖の前方に淡く青色に光る『槍』が現れ、とてつもない速度で一匹のゴブリンの体を貫いた。

 『グゲェ』というまるで踏みつぶされたカエルの様な叫びを短く上げると、そのままその場に倒れ息絶える。

 

 「おぉ、すげぇ。」


 マリリとマリスの話を信じていなかった訳では無い。

 だがやはり科学技術の発展した現代社会において魔法なんてものは空想上の産物でしか無かったが、こうして目の前でそれを見ると信じざるを得ない。


 「おにーさん、感心してる場合じゃ無いよ!」


 ゴブリンの1匹が力任せに投げたハンマーがこっちへ飛んでくる。


 「おねーちゃん!」


 「展開!アクア・ウォール!」


 詠唱らいしい詠唱も無くマリリが魔法名を叫んだ途端、目の前に円盤状の水の壁が出現したかと思うとドーム状に変形し俺たちを覆う。

 その水の障壁により、ゴブリンによって投げ飛ばされたハンマーは無残にも弾かれ地面に落下した。


 「今だ、スキ有り!」


 そう叫ぶとマリスから放たれた矢はハンマーを投げてきたゴブリンに目掛けて一直線に向かい、そのままゴブリンの顔面に突き刺さり短い断末魔と共に地面に倒れた。

 気が付くとそれとほぼ同時にマリスが飛び出し、いつの間にか弓を右の腰に携えていた短めの剣に持ち替え、矢が刺さったゴブリンのすぐ後ろに居たもう1匹のゴブリンの懐に飛び込んだ。

 薙ぎ払う様にゴブリンの腹を一太刀、身を翻す様に回転しながらその勢いに乗せてゴブリンの背後から更に薙ぎ払う様にもう一太刀。

 まるで流れる様なその身のこなしに思わず見惚れてしまう。

 無言のまま倒れるゴブリンを尻目に、マリスは太ももに装着してある全長20センチ程の小型ナイフのようなものを1本素早く投げる。

 そのナイフがゴブリンの目に刺さると『グギャァ!』と言う叫びと共に、ゴブリンの足が止まり目を押えて痛み苦しんでいる。

 

「大気に存在し水の分子達よ、互いに結び合い無数の礫となり、かの者に斬撃を。アクス・メテオ!」


 すかさずマリリが杖の先端をそのゴブリンの頭上に向け詠唱を始めるとゴブリンの頭上に鋭くとがった氷の塊が無数に出現し、マリリが杖を振りかざすと同時にその氷が斬撃となりゴブリンに降り注ぐ。」

 氷の斬撃により体を貫かれたゴブリンは、その場に膝を付きそのままうつ伏せに倒れ動かなくなった。


 「ふぅ、なんとか片付いたわね。大地さん、どうかしましたか?」


 「え、あ、いや。凄い連係ですね。こんなに可愛いのに戦いも強いなんて、思わず見惚れてしまいました。」


 「どーよ、私とおねーちゃんのコンビは最強なんだよ!」


 「これ、マリス、調子に乗らないの!」


 トンと軽く右手で誇らしげに自分に胸を叩きながら答えるマリスに、頬を少し赤らめ照れるマリリ。

 本当に対照的な姉妹だ。


 「マリス、大地さん、日が暮れないうちに先を急ぎましょう。夜になるとファンガルの活動が活発になるわ。」


 「そうだね。アイツら素早しっこいし暗闇でも目が効くもんね。 急ぐよ、おにーさん!」


 「あ、はい。」


 それにしても、まるで計算されたかの様な的確な動きと、お互い意思疎通が図られているかの如く連係プレーに呆気にとられてしまっていた。

 この2人ひょっとして、かなり強いんじゃ無いだろうか。

 モンスターの巣食うこんな森に訳もわからず飛ばされたのはこの上ない不幸だが、この2人と出会えてのは幸いだった。

 俗に言う不幸中の幸いというヤツか。

 周りを警戒しながらも慣れた感じで森の中をどんどん進んでいく2人に、俺も置いて行かれまいと付いていく。

 もちろん2人だけで先に先にと進んでいく訳では無く、森の歩き方に不慣れな俺の様子を伺いながら無理のないペースで進んでくれているのだ。


 さっきの戦闘でマリリとマリスの2人が倒したゴブリンは、最初に俺が1人で遭遇したゴブリンとは少し違うらしい。

 背格好はほぼ一緒だが俺が遭遇したゴブリンは赤褐色をしていたのに対し、2人が倒したゴブリンは汚くくすんだ緑色をしていた。

 それになにより決定的に違うのは、倒した後だ。

 赤褐色のゴブリンは倒した後、青い炎と共に消滅し紫色のクリスタルが出没した。

 だが緑色のゴブリンは絶命した後はそのまま野垂れていた、死体として。

 

 マリスに聞いた話だが、どうやら一般的なモンスターは大きく分けると3種類に大分類されるらしい。

 まず1種類目が野生に生息するモンスター、先ほどの緑色のゴブリンはこれに該当し、もっともポピュラーなモンスターだ。

 次に2種類目が、野生に生息するモンスターと魔法石を組み合わせる事によって出来たモンスターで、赤褐色のゴブリンがこれに該当する。

 ただのモンスターよりもこちらの方が知能も僅かながら上で、詠唱などを行わず本能的に魔法が使える個体もいるらしく、一体どれ位の亜種が存在しているのか不明らしい。

 『組み合わせる』と言う言葉の通り、作為的に作り上げられたモンスターで有るというのが重要である。

 そして3種類目が、魔石を主体としてあらゆる物質を掛け合わせ生み出されるモンスターで、非常に珍しい。

 というのも、個体によってはかなりの知能を有し、森や洞窟など野生の者はまず居無い。

 その種類は多種多様だが、数はそう居ないと認識されている。

 誰でも生み出せる訳では無くかなりの魔法力とセンスが無いと不可能な上に、その方法も一般的には禁術法とされているらしい。


 更に1回、緑色のゴブリン5匹程の群れと遭遇したものの、マリリとマリスの絶妙なコンビネーションにより呆気なく勝利を収める。

 勿論俺は二人の邪魔にならない様に、少し後方に下がりその様子を見ていた。


 やがて森を抜けるとそこは少し小高い丘になっていた。

 雲一つ無い澄み切った青空に輝く太陽、時折心地の良いそよ風が吹く。

 この世界にも季節が有るのだとすれば、季節はさながら春といった感じを受ける。

 

 「っっふー。」


 3人横に並び胸いっぱいに深呼吸をし互いに顔を合わせ、森を抜けた安堵感から思わず笑みがこぼれる。

 

 「さて、あそこに見える川に沿って暫く歩きあの山間を抜けると、私たちのクムリ村に繋がります。私たちは依頼の仕事を終えてますので大地さんも一緒にこのまま村へ戻りましょう。」


 マリリの指差す方には一本の川が見える。

 川幅は大よそ20メートルといった所か、視認出来る範囲には橋が1本有りマリリの言うクムリ村とは反対側の方に見える。

 川の上流側はどうやら先ほどまで自分たちが居た森から来ている様だ。

 今この場から視認出来る範囲には街や村などは確認出来ない。

 適度に起伏のある道や、森と言うほどではでは無いがそれなりに林間区域もあったり川を挟んで更に向こうの方には山が有る等、いかにも絵にかいたようなファンタジーな世界に見える。


 全く持って行く当ても無ければ、今日の寝床の確保すら困難と思われるこの状況ではこの誘いを断る理由も無い。


 「はい!ご迷惑でなければ宜しくお願いします。」


 「迷惑だなんてそんな。さあ、日が暮れる前に先を急ぎましょう。」


 女神の様な笑顔で答えてくれるマリリに心が救われる。

 助けてもらってばかりで心苦しいが、ここでマリリ達と別れるのは確実に死亡フラグというヤツだろう。

 街までいった所で何のアテも伝手も無いが、森を抜けたからと言ってゴブリンのようなモンスターが居無いとも限らないし、とりあえずこの状況を打開するには最善の策と思われる。


 俺達3人は互いに頷き合い、クムリ村へ向かうべく再び進行を開始した。


次、6話の投稿は本日の夜に行えると思います。

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