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第5章 19話 仕組まれた必然

 ルナに言われた事になんと返答したら良いものだろうか。

 俺達の心中を察してか、刀心が話をきりだす。

 

 「面を上げなされ大地さん。別に誰もあなた達を攻めてる訳では無いのですよ。 大地さん達は今まで通り、自分たちの信じる道を思う様に突き進めば良い。

  むしろ大地さんたちはこれまで多くの人々を守ってきた。そしてそれは大地さんだからこそ、それが出来てきたのだろう。決して恥じる事では無い。

  だからこれからも自信をもって行けば良いですよ。」

  

 「ありがとうございます。」

 

 刀心の言葉を聞いて思わず目頭が熱くなる。

 

 「そうね、私もちょっと酷な言い方になってしまったわね。ごめんなさいね。

  でも大地さんあなた達はこれからも戦い続けなくてはならない。その為にも事実を知る必要が有ると思うわ。」

  

 「ええ、ルナさんの言う通りだと思います。それに今教えて頂いた事もそうですが、今まで知りたくても知る事が出来なかった貴重な情報です。

  まだお時間を頂けるなら、色々と教えて頂けますでしょうか?」

  

 「私からもお願い致します。」

 

 俺とマリリが合わせて頭を下げる。

 それを見たマミカも真似してペコリと頭を下げる。

 

 

 それからも俺達が疑問に思っていた事などを二人から色々と教えて貰った。

 そんな中でもルナが六大魔将軍だという事よりも、遥かに俺とマリリに衝撃の走る事が有った。

 

 「そうか・・雪乃は息災でやっているんだな。安心した。」

 

 「ええ、無事、大地さん達と出会えたのは雪乃にとっても大きな助けですね。大地さん雪乃を助けてくれてありがとう。」

 

 「え?えっと、お二人はユキノさんの知り合いだったので・・・ん?あれ、いや、ユキノさんのフルネームってたしか・・・ユキノ・シンゲツ・・・・え!?」

 

 俺とマリリは思わず顔を見合わせる。

 

 「うむ、そうじゃ。雪乃はわしらの娘じゃ。」

 

 「「え、えええええええええ!?」」

 

 それは話の中で俺がユキノの事を話した時の事だった。

 最初に異世界での事を話していた時、まだその時はユキノの名は話には出してはおらず『もしかするとこの日本から来たかもしれない転移者』として話をしていた。

 

 思えばその話をした時、二人の表情に変化が有った。

 もしかすると話を切り出すタイミングを伺っていたのかもしれない。

 

 「それにしても記憶喪失か、わしらの事も覚えておらん様だったのじゃな。」

 

 「はい。何も覚えてはいない・・・と。ただ先程もお話しました通り『剣技』だけは覚えていたそうです。なにせ自力でゴールドランクの冒険者に登り詰めた程ですから。

  ・・・ひょっとしてユキノさんの剣技は日本に居た時に?」

  

 「うむ、わしの元での。雪乃はなかなか飲み込みが早い子じゃ。」

 

 「!?刀心さんが師範だったんですか・・・正直驚きました。」

 

 「ええそうよ。雪乃には5歳の頃からこの人が剣を叩き込んで来たのよ。何度もこの世界の剣道の試合で優勝してるのよ。凄いでしょ。

  それにしても雪乃が無事で本当に安心したわ。ね、あなた。」

 

 「ああ、そうだな。雪乃がわしらの元を立ち、かれこれ20年近くになるかの。」

 

 「そうね、時の流れは早いわね。」

 

 「そうでしたか・・20年も前に・・・ん?すみません、さっき20年前って言いましたよね?あれ、ちょっとまって下さい、ユキノさんが異世界へ渡った時って・・」

 

 「19歳の時じゃな。」

 

 ???ちょっとまてよ、俺達が出会い共に居たユキノは19歳だったはずだ。

 20年前だと?

 それなら大方40歳じゃ無いか? 流石に19歳とアラフォーを見間違うって事は考えられ無い。

 というかそもそも本人が19歳と言っていた。

 だとしたら偶然的に同姓同名の他人とか・・いや、それこそありえないだろう。

 

 「あ、大地さん!写真!みんなで写りましたよね!」

 

 「!!それだ!!」

 

 マリリに言われるまで忘れていた。

 以前に記念にと何度か撮影した事があった事を。

 スマホを取り出し写真を表示し二人に見せる、ユキノは真月雪乃で間違い無い。

 だとしたら・・・

 

 「異なる次元に存在している異なる世界どうし、なのに時間軸が同じだと考える方が不自然よ。」

 

 「!!」

 

 ルナの言葉が脳天を突き抜ける。

 確かに今まで考えた事が無い訳では無い。

 実際に俺がこちらの世界から消えた期間と、異世界で過ごした期間は余りにも一致しなさ過ぎることもその一つだ。

 そう考えるなら、ユキノの20年という時間のズレも理解できる。

 なるほどな。

 

 しかし全く時間軸が違うにも関わらず、俺達とユキノが出会ったのは偶然だろうか・・・

 

 「違うわよ。」

 

 「へぁ!?」

 

 ルナのあっさりとした言葉に思わずへんな声が出た。

 ひょっとしてルナは人の頭の中を読み取る事が出来るのだろうか。

 と言うのは思い過ごしで、考え込む余り無意識の内に声に出していたらしい。

 

 「という事は俺達とユキノさんが出会うのは最初から仕組まれた事・・だったと言う事ですか?」

 

 「仕組まれたなんて言い方しちゃ、まるで人聞きが悪いじゃない?言うなれば、必然よ。」

 

 「それってつまり・・」

 

 「想像の通りよ。あなた達の居る所へ、雪乃を送り込んだのよ。」

 

 その言葉に、俺とマリリは耳を疑った。



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