第32話 俺はまだ今日という1日が無難に過ぎていくものだと思っていた。
サブタイトルの話数が間違えていたので修正致しました。
昨日俺達3人は、その前日に受諾の手続きを済ませておいたギルドの仕事の為、朝日も昇りきらぬまだ暗い早朝から村を出発していた。
仕事の内容は2件、『ザラ山脈の森を流れる川に生息する清流魚の捕獲、ノルマは20匹。それ以上は追加報酬』と、『逃げ出した飼い犬を捕まえる』だった。
1件目の川魚の捕獲の依頼もとは村の食材屋だったのだが、可能ならば昼までに手元に欲しいとの依頼内容だった為、俺達3人は深夜の内に身支度を済ませ出発したのだった。
単に川魚の確保ならそれこそプラチナクラスの2人が出るまでも無いのだが、森の割と奥深くの登山道から外れた場所になる為、森の入口や山道近辺では出ないような凶暴なモンスターが出る危険があった。
加えて、今回は村に持ち帰る量が多いので行き帰り用の小さな荷馬車を依頼元が用意してくれていたのだが、魚という傷みやすい食材で有るが故に、20匹以上となる数の魚を捕獲してから村まで氷漬けにしておく必要がある。
だが当然の事だが、この異世界に冷凍庫や冷蔵庫なんて無ければ、長時間持つような保冷剤や釣りなんかで使うようなクーラーボックスも存在はしない。
そうなると魔法で凍らせるか、もしくは魔法で作り出した氷に浸けるしか無く、必然的に魔法が必要となる。
となると、この村で誰よりも水系の魔法を得意とするマリリの出番となるのは必然的だ。
また実際の捕獲作業に置いても、マリリの水系魔法が有るからこその短時間に行う事が出来ている。
普通の冒険者ならば、恐らくはタモですくうか掴み取りか・・・何れにしても効率は非常に悪いと言えるだろう。
だが俺達はマリリの魔法で、まるでモーゼの奇跡の如く川の一部区間を切り離すように遮断し、その区間に閉じ込められた川魚をマリスが手慣れた動作で素早く手掴みにより確保するといった感じだ。
1度に5~7匹は確保が出来るのであっという間に40匹を確保する事に成功した。
マリスが捕まえた魚を水を張った桶に入れて、俺が山道の傍らに停車してある荷車の所まで持って行く。
荷車には、マリリが魔法で川の水をクラッシュアイスの様に変えて詰めてある箱があるので、そこに綺麗に並べ魚が跳ねて逃げない様に蓋を紐で固定する。
これを何往復か繰り返し行った。
やはり山道から外れたそこそこの奥地へ来ているため、川魚を捕まえている最中にゴブリンやフィアースラビット等のモンスターが現れたが、特に問題もなくこれを撃退。
ダガーウルフやそれ以上のモンスターが出てこなかったのは幸いだったと思う。
1件目の依頼は分担作業により非常に効率よく熟す事ができた。
村に戻ってからギルドに依頼達成の報告をしてからギルド職員同伴の元、食材屋に魚を渡し終えたのが午前11時頃だった。
一旦報酬金を受け取ってからギルドの酒場で早めの昼食を済ませ、それから小一時間程だけ休憩を取り2件目のギルド仕事の為に再び村を出発した。
午前中の仕事は特にトラブルも無く良い滑り出しだった。
それゆえにその時、俺はまだ今日という1日が無難に過ぎていくものだと思っていた。
2件目の仕事内容の『逃げた飼い犬を捕まえる』には中々苦戦を強いられたが、非常に喜ばしい事にラッキースケベの神が降臨され、俺に素晴らしい祝福をもたらした。
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