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第37話 モンスターの群れ目掛けて、俺たちは馬車ごと突っ込んでいった・・・

ついにモンスターの群れに追いついた大地たちのバトルが始まる!

 突発の依頼を受けた俺達は、セリーが用意した早馬の馬車に乗り込んだ。

 幌などは無く、4人乗りのシンプルな馬車だ。

 操舵を務めるのはマリス、その横に俺が座り前方と左側面の警戒、後部座席にはマリリが座り後方と右側面の警戒を担う。


 出発前にセリーからは念の為ということでリモートメッセージカードを3枚受け取り、万が一を考慮し各自が1枚づつ持つ事にした。

 セリーの説明によると、魔法が使えなくともこのカードの使用は可能との事だ。

 つまり俺でも使う事が出来るのだ。

 

 俺達は風の谷に向かう街道を真っ直ぐ進み続ける。

 昼間はまだそこそこに気温は高かったが、夜風は少しひんやりとして吹き抜ける風が心地よい。


 夜になると、自分が異世界に居るという事をより一層強く感じる。


 街と繋がるメイン街道と言えど街灯なんて有る筈もなく、俺達は月明かりと馬車の両端に吊るされたアンティークライトの様な吊るし明かりの僅かな光を頼りに駆け抜ける。

 有る程度の間隔で設置された街の方向を示す案内表示というには少しお粗末な看板が無ければ、この暗闇の中では俺ならば確実に道に迷っている事だろう。

 とは言え、看板が有るだけでも少しの安心感を覚える。

 

 ちなみにこの吊るし明かりにはクムリ村特産の『夜光石』が使用されているので、ろうそくの様に風で消える心配等が要らないのは良い点だ。

 だが、車のヘッドライトの様にリフレクターなどがある訳では無いので、前照灯として使うには少し難がある。

 もし鏡の様な材料が容易に手に入るのであれば、リフレクター式の馬車用ヘッドライトを自作してみるのも面白いかも知れない。


 風の谷までおおよそ1キロメートルを切ったあたりでマリリがフィール・リアクションを展開する。

 瞬く間に俺たちの乗った馬車を中心に、薄く青み掛ったドーム状の光が暗闇を貫いて行く。


 「いた!この方角より少し北!約500メートルの距離!1、2、3、・・・7匹!?まだこちらには気がついていない!大地さん、マリス気をつけて!行商の人たちに向かってる!。」


 「お姉ちゃん!大地!このまま一気に突っ込むよ!」


 行商を狙い突き進むモンスターの群れ目掛けて、俺たちは馬車ごと突っ込んでいった。

 それにモンスターの1匹が気付くと次々と他のモンスター達も俺たちに気が付き、7匹中の5匹が方向転換しこちらに向かってきた。

 だが残りの2匹はそのまま、行商と負傷した冒険者一向に向かって突進していく。


 モンスターの正体は『ケルバリウス・ウルフ』

 ケルバウルフなんて呼ばれ方もするこいつらは、ダガーウルフと同じオオカミ系のモンスターだ。

 体格もダガーウルフと同程度、素早さではダガーウルフの方が遥かに勝るので、そこまでなら俺でも楽勝とまでは行かなくても十分に勝てそうな気はする。


 だがコイツらのダガーウルフとは決定的に違う所は、1つの体に対し頭が2つある所だ。

 その分視界も広ければ、牙による攻撃も単純に2倍という事になる。

 頭部に角こそ無いもののとても凶暴な性格をしており、数匹~20匹程の群れで行動をしているらしい。


 「大地、手綱まかせたよ!」


 「了解!」


 俺はマリスから手綱を受け取り馬車の操舵を変わった。

 こういう事も有ろうかと、時間の開いている時にマリスから馬車馬の扱いも少しづつ習っておいて正解だった。


 「向こうの2匹は僕が倒すから、こっちに来る5匹宜しく!」


 マリスは弓と矢を手に取り座席の上に移動し身を低くすると、呪文の詠唱を始めマリスの体が薄い緑色の光に包まれた。

 詠唱を終えたマリスが前方、行商達に向かっているモンスター2匹の上空を睨む。

 

 「いくよ、フライ・ブースト」


 静かに魔法名を呟くと同時に、マリスがまるでロケットの様にとてつもない速さで一直線に飛び立った。

 次の瞬間には対象の2匹を追い抜き、着地をする前に空中で風の魔法を纏った矢をモンスター目掛けて放つ。

 魔法で威力とスピードを加速された矢は一瞬で1匹の内の右側の頭部、額の中心を貫いた。

 矢で貫かれた方のケルバウルフはバランスを崩し、前足を躓くように倒れ地面を転がりもがいている。


 マリスは行商達を背にもう1匹のケルバウルフに向かい着地すると同時に、空中で持ち替えていた短刀で空中を裂く様に2撃を振るう。

 目には見えない風の刃が一瞬にしてケルバウルフの2本の首を刈り取り、首を失った胴体はマリスの前で地面に突っ伏した。


 最初に矢で貫かれた方の個体が苦しそうなうめき声を上げながら立ち上る。

 貫かれた方の頭部は首からだらんと垂れ下がり、そちら側は死んでいる様だ。

 もう一方の頭部は怒り狂ったように鳴き叫び、牙を剥いてマリスに向かい突進を始める。

 だが完全な状態ですらマリスの敵では無いケルバウルフは、またもやマリスの繰り出した風の刃により頭部のみが空中を舞った。


いつもお読み頂きありがとうございます。

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