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第13話 日本人は酒豪だと聞いておる!

 玄関を入り、廊下のすぐ右手の部屋が食事用の部屋となっていた。

 部屋というよりはまるでちょっとした食堂と言った感じだが、もちろんテーブルや椅子、家具なんかも全て木製の手作りで暖かな雰囲気だ。

 5脚並べられたテーブルには1脚あたり向かい合わせで10人座っても少し余裕が有る程の大きさだった。

 奥のキッチンでは女性4名がせっせと分担作業で調理を行い、子供たちが自分の分を受け取り机に運んでいた。

 

 「おう、こっちだ!」


 1脚だけ横向きに上座の様に設置された奥のテーブルで村長のスキレットが手を上げた。

 村長の声で俺たちが食堂に来た事に気が付いた子供たちが群がり、あっという間に囲まれてしまった。


 「ねぇねぇ、ごはん終わったらあそぼーよ!」


 「マリリおねーちゃん、後で折り紙おしえてよー!」


 「マリスちゃん、一緒にクッカー作ろうよー!」


 「ふふ、いいわよ、村長とのお話が終わったらね。さぁみんなごはん食べよ。」


 「「はーい、約束だよー!」」


 慣れた感じでマリリが子供たちを促しテーブルに着かせる。

 まるで幼稚園の先生の様だ。

 

 「さあさ、お前たちも早く席に着け、腹が減った。」


 村長に促され、村長の横の席にザウル、村長と向かいの席に俺、右にマリリ左にマリスの並びで席に着いた。

 テーブルには、パンに種類豊富なジャム、湯気の立ったスープや野菜サラダにローストビーフの様な肉料理にフルーツ盛り合わせと、所狭しとどれも美味しそうな料理が並べられていた。

 

 「この度はお食事にお招き頂き・・・」


 と言いかけた所で、村長はワインの様な瓶を突出した。


 「固い挨拶はええ。この村で作った葡萄酒だ、キヨスズから日本人は酒豪だと聞いとる。まずは一杯いかんか?」


 「あー、えぇ、ではお言葉に甘えまして。」


 なんかこれは色々と誤解が有りそうな気がするが、取り敢えず俺は目の前のグラスを手に取り両手で構えた。


 皆の言うキヨスズが、恐らく間違いは無いだろうが本当に清鈴ばーちゃんなら、村長がそう言うのもうなずける。

 ばーちゃんと飲み比べをして勝てた人間など居ないという話も聞いた事が有れば、樽ごと飲み干したなんて伝説も語られる程だ。

 まぁ幾らなんでも樽ごとってのは、尾ひれ付け過ぎだろうが。

 そういえば子供の頃の記憶でも、ばーちゃんの家には色々な種類の酒瓶が飾ってあった記憶が有る・・・そんな事を考えながら一口含み、舌の上でゆっくりと転がす。

 

 「へぇ、美味い!程よい甘さながらしっかりとしかコクを感じつつも渋みは余り無いですね。」


 「ほう、分かるじゃないか。よし、どんどん飲め!そして食え。」


 「ありがとうございます。頂きます!」


 「私達も頂きましょうか。」


 考えてみればショコラ邸でクッカーは口にしたものの、この世界に来てからまともに食事をとってはいなかった。

 それゆえか美味そうな料理を目の前に腹の虫がおさまらず、ここは村長の気持ちをありがたく受け止め頂くことにした。

 正直なところこの世界の味の基準がどんなものかという不安は有ったのだが、幸いにして現代日本と特に変わりは無かった。

 というか腹が減っているせいもあってか、無性に美味く感じる。

 

 ちょっとした談笑や世間話・・・といっても俺的には全然世間でも無い異世界話しだが・・・を交えつつ、この村やこの世界の事に付いて色々と教えてもらい、食事もほぼ食べ終わった頃合いだっだ。


 「さて、腹も満たされて来た事だし、大地よ、お主も気になっているであろうキヨスズについての話じゃ。」


 村長は葡萄酒をぐいっと飲み干すと静かにコップをテーブルに置いた。


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