第4章 2話 いざ、クムリ村へ
国王ピターニャの命を受け、早速キヨミを隊長としたクムリ村への向かうチームが構成された。
戦うであろう相手が相手なだけに、出来る事ならそれなりの準備を整えたい所だが、そればかりは仕方が無い。
今回選出されたメンバーは、キヨミを筆頭に、俺、マリリ、マリス、ミール、フィーユの6名に加え、魔法士団の隊員8名に決定した。
魔族率いるモンスターの群れを相手にするには些か人数が少なすぎる様にも思われるが、先にクムリ村に居る先遣隊と、クムリ村の自警団、冒険者達も加えればそれなりの大人数となる。
それに今回のクムリ村の襲撃、府に落ちない点が幾つも有る。
そもそも魔族の力を持ってすれば、幾らクムリ村の自警団が優れた者が揃っているとはいえ、十分に占拠もしくは壊滅させられたハズだ。
だが、そうはしなかった。
我々の出方を伺う様に強弱をつけるとでも言おうか、2回にも分けて村を襲い適当な所で手を引いている。
しかもそれなりに我々人間側の力で退けた様に見せかけてだ。
決して、クムリ村を守る為に命を懸けて戦った者達を悪く言う訳では無い。
だが一歩引いて冷静に見てみれば、どうも腑に落ちないのだ。
特に魔族と数回戦った俺やマリリ、マリスは勿論の事、ランゴートと戦ったキヨミやミール、フィーユも同意見だった。
それに先の王都内での冒険者がアンデッドと化した件。
ソイ村を占拠しドータルの名を語っていた、魔族崇拝の邪教ネロの邪教員であるペッパードも生き残りの邪教員を尋問した結果、所詮は使い捨ての駒に過ぎない事が判明した。
つまり、まだあの一件については解決した訳では無いのだ。
それを考慮するとまだ推測の段階だが、クムリ村の襲撃はパウンダー王国の戦力を分断する為の『囮』である可能性が高い。
今ならまだクムリ村を守るに間に合うと思わせ戦力が減った所で、敵の主力部隊が王都への襲撃を開始する可能性が有る。
外からは勿論の事、内からも。
つまり他にも地雷的にアンデッドと化す可能性のある人間が、他にも王都内に潜伏している可能性もある訳だ。
その為、王都にはそれなりの戦力を残す必要が有り、だがクムリ村を敵が放っておく保証もない。
という事での今回の選出メンバーとなった。
つまり、少数精鋭と言った所だ。
まぁ俺が精鋭のメンバーに入っているかどうかは、別として。
だが俺なりに一つ不安な事があった。
魔族に有効である『神聖魔法』の使い手であるキヨミが王都を離れると言う事。
陸兵士団はその大部分が王都に残っているし、隠密隊もミールとフィーユ意外は、城に待機している。
もちろん魔法師団も大部分は王都に残り、副士団長のラベリーがキヨミに変わり指揮を執る形だ。
だが副士団長のラベリーですら、神聖魔法は使えないと言う。
それで大丈夫か心配で質問をした所、俺の心配はあっさりと解決された。
「神聖魔法なら、ワシもつかえるぞい。 言って無かったかの?」
マーカ・マーラ・アリスタルフの一言に、一瞬目が点になる。
聞いて等居ない、初耳だ。
だが驚いているのは、その場で俺一人だった。
「だって大賢者にして、大魔道士だよ、大地。 当然でしょ。」
マリスが呆れ顔でツッコみ、その横でマリリが頷いている。
「そうよ、魔法で勝負したらアリスタルフさんに敵う人間なんて、このパウンダー王国には居ないわよ。
勿論、私だって魔法勝負では敵わないわ。」
「ほっほ、キヨミ殿よ、そう謙遜されるな。 昔はどうだっか、今はキヨミ殿の方がワシよりも遥かに上を行っとるでな。
ワシももう歳じゃ、戦いとなるとなかなかキツイものがあるでな。 先のメドゥーサの時もそうじゃったしの。」
どうやら俺の心配は、余計なお世話だった様だ。
ピターニャが用意した魔法強化をされた速馬の引く馬車に乗り、俺達一行は直ぐさまクムリ村へ向け出発した。
キヨミの直属の部下である魔法師団員は、馬車の周りを早馬で囲む形の陣形だ。
王都へ向かった時に迂回をしたあの川までの間に数匹のモンスターと遭遇したが、馬を止める事無くキヨミの指示でキヨミの部下が一瞬で魔法でモンスターを吹き飛ばす。
その統率の取れた鮮やかな連携技には、思わず見惚れてしまった。
なんかもう戦いのレベルというか、ステージが違う。
これは寧ろ魔族との戦いが始まっても、俺が足を引っ張ってしまうんじゃ無いだろうかとちょっと頭を抱えてしまう。
川を越えてからは、モンスターとは全く遭遇しなかった。
運が良い・・・というよりも、オカシイと言った方が正しいかもしれない。
キヨミ達の魔法力の強さをモンスターが本能で察知し避けているという事も考えられるが、マリリが途中途中でアクアフィールを展開するも、半径5キロ圏内に全くモンスターの気配が無いという。
それは余りにも不自然過ぎるというのは、キヨミ達も含め全員一致の考えだった。
恐らく・・・いや、きっと確実に『魔族』が何か関係しているのは間違い無いだろう。
敢えて口に出さずとも、皆そう思っていた。
ギルド間通信で俺達の事は予め連絡が行っていたので、クムリ村に到着するなり閉ざされた門がまるで自動ドアの様に開かれる。
外壁は魔族との戦いの影響に寄るものなのか傷みが見受けられたが、正門からみる村の風景は俺達がクムリ村を出発したその時と、そう変わりはない。
勿論、緊急事態故に物々しい雰囲気と、正門直ぐの広場には自警団の為の野営設備が設営されてはいるが、周囲の建物の損壊などは全く無いように見える。
取り敢えずは、ひと安心といった所か。
「まずは現状の確認と、王都に村への到着を知らせる連絡ね。」
馬車を降りたキヨミが、早速部下達に指示を下す。
「さあ、ゆっくりしている暇は無いわよ。 まずは大地ちゃん、マリリ、マリス、私に着いて来なさい。
あれを取りに行くわよ。」
キヨミの言葉に俺達は頷き、後に続いた。
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