第29話 なにやら少し驚いた様に俺を見つめていた。
今日(日曜)はちょっと予定詰まっててバタバタなので、続けての投稿です。
宜しくお願い致します。
「いつもありがとう、マリリ、マリス。」
「おお、助かる。では俺も言葉に甘えて頂くとしよう。」
テーブルいっぱいに並べられたお弁当は、実際の味は勿論の事、盛り付けまで美味しそうに出来ている。
マリリがカバンの中から、暖かそうな動物の毛皮に包まれた大き目の水筒の様な入れ物を取り出し、人数分の器に注いだのは湯気の立った温かなスープだった。
「へぇ、ひょっとしてそれは保温性のある水筒かな?」
「はい、さすが大地さん良くわかりましたね。これミトンさんに頼んで特別に作って貰った試作品なんですけど、少しの間なら暖かい物や冷たい物を維持出来るので便利ですよ。以前、王都に行った時に王族の方が使っているのを見たのですが、一般には売られていない特別品ですよ!」
少し得意げに説明するマリリがなんとも可愛らしい。
「でも横向けたり、逆さ向けたら中身が漏れるんだよね。前にそれで僕のカバンの中にお茶が広がっちゃって。」
「そうなんですよ!それでミトンさんも何とか出来ないものかと悩んでいました。」
「ふーむ・・・それちょっと見せて貰っていい?」
俺はマリリからその水筒を受け取り、動物の毛皮で出来た袋から水筒本体を取り出しマジマジと確認をした。
「開閉の仕組みはいたって普通の水筒と同じく蓋部分がネジ式になっているな。閉まり具合に僅かだけどガタが有るな、これはネジ山の大きさとネジピッチを見直して、本体側と蓋側の精度を詰めれば改善は出来そうだな。中身が漏れる原因の一つだな。」
俺が一人水筒を確認しつつ呟いているのをマリリとザウルが静かに聞いている横で、マリスはマイペースながら既にパンを頬張りながら聞いていた。
「本体は流石に二重構造とかにはなってないけど、水筒の割にはちょっと肉厚があるな。材質は・・・これ、ひょっとしてステンレスか!?純度は分からないが、これはちょっと驚きだな。蓋の内側は・・・あ、成るほど、これは確かに中身が漏れるわ。」
俺は水筒をゆっくりとテーブルの上に置いた。
すると、3人がなにやら少し驚いた様に俺を見つめていた。
「ど、どうしたの?3人とも??」
「いえ、大地さん凄いですね。なんだか初めて聞く言葉が・・・何かの専門用語ですか?」
「うむ、右に同じく。大地よ、日本に居た頃はいったい何をしていたのだ?何かを作る職人か?」
「僕は何が何だかだよー、結局なんで中身が漏れるの?」
3人から次々と質問が飛んでくる。
「あ、あぁ、そうだね、じゃぁ取りあえず順番に答えて行こうか。まずはポットの方から・・・あ、それとあくまでも構造的に見た見解を述べるだけで、別にこの水筒を悪く言う訳じゃ無いから、そこはあしからず。」
俺は水を一口飲み、説明を行うべく水筒を再び手に取った。
「まずこの蓋と本体のこの部分。回して開閉出来る様に山型になってる、こういうのを全般的にネジって言うんだけど、一見分かりにくいかも知れないけど、この山の高さが不均一・・・要はバラつきが有るのと所々が歪んでる。それに山の角度が蓋側と本体側とで合ってない部分が有る。ほら、特にこの当たりね。」
俺は指でその部分を指し、3人に見せた。
「うーん、言われてみればそうですね。これ位でもダメなのですか?」
「締め切った時、少し力を入れると僅かだけどこうやって横とかに動いちゃうでしょ、こういうのをガタって言うんだけど、これが隙間が発生してしまう原因になってる。ネジピッチってのはこのネジ山通しの間隔の事ね。あと、もう一つ決定的な原因がある。」
俺は蓋を裏返し、蓋の内側が3人に見える様に説明をした。
「蓋の内側にパッキンが入っていない。これでは密閉性が低く、入れる物が固形物ならまだしも、スープやお茶などと言った液体なら確実に漏れてしまうよ。あと、本体側の淵も切りっぱなしの様に鋭い。これでは仮にパッキンを入れても締めこみ具合で直ぐにパッキンが切れてしまうから、やすりで整えるか、丸みを帯びさせる加工かが必要になるね。と、まぁ水筒についてはざっとこんな所かな?」
俺が一旦説明を終えると、3人がまるで何か不思議な物を見る様にほけーっと俺を見つめていた。
「えっと、おーい、皆さん?」
「大地、おまえなんか凄いな。なんか俺にはさっぱりだ。」
ザウルが腕を組みながら蓋を見つつ唸っている。
「はえー、大地がなんかカッコよく見える。」
「大地さん、カッコイイです!ちょっと見ただけでそこまで分かるなんて。ところでステンレス??とかパッキン??ってなんですか?」
やはりな・・・俺は確信した。
一部誤字がありましたので、修正致しました。(修正:2018年5月21日10:10)