第47話 命に代えてもマリリとマリスの盾となる!
見えざる敵の正体が・・・
「おねぇちゃん、これ、やっぱり・・・」
「ええ、恐らく『魔族』ね。それもかなり魔力の高いクラスだと思うわ。」
「だよね、警戒はしてたつもりだったんだけど、全く気が付か無かったよ。いつの間にか僕たち闇に飲まれてるね。」
「ええ、視認できるのは大体10メートル先って所かしら・・・マリスあなたはどう?」
「僕もそれ位だよ。そこから先は真っ暗で何も見えないよ。大地はどう?」
「え?あ、あぁ、うん、特に変わりなく普通だけど?」
「そっか、大地も見え・・・え?今なんて???」
マリスとマリリが驚きの表情で俺を見つめる。
「あ、あの、大地さん、??」
俺達3人の頭上にクエスチョンマークが浮かんだ。
「えっと別に変わりなく普通だけど??とりあえず来る時に通った時にはあそこにあんな大きな木は無かったし、山もあんなに近くには無かったよね。街道もこんなにガタガタに荒れて無かったし、やっぱり道違うよね?それに街灯こそ無いけど、それなりに月明かりあるし、まぁ今のところ敵の姿は見えないけど。」
どうも俺とマリリ・マリスとの話が一致しない。
「ちょ、ちょっと待って下さい。大地さんひょっとしてなんとも無いのですか?」
「そ、そうだよ!僕達、多分だけど魔族のみが使える闇属性魔法で、直ぐ近くしか見えないんだけど??」
俺には特に代わり映えしない異世界の夜の景色が見えているが、どうも2人は違うらしい。
スコッパ達に視線を投げかけてみるが、どうやらマリリ・マリス同様に近辺しか見えておらず同じ状況らしい。
つまり俺だけが普通に見えている?
理解しがたいが、どうやらそのようだ・・・
「暗闇も何も、普通に夜の風景だよ?」
俺の言葉にマリリとマリスが2人して俺を驚いた表情で見つめる。
「ねぇお姉ちゃん、大地ってひょっとして・・・」
「ええ、私も同じ事考えてるわ・・・大地さん前に言ってましたよね。この世界に送り込まれる前に見た『影』が人の形に見えた事。」
俺は頷きで答えた。
確かにはっきりと人の形に見えていた。
しかもこの世界に来たばかりの時は記憶に少しモヤがかかった感じだったのだが、実は日を追うごとにそのモヤが少しづつだが晴れてハッキリと思い出してきた感じだったのだ。
「やはり・・・大地さんは魔法に耐性を持っているみたいですね。それも恐らく闇属性の魔法に対する耐性を。今、回りの景色が普通に見えているのが何よりの証拠です。」
「じゃぁ、大地をこの世界に転移させたのも魔族の仕業だったかもって事なの?」
「恐らくわね。認識阻害の魔法のそもそもの発祥はその昔、闇属性の魔法を元にして改良された事を以前に本で読んだことがあるわ。だから闇属性魔法の耐性が有る大地さんには、認識阻害の魔法が十分に効果が発揮されなかったのかも知れない。」
「そうかなのか・・・凄いな俺。ところでさっき気がついたんだが、あそこで空中に浮かんでる奴、ひょっとしてアイツがスコッパ達をやった魔族なのか?」
「「え!?!?!?」」
俺の見つめる方向をマリリとマリスも慌てて見つめるが、やはり見えていない様だ。
「ダメ・・・やっぱり僕には見えないよ。おねえちゃんは?」
「ダメ、私にも暗闇しか見えない。大地さん状況を教えて頂けますか?」
「あぁ、距離はざっとだけど100メートル以上は離れているな。丁度正面の山を背にこちらを見下ろしている感じだ。俺は余り視力が良い訳じゃないからあれだが、デカイ翼が付いてるみたいだな。なんていうか、コウモリみたいな。」
「確定ね・・・魔族だわ。」
「ヤバイよ、お姉ちゃん。」
マリリとマリスが俺に寄り添う様に近づく。
2人とも武器を構えてはいるが、少し震えている。
俺は2人を自分の後ろに隠すように手で促し、一歩前へ踏み出た。
当たり前だが、はっきり言って俺なんかより2人の方が当然強い。
ブロンズクラスの俺なんかが、どうこう出来る相手ではないのは分かる。
いくら2人がプラチナクラス冒険者とは言え、まだ10代の女の子。
この状況で敵が視認出来ない状態の2人を、前に出し危険に晒す事なんて出来ない。
ここは命に替えても、マリリとマリスの盾となる。
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本日2話目の投稿です。