第48話 剣は砕かれ、俺は・・・
ついに見えざる敵との戦いが始まった。
逃げる事が出来ないこの状況に、大地はどう立ち向かうのか!?
さぁ、踏ん張り所だぞ、男、西明寺大地!
俺は自分自身に言い聞かせるように、剣を持つ手に力を込める。
「2人共、絶対に前に出るなよ。正直自信はないけど、出来る限りやってみるよ。最悪はシャオさん達を連れて逃げてくれ。」
「そんな、逃げるだなんて、私達も出来る限り戦います!」
「そ、そうだよ、多分、僕達でも足元にも及ばない程の強い魔族だと思うけど、怖いけど、でも大地と一緒がいい!」
マリスが俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。
「無理すんな、その気持ちだけで十分だ。」
俺は左手をポンとマリスの頭に置いた。
「それにどうやら俺には闇属性の魔法が効かないみたいだし、それを上手く利用できれば活路が見いだせるかも知れない。」
「大地さん・・・ではせめて可能な限りの身体強化魔法をかけます。マリスもお願い。」
「うん!わかった。」
マリリとマリスが同時に詠唱を始め、次々と交互に魔法がかけられる。
その度に俺の体が、様々な色の淡い光に包まれる。
「素早さ強化、力の強化、防御力の強化、視力の強化、耐魔法防御力の強化、剣の耐久性強化、防具の耐久性強化、取り敢えず少しは有効かと思われる魔法を掛けました。」
「うん、ありがとう。出来る限りやってみるよ。」
「でも過信しないで下さい。あくまでも強化の度合いは、人により効果の程が様々です。保有する魔法力にも左右されるので、違う世界から来た大地さんに、どれ程の効果が現れるかは全くの不明です。それに並みのモンスター相手ならまだしも、個体によりますが魔族は全くの別物です。それとこれを・・・。」
マリリは自分の首から、小さな魔法石の付いた首飾りを外し俺に掛けた。
「ごく僅かですがこれを装着した者に対しヒールの効果を得る事が出来ます。お守り程度ですが。」
「ありがとう。マリリとマリスは荷馬車の陰に・・・。」
俺はまだ100メートル以上先で空中に浮遊し続ける魔族を視界に捉えながら、構えを直し呼吸を整える。
その魔族はまるで、俺達の準備が終わるのを態と待っていたかの様にゆっくりと垂直に降下し地面に降り立った。
一瞬だった。
魔族の足先が地面に着いたと思った次の瞬間、そいつは俺達の前方15メートル程の位置に居た。
そして次に気が付いた時には、目の前で手に持つ大きな斧を振り上げていた。
その斧は柄の部分も含めると全長は俺の身長よりも長く、両刃になっており先端は槍の様に加工され、俗にいうハルバートと呼ばれる物だった。
「!!!マジか!!!」
予想外だった。
いや、ある程度の想像はしていたのだが、想像を超え過ぎだ。
空中に浮遊している時は、そんな武器を持っている様には見えなかった。
自分の考えが甘すぎた事を後悔する時間さえ無い。
俺は無我夢中で、ハルバートによる斬撃を受け止める様に剣を振り上げた。
力の差は・・・考えるまでも無い。
普通のアラフォーのおっさんと異世界の魔族、既にこの時点で全てにおいて勝てる見込みなんてない。
そこに武器の大きさだ。
明らかに重量級の大柄ハルバートに、普通の両刃剣がぶつかり合って叶うはずがない。
ましてや向こうは上からの振り下ろし、こっちは下からの振り上げ、状況的にも不利すぎる。
金属と金属が激しくぶつかり合う音が周囲に響く。
ハルバートの斬撃により剣は砕かれ、俺は真っ二つに叩き斬られた・・・
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