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緋色の翼   作者: Altera
6/6

《mission.4 テイクオフ》

久しぶりの更新です。コメント等評価お待ちしています。

午後5時20分。

アレン達12班の乗るT-4練習機二機は滑走路脇の誘導路をタキシングしながらゆっくりと進んでいく。

エンジンの振動がコクピットへと伝わり、キャノピーが微かに震えているのが分かる。

(そろそろか・・・)

ふっと短く息を吐き、アレンは意識を集中させる。

そのすぐ横の滑走路を、アレン達よりも前の班の練習機がエンジンを全開にして滑走していく。

一瞬の後、機体の後を追うかの如くバーナーの爆音が轟く。

(・・・重い)

とてつもなく重く、力強い響き。

何故飛行機が、重力というおよそ人類は振り切れないと長い間考えられていた巨大な自然の摂理を克服し空を飛べるのかと誰かに質問されたなら、先ずはこれを聞かせればいいと思うほど、言葉では言い表せない---というより言い表す必要の無い、確かな説得力がそれにはあった。

数十秒が経ち、その音が段々と自機のエンジン音にかき消され遂に聴こえなくなる頃には、既に二機は滑走路内に誘導され離陸開始位置に停止。滑走路に対し平行に並ぶ。

《操縦装置・・・よし。計器盤各部チェック・・・異常なし。次は---》

《フラップの離陸位置へのセット、今度は忘れんなよ、アレン?》《二度はしねぇよ。》《ホントかよ?》《本当だとも。》

後部座席の相棒と軽く問答しながらアレンはフラップをセット。それを見たニッキーは最後のチェックリストの項目にクリアマークを入れる。準備完了だ。

《一番機、オールグリーン。二番機はどうだ?》

アレンの問いかけにアッシュが淡々と返す。

《こちら二番機。こっちもチェック終了。問題ないぞ。》

《管制塔、聞こえるか?こちら第12班一番機---もとい、トレーナー4-1。離陸許可を頼む。》

トレーナーというのは、アレン達候補生が普段訓練で使うコードネームだ。今回オスカーの下で訓練を受けるのは9班から12班の計八機となるため、12班の一番機であるアレン機が4-1、モーガン達の乗る二番機が4-2となる。

《管制室よりトレーナー4-1、4-2へ。確認した。離陸を許可する。頑張れよ。》

臨時で教員を兼任している管制官がアレンからの要求に応援の言葉を交えながら応える。

《ありがとうございます。・・・トレーナー4-1、離陸開始。》

《トレーナー4-2、離陸開始!》


ドクン、と心臓が胸を打つ音が聞こえる。

操縦桿を持つ手が汗ばんでいる。

いける、大丈夫だ。緊張を紛らわせるため、アレンは心の中で言い聞かせる。

やってみせるさ。上手くな。


モーガン、そしてアレンはほぼ同時のタイミングでスラストレバーを動かしエンジンの回転率を上げる。

ギュウウウウウウウンとエンジンの音が格段に大きくなり、回転率を示す計器の値が大きくなっていく。

そして。

グン、と押し出されるように前に動いたかと思うと、機体はそのまま前進を始め急激に加速、それと同時に四人の身体はGによってシートに押し付けられる。

(くうっ・・やっぱり・・キツいな・・・)

まだ二十歳にも満たない彼らの未熟な肉体に容赦なくかかる激しい加速による重圧。

日々訓練を受けているといえど今の彼らには未だ慣れないものである。

そうではありながらしかし、この物理的なプレッシャーは、彼らが今まさに大空へと飛び立つことを実感させてくれる最もたるものでもあるのだ。

(この感じ・・・そう、この感じだ-------)

機体はますます速度を上げ、一瞬で後方へと流れていく景色を視界の端に捉えながら、アレンは機体が離陸可能な速度に達したことを計器が示すのを見る。

(-----今だ!)

心の中の合図と共に両手で握った操縦桿をゆっくり引く。


操縦桿の操作と連動して二機のT-4の頭が持ち上がって。

それに続いて後輪が浮き上がって。

そして次の瞬間、身体が重力を振り切りふっと軽くなった。


横に目を向けると、キャノピーの外の景色がどんどん小さくなっていく。

(・・・飛んだ。飛べたんだ。)

緊張が少しずつ溶けていく。機体は無事に離陸したのだ。

モーガン達の機体に目をやると、あちらも無事に上がっているようだ。

《アレン、各部のチェックするぞ。》

成功の余韻にほんのちょっぴり浸かっていたアレンは、ニッキーの言葉でハッと意識を元に戻される。

《・・・おい、アレン?》

《・・・あぁ、分かってる。脚を収納するよ。フラップも解除。》

少し慌てながらも手順通り機器を操作して機体を安定させる。

《トレーナー4-1、状況を。》

続けざまに管制官から質問がくる。

アレンとニッキーは計器を始め機体のコクピットの各部をチェックする。特に問題は無いようだ。

《こちらトレーナー4-1、機体に異常無し。状態良好。》

《同じく4-2、異常無しです。》

二番機からも返事が返ってくる。コクピットを見やると、二人揃ってこちらに向けて親指を立てている。

(大丈夫そうだな。良かった。)

先程に続きまた少し、アレンは体が軽くなるのを感じた。

《こちら管制室、了解した。ではトレーナー4-1及び4-2。君達は高度21000フィート(約6400m)まで上昇した後方位120へ転進、B-65空域にてリットン隊長達の訓練部隊と合流せよ。》

《4-1、了解。》《同じく4-2、了解です!》

威勢良く応え、候補生二人は操縦桿を動かし、機体を旋回させる。

機体が右に傾き始め、目に映るもの全てが斜めになってゆく。と、それまで背中の側にあって見えなかった太陽が四人の視界に入ってきた。


水平線の向こうに近づきつつある斜陽は、その輝きに赤色