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第5章 41話 王都襲撃の黒幕2

明けましておめでとうございます。

本作を本年もどうぞ宜しくお願い致します。

 「たかだか人族の分際で、2度も魔族様の魔法を防ぎ・・・は、ぎゅぼっ!?!?」


 「「!?!?!?」」


 空中に現れた魔族が再び腕を振り上げ魔法を放とうとした瞬間、突然現れた黒い炎の球が魔族の頭部を直撃し吹き飛ばす。

 余りの一瞬の事に全員の目が点になる。

 

 「まさか!?」


 俺とマリリは俺達の傍らに目を向けると、ドヤ顔・・もとい誇らしげな表情でマミカが玩具のステッキを上空に向けて構えていた。


 「・・・あ、あー、ひょっとして、さっきの一撃はもしやマミカさんかな?」


 マミカは誇らしげな表情のままこくんと頷き、腕を突き出し親指を立てる。


 「そ、そうか、流石マミカ、瞬殺だな。」


 マミカの頭をぽんぽんと撫でる。

 取りあえずのヤツの台詞から、確実に魔族が今回のアンデッド事件に関与しているというのは確定だろうが、せめてもう少し交戦しながらでも情報を得たかったのだが。

 いや待てよ、マミカが瞬殺を狙ったという事は、その必要が有ったからじゃ無いか?

 俺達の背後には王都、もちろん人々の避難は住んでいるとは言え一撃でも魔族の攻撃を打ち込まれたら終わりだ。

 それに今この場にも兵士達や冒険者が居る。

 一般人よりは戦闘力が有れど、それは所詮普通の人間の中ではというだけで魔族に足しては余りにも無力過ぎる。

 それに彼らにも当然愛すべき家族や恋人や大切な人が居るだろう。

 もし俺の甘い考えが元で、彼らに被害を出してしまう事になってしまえば・・・。

 ・・・。

 マミカに教えられるとは、俺もまだまだだな。

 ルナの修行を受けちょっと戦う力を得たからと言って、調子に乗っていたな。


 改めてマミカの頭を撫でると、マミカは嬉しそうにこちらを見上げる。

 少し気合を入れ直さないとだな。


 「さて、妙だな。なぁマリリ。」


 「ええ、大地さんも気がついていましたか。」


 「魔族に俺達の概念を当てはめるのは適切じゃないとは分かっているが、回避行動を取る間もなくあれだけの威力の火炎魔法で頭部を綺麗サッパリ吹き飛ばされたら普通はその時点で終わりだよな。」


 「はい。昆虫系の魔物なら頭部が急所では無いものも中には居ますが、魔族といえど人型であれはちょっと予想外ですね。それに魔法力の反応が消えていません。」


 俺達の見上げる視線の先、マミカが頭部を吹き飛ばした魔族だが、落下する事も無くそのまま空中に浮いたままだ。

 普通死んだなら落ちてくるなり消滅するなりだろうが、そのままって事はそういう事だ。

 俺は漆黒のグレイブを構え直す。

 一瞬、魔族の身体がピクリと動いた気がした。

 その瞬間、再び魔族の両腕周辺に黒い稲妻の様な物が見えたと同時に、頭部を吹き飛ばされたままの魔族が両腕を振り上げ振り下ろす。

 黒い稲妻が、再度地上の俺達を襲いかかる。


 「広範囲障壁展開!」


 マリリがパチンと指を鳴らし、稲妻よりも一瞬早く兵士や冒険者達も守るように魔法障壁が展開され攻撃を防ぐ。


 「気に食わぬが、並の魔法師では無いというのは認めてやろう。」


 頭部を無くしたはずの魔族から声が発せられた声に、兵士や冒険者達からはどよめきが起きる。

 確かに首を含めた頭部を吹き飛ばされているという事は、口も声帯も無くなってるんだから、驚くのも当然だろう。

 あれは魔法力に言葉を乗せて声として発せられたものだ。

 いや、この場合、頭部を飛ばされても尚生きている事に驚いているといった方が正しいか。

 ってそんな事どうだって良い。

 とにかく、今は目の前の敵に集中だ。


 「マミカ!」


 マミカはこくんと頷くと、玩具のステッキを振りかざす。

 緊迫した空気をかき消すかの様に軽快な電子音を鳴り響かせると、発せられた炎の球が超高速で空中の魔族に襲いかかる。

 次々と高速で打ち出される炎の球に、魔族は反応が追いつかず直撃を受ける。

 腕や足、胴体の一部と共に背中に生えるコウモリの様な翼を殆ど失った魔族は、そのまま力なく地表に落下した。

 獄炎魔法ヘルフレイムバレット、前にマリリがそう言っていた。

 周囲への被害を想定して、だいぶ威力制御をしている様では有るが。


 魔族は空を飛ぶ時はその膨大な魔法力による飛翔魔法で飛ぶ訳だが、その度にわざわざ飛翔魔法を唱える訳では無く、例外無く全ての魔族が保有するその『翼』に飛翔魔法の効果が有り、翼を広げるだけで空を自在に飛ぶ事が出来る。

