第36話 突発依頼
「みなさんお疲れの所、申し訳ありませんが、突発の仕事をお願い出来ないでしょうか。」
そう言いながら、申し訳なさそうにセリーが深々と頭を下げる。
「えっと、突発と言う事は今からでしょうか?」
正直な所、体力の限界が来ている。
それは俺だけでは無く、マリリもマリスも同様だ。
だがベテラン職員のセリーが頭を下げてまで頼むのだ、無下に断ること何て出来るはずが無く、取り敢えず内容を聞いてみる事にした。
「実は隣町のカーズからクムリ村へ行商が物資の夜間配送をしていたのですが、その道中でモンスターに襲われ荷車を引っ張っていた馬が負傷を負い動けず、馬車の方も車輪の一部が破損したようです。モンスターは護衛のパーティーがなんとか打倒したそうですが、深手を負ったらしく身動き出来ないとの事です。」
「それって、かなりヤバイんじゃ!?」
「はい、状況は緊迫しております。位置的には風の谷付近だそうで、カーズよりはこちらのクムリ村のほうにまだ近い位置にいるそうです。今回の依頼はゴールドランク保持者が2名以上いる事が条件の依頼でしたが、あいにく現在カーズ村の方には条件を満たしたパーティーは他の依頼で出動しているらしく、救助に迎えに行けるパーティーがいない状況なのです。」
「ほれ、これのんで落ち着きな。」
いつの間にかこちらに来ていたペティがセリーに水の入ったコップを差し出す。
それを受け取ると一口飲み、セリーが続ける。
「今回の物資配送にはギルドの依頼した荷物も相積みしていましたので、行商には緊急連絡用としてリモートメッセージの魔法を施したカードを1枚だけ渡しており、それを使いカーズのギルドへ連絡が入ったのです。」
恐らく話の流れからすると、一種のメールみたいな物か・・・
ギルド間でそういう連絡手段が有るのは前にセリーに教えて貰ったが、それを持ち運び出来る手段が有るとはちょっと驚きだ。
ならそれで双方向に連絡は取れない物なのか、俺は質問を投げかけた。
「あの、それってこちらから連絡を取る事は出来ないのですか?」
「はい、ギルドに設置されていますリモートメッセージ用のマジックアイテムなら双方向に連絡が可能なのですが、リモートメッセージカードは一方から送るのみで、メッセージを送り終えると消滅してしまいます。仮にカードを持っていても逆に連絡を受け取ると言った事は出来ないのです。」
1回切り、使い捨ての送信専用アイテムって所か。
異世界の魔法だからって何でもアリという訳では無いのか。
「なるほど・・・護衛の冒険者は負傷、馬車馬も動けず連絡手段も無い。これは一刻の猶予も無いな。」
俺とマリリ・マリスの3人は、互いに顔を合わせ頷き合い立ち上った。
「その依頼、承ります!」
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