第19話 涙目で俺を見上げるマリスが居た。
夜か深夜に投稿といいつつ、朝方になってしまいました。
やはりアラフォー、寄る歳波により眠気には勝てませんでした。
「そういえば大地さんは、おばあさまの様にナギナタを使えるのですか?」
「うーん、真似事で何度か振った事位はあるけど、流石にばーちゃんみたい扱える訳じゃ無いよ。」
「じゃー大地は、ばーちゃんに習わなかったん?」
「そうだね、とは言え一応ほんの触り位は教わったけど、訓練や修行を積んだりまではしてないから『扱える』訳じゃ無いよ。全く興味が無かった訳じゃ無いけど無理強いされる事も無かったし、どちらかと言えば銃とかライフルとか、後はSFチックな武器の方が子供の頃から好きだったしね。」
「「じゅう???ライフル??え、えすえふ???」」
マリリとマリスが首を傾げながら、何の事だろうと俺を見つめる。
これだけ文明が発展しているなら銃なんてものも有って当然だと深く考えずに話したのだが、2人の頭の上にはどうやらクエスチョンマークが浮かんでいる様だ。
どっちにしても『SF』なんて言葉は、そもそも分かるはず無いかと少し反省。
「銃っていうのは、種類により大きさは様々なんだけど、薬莢とか弾丸なんて呼ばれる鉄の長細い小さな筒に火薬が詰まっている物が銃に装填されていて、トリガー・・・つまりは狙いを定めて発射レバーを引くだけで、離れた目標に鉄の塊を打ち出す武器なんだけど、こっちの世界には無いのかな?」
「な、なんか凄そう・・そ、それは魔法なの??大砲とは違うの??」
「魔法じゃ無くて言わば機械なんで、知識が無くてもある程度誰でも使えるってのがポイントだね。それよりも魔法が栄えてるこの世界にも大砲は有るんだね。」
「なんか便利そうですけど、少し恐ろしい感じがする武器ですね。私達の知る限りでは、その様な武器は見た事はありませんが、これから向かう武具屋のミトンさんなら知っているかも知れませんね。」
「うん、マリリの言う通り恐ろしい武器ではあるよ。知識が有れば有る程度誰でも使えるってのが問題で、扱いを誤れば指先一本で一撃で人を殺めてしまうし、自分や大切な人の命を奪ってしまう可能性だってある。」
「ね・・・え・・・大地はそんな武器を扱った事が有るの?」
気がつけば少し怯えるチワワの様な涙目で、俺の袖を掴みながら俺を見上げるマリスが居た。
なんだこれ、いつものマリスとは違いギャップ萌か?と条件反射的に思ってしまったが、いやいや今はそう言う時じゃ無いだろと、自分自身に言い聞かせる。
「無いよ。確かにモデルガン・・・まぁ、樹脂の、軽いおもちゃの玉を飛ばす程度の物なら幾つか持ってはいたけど、本物は流石に扱った事が無いよ。それに俺が居た日本では一般人が銃を手にする事は、中々出来ない様になってるしね。」
そう答えながら俺はマリスの頭にポンッと手を置き優しく撫でた。
少し安心したのか、マリスは一呼吸置いた後にいつもの元気を取り戻した様だった。
そうこうしている内に俺達は『武具屋ミトン』の店の前に付いた。
そう大きくはない個人商店だが、その腕の良さからギルドランクの高い猛者達にも定評であるものの、店主はそれを鼻にかけたりするわけでもなく、駆け出し冒険者にも誠心誠意対応してくれる事で人気の店との事だ。
店名の『ミトン』は店主の名前から付けた物らしいのだが、名前からしてさぞ可愛い店主なんだろうと少し期待をしていた事はマリリとマリスには秘密である。
店の前の道に面した所に立てられた、恐らくは店名を記した看板も字は分からないが、なにやら端に花の絵やら小鳥の絵なんかが描いてあってなんだか可愛らしい。
看板の傍らにはパンジーやビオラの様な色とりどりの花まで植えてある。
武具屋というちょっとおっかなそうなイメージとは違い、なんだか雑貨屋さんの様な可愛らしい印象さえ受ける。
「さあ到着しましたよ、こちらです。」
ギイ・・・という音を鳴らしながらマリリが店のドアを開け、俺は少し心躍らせ店に足を踏み入れた。