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第15話 ちょっと考えが甘すぎたか・・・というか夢見過ぎか。

 昼間の賑わいは何処へやら、夜の中央広場はシンと静まり返り、何処からか聞こえる何かの動物の遠吠えやコオロギの様な鳴き声が静かに響く。

 日中なんとなく気がついてはいたが、どうやら街路灯が有る程度の間隔で設置されており、現代におけるLEDの街灯ほどの明るさは無いもののガス灯の様に優しい光がほんのりと夜道を照らし不自由なく歩く事が出来る。


 「あの街灯はガス灯?それとも油か何かを使っているのかな?」


 夜風に当たりマリリは少し酔いが覚めた様だが、マリスは疲れ果てたのか俺の背中ですやすやと眠っている。


 「あれは夜光石といって昼間のうちに陽の光に当てておく事で、暗くなると自ら光を発する石なんです。大地さんと出会ったあの森に採掘場があって、私たちの村の大事な収入源の一つでもあるのですよ。」


 「という事は蓄光性があるのか。収入源って事はそれなりに希少価値があるって事?」


 「ええ、他にも採掘できる場所は有る様ですが、純度が低く実用できる程の明るさも持続性も無い様です。」


 「悪い意味じゃ無いけど、ある意味独占販売みたいだね。普通に考えればそこまで希少価値があるのなら王都が管理をしそうな気もするけど、そこは何かしらこの村特有の特権か王都に対しての強力なコネが有るとか?」


 「大地さん鋭いですね。夜光石の取引に関して王都とは特別に契約を結んでいるんですよ。市場価格の上限を王都側で決める事と、王都への販売価格を市場価格の6割とし、王都用として毎年協議にて決められる数量を確保する代わりに、その価格範囲内であれば採掘量に併せてこちらで自由に決められるのです。あと、王都用の分さえ確保できていればそれ以外の分は一般市場に出すも良し、蓄えるも良しと、この村で自由に決める権利があるのですよ。」


 「成る程ね。俺の居た世界じゃ王制ってのは随分と昔に潰えた制度で、どちらかと言うと余り民の事を考えず良いイメージは無いってのが正直なところだけど、こちらの世界はそうでも無いんだね。」


 さっき村長宅で色々とこの世界の事について教えて貰った内容もそうだが、どうやら経済やその他の制度など、想像していたよりも発展している様に思え、この村はどうやら情勢も安定していて取りあえずは安心出来そうだな。

 森に一人放り出された時は正直、無理ゲーにも程が有ると思ったが運は良かった方かもしれない。

 いや、そもそも謎の影により、敢えてあの森に転移させられたのだとしらこれは運なんて物では無く、嘗てばーちゃんが居たこの村へ来る事もマリリ達と会う事も全てが仕組まれた事なのかも知れないな。


 とはいえ、これからどうするか・・・だな。

 寝床の確保もそうだが、何かしら食い扶持を見つけないと。

 

 「大地さん、大丈夫ですか? すみませんマリス負ぶって貰っちゃって。」


 「ん、ああ、これぐらい大丈夫だよ。なぁマリリ一つ無理なお願いをしてもいいかな?」


 「はい、どうしましたか?」


 少しきょとんとした顔で首を傾げながらマリリが答える。


 「これからなんだけど、知っての通り見知らぬ地で身寄りも無ければお金も無い。なんとか食い扶持は見つけるので資金が出来るまでの間、マリリ達の家に泊まらせて貰っても良いだろううか?」


 「え・・・」


 俺の唐突な願いを聞いたマリリは、まるでハトが豆鉄砲でも喰らったの様な顔で俺を見つめた。

 やっぱり、こんな若い美少女2人だけで暮らす家にアラフォーのおっさんが居候ってのは不味いよなぁ。

 幾ら異世界だからって、ちょっと考えが甘すぎたか・・・というか夢見過ぎか。


 「はは、ごめん、急に無理な事言って。」


 フィフティ・フィフティの確率で案外オッケーなんじゃないかと半ば期待していただけに正直少しショックを受けたが、まぁそれは仕方が無いかと自分自身に言い聞かせる様に大きく一つため息をついた。


 「あ、あの、泊まるも何も大地さんさえ良ければ、元からそのつもりでしたけど・・・。」


 「だよね、今日は何処か夜露でも凌げる・・・え?あれ?ええっと、今なんて?」


 「はい、大地さんさえ良ければ私達の家に一緒に住むものだと思っていたのですけど・・・。 私達とじゃ嫌ですか?」


 一緒に住むつもりとかって聞こえたけど、まさかそんな美少女ゲームみたいな展開な訳・・・マジか・・・。

 気のせいか、俺を見つめるマリリの眼が少し潤んでいる様に思える。

 そんな目で上目づかいで見つめられて冷静で居られる男が居るだろうか?いや、宣言しよう!断じて居ない!


 「へ、えぇ?へぇぇ?あのーマリリさん、まだ酔ってます?」


 「むー、少しは酔ってますけど酔ってません!あーでも酔ってますーだ!」


 会心の一撃!

 頬を膨らませながらぷいっと、そっぽを向くマリリの可愛さに心を打ち抜かれた。

 思わず頬がにやけてしまうのが自分でも良くわかる。

 いまマリリに振り向かれたらさぞだらしない表情をしているのだろうと思い、なんとか気持ちを落ち着かせた。


 「じゃぁ、お言葉に甘えてマリリ達の家にお世話になってもいいかな?」


 「はい! 喜んで!」


 満面の笑みで振り向くマリリに再び心を奪われつつ、俺達は静まりかえった路地を抜け家路に着いた。


今日は時間が有れば、もう1話投稿したいと考えています。

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