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第49話 ベールの下の顔

魔族の一撃を受けた大地の命運は・・・

ハルバートの斬撃により、剣は砕かれ俺は真っ二つに叩き斬られた・・・




 かと思った。

 だが、そうでは無かった。


 受け止めていたのだった。

 俺自身、信じられなかった。


 マリリとマリスに施して貰った強化魔法による効果なのか、奇跡的に間に合い剣も砕ける事は無かった。

 だがその凄まじい重圧は、体に重く圧し掛かっていた。

 同じ攻撃が再度行われた場合、とてもじゃないが再び防げると考えられない。


 「ほぅ、我の一撃を受け止めるとは、身体強化魔法を掛けたとはいえ、人間にしてはやるじゃないか。」


 魔族が口を開き冷たい声が響く。

 その顔は黒いベールが掛けられていてハッキリとは見えない。

 

 「ふふ、ならばこれはどうかな?」


 魔族の手からハルバートが消えたと思った途端、次は下からハルバートが現れ振り上げる様に攻撃が繰り出された。

 

 「くっ!!!」


 俺は咄嗟に身を引き横にかわす。

 とてつもない勢いで繰り出された攻撃による風圧は、鋭い風の刃となり俺の頬を僅かに切り裂いた。

 

「大地さん!!」「大地!!」


 それと同時にマリリとマリスが叫び飛び出した。

 俺の左側からマリスが敵の懐に飛び込み短刀を振るうも、ハルバートの柄であっさりと受け止められる。


 同時に俺の右側から、マリリも攻撃を繰り出していた。

 ロッドの先端に魔法で作り出した長く大きな刃が青く光り輝いていた。

 その形状はマリリ達の家に飾って有った、ばーちゃんの薙刀に似た形状をしている。


 しかし、その一撃も左手をかざしただけで防がれた。

 恐らくは障壁魔法の類だ。 


 「ふふ、2人共その歳でこの太刀筋、そして魔法剣か・・・悪くない。だが狙いが甘いな。」


 ベールで表情ははっきりと見え難いが、まるで楽しんでいるかの様に僅かに口角が上がった様に見えた。

 ヤバい!攻撃が来る!

 俺は本能的に感じ取ったが、既に遅かった。


 「吹き飛べ。」


 そいつが静かにそう呟いた瞬間、突然突風に煽られる様な衝撃を受ける。

 3人とも防御が間に合わない!

 

 「「きゃあ!!」」


 マリリとマリスが後方に飛ばされ、荷馬車に激突した。

 

 「い・・たぁ・・・」「うぅ・・・」


 荷馬車に激突した拍子にマリリは肩をマリスは腕をぶつけたが、運が良かったのか致命傷になる様なダメージでは無く、2人共直ぐに立ち上がり再び武器を構えた。

 そして俺は、そいつの真正面でその衝撃を受けたのだが・・・


 「あ・・・れ?」


 何ともない。

 確かにマリリとマリスが弾き飛ばされた瞬間、間違いなく俺も衝撃を受けていたと思ったんだが・・・

 どう見ても俺は立っていた場所から1ミリも動いておらず、何故かダメージ的なものも受けていない感じだ。


 やはり俺には闇属性魔法に対しての耐性が本当にあるのか!?

 どうやら敵である魔族も同じ事に気が付いたのか、一瞬隙が出来た様に思えた。


 今しかない!!


 俺は右足を踏み出すと同時に、魔族の首元を狙い水平に薙ぎ払う様に剣を振るった。


 捉えた!!

 完全に間合いに入りきった状態で繰り出した剣は、見事に目の前の魔族の首を切り飛ばした。

 

 「やるではないか・・・気に入ったぞ。」


 俺の耳元に突然、冷たい息が吹きかけられる。

 魔族は俺の背後に寄り添うように立っていた。

 確かに切り飛ばしたそれは、その魔族の残像だった。


 状況を理解した俺は飛び退こうとするが恐怖のせいか、それとも別何かなのか分からないが体が動かない。

 

 『だめだ。このままじゃ、みんな殺される。』


 俺は渾身の力を込めて体を動かそうとするが、腕も足もピクリとも動かない。

 

 『くそっ!俺はいい・・・だがマリリ達だけでも・・・』


 再度、渾身の力を込める。

 動いた!

 極僅かではあるが、右手を、剣を持つ方の手を僅かに動かす事が出来た。


 「・・・ふ、ふふ・・・我が魔法に耐えた上、我が呪術にまで逆らうとは・・・やはり、ますます気に入ったぞ。」


 再び背後から俺の耳元に冷たい吐息が吹きかけられる。

 恐怖の余りか、全身鳥肌が立ち悪寒が走る。


 なんとか首も動かす事が出来、その魔族の居る方を確認する。

 武器を構えるマリリとマリスは、そのままのポーズで全く動けないでいた。

 

 俺の背後に寄り添うように立つ魔族の手には、先ほどまで使用していたハルバートは握られてはいない。

 魔法で自由に出現させたり消したりする事が出来るのか・・・

 

 魔族が俺の首元に手を掛け、ゆっくりと横に移動しながら首から肩、腕から手の甲と、その冷たい指先でなぞりながら俺の正面に移動した。

 俺の正面に立ったそいつは右手を伸ばし、ゆっくりと俺の頬に添える。


 漆黒の衣装の袖から伸びたその手は、透き通るように白く細く奇麗な手をしており、とてもあの大柄な武器を意のままに操っていたとは思えないほど華奢だった。

 右手を俺の頬に添えたまま左手を顔の前にかざすと、その黒いベールは音も無く消え去りその魔族の顔が明らかとなった。


 俺は自分の目を疑った。


 だが目の前の漆黒の衣装を身に纏い俺たちを容易く追い詰めたその魔族は、透き通るように白い肌に艶やかな長い黒髪が美しく、目鼻立ちもすっと通った美しい女性だった。


いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。

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