 生まれながらにして、翼に飛翔魔法が付与されているといった方が解りやすいか。

 速度や高度といった飛翔能力は、その魔族が保有する魔法力やセンスに依存される。

 ただルナの達の様な『六大魔将』程の魔族となると、翼を体内に格納したまま自由に空を飛ぶことが出来る。

 というのは、ルナからの教えだ。


 「回復のスキは与えない!!」


 俺は漆黒のグレイブを構え、落下した魔族の元へ一気に駆け込む。

 そんな俺を見た兵士達や冒険者達からどよめきの声が上がる。

 確かにあれが普通のモンスターなら討伐完了ってところだろうけど、相手は魔族だ。

 首ごと頭部を吹き飛ばされてそれで死ぬとは確定出来ない。

 なら念には念をだ、恐らくアイツにはまだ何かが有る。


 俺の読みはビンゴだった。

 一目見てどう考えても生きていないであろう状態にも関わらず、起き上がる魔族。

 だがそれは自分の足で大地に立っている訳では無く、まるで何かに操られている様に身体を起こした。

 そもそも先程のマミカのヘルフレイムバレットで右足を根本から、左足は膝下から失っている状態なので、自分の力では立つことは不可能。

 というよりも自分の意思とは違う力で、無理やり身体を起こされた様にしか見えない。


 俺の接近に合わせて、その魔族が操られた様に残った右腕を動かす。

 恐らく防御障壁か攻撃魔法を繰り出そうとしたのだろうが、それよりも速く俺の斬撃の方が魔族の身体を捉える。

 水平なぎ払い、右腕ごと魔族の身体を横一線に叩き切る。

 間髪入れず下方から上方への切り上げ、返し上段からの両断。

 切り分けられた肉塊となった魔族だったものは、そのまま地面へと落ちる。

 2メートル程後ろへ下がり構え直す。

 まだ警戒は解かない。

 やがて肉塊となった魔族から薄っすらと煙の様な物が立ち上がり、それは消滅した。


 ・・・呆気ない。

 幾ら漆黒のグレイブで切られた部分は回復出来ないとは言え、もう少し何か奥の手を隠しているかとも考えていたが、どうもそうでは無かった様だ。

 念の為の確認として、魔族が消え去った地面跡に小瓶に入った聖水を撒いてみる。

 この聖水は、天然の湧き水を元にマリリが神聖魔法で浄化し生成した物で、日本に居た時にその生成方法をルナに教わり作り上げた物の一つだ。


 特にコレといった反応は見られない。

 となると先程の魔族は言葉通り消滅したと言う事だ。


 マリリとマミカの元へ戻る。

 兵士達や冒険者達からの視界の範囲でもあることから、戦いの始終を見ていた者達から歓声が上がる。

 ・・・だが。


 「マミカ、拡声魔法を頼む。」


 こくんと頷きマミカが玩具のステッキをひと振り。


 「すまないが皆さん聞いて下さい!勝利を喜ぶにはまだ早い。まだ魔族はもう一体居ます!!」


 俺の声を聞いた途端、兵士や冒険者達がどよめき出すが、それを無視して続ける。


 「ここは俺達が対処します!皆さんは王都内に避難と、兵士の方たちは城と各所への報告を急いで下さい!。」


 そう叫ぶものの、兵士達も冒険者達も迷った様子でまだはっきりと動こうとはしない。

 仕方が無い。

 俺は空へ向かって、挑発混じりに叫んだ。


 「いつまでも隠れて無いで、とっとと姿を表したらどうだ!!それとも倒されるのが怖いか?」


 その場の全員が顔を上げ、俺が叫ぶ方へ視線を集中させる。


 「仕方ない、マリリ軽いの一発頼む。」


 小声でマリリに耳打ちをするとマリリはだまって頷き、空のある一点に向けてアイススピアを放つ。

 軽いのとは言っても、大熊タイプのモンスターを一撃で葬りさる位の威力は有る。

 マリリの放ったアイススピアは上空約20メートル程の位置で、魔法障壁にぶつかり砕け散る。


 「まさか私の存在に気づいていようとわな、あれをいとも簡単に葬っただけの事はある様だな、人間。」


 アイススピアが弾かれたあたりの空間がまるでガラスが砕け散る様に剥がれ落ち、現れた黒い空間より1体の魔族が姿を表す。

 髪はオールバックで纏められシワ一つ無いスーツの様な服装に身を包んだ魔族が、静かに地面に降り立つ。

 見た目だけなら普通の人間と変わりなく、ましてや紳士の様なその姿は到底魔族には見えない。

 だがその姿とは裏腹に、自身の身の丈よりも大きな鎌を左肩に担いだその姿は、明らかに異質に見える。

 まぁ何より、この異世界でスーツ姿って時点で異質に見えるのだが、それは置いておこう。


 「こ、この魔族め!!!やっちまえ!!」


 何を思ったか、数名の若い冒険者が剣を抜き魔族に向かって駆け出す。

 さっきの俺の攻撃を見て自分達でもやれるとでも勘違いしたか、幾らなんでも考えが無謀過ぎる。

 相手との力の差も全く分かっていない。


 「あ、ちょ、あんたらダメだ!戻れ!」


 まさかの行動に慌てて静止させようと叫ぶ。

 だが冒険者達は先に走り出していた為、すでに1名は攻撃を繰り出している。

 ダメだ、間に合わない。


 「愚かな人間よ。力の差も分からぬか。」


 スーツに身を固めたその魔族が迫りくる冒険者に右手を払い除けた瞬間、駆け出し向かった冒険者達全員の首が同時に宙を舞った。



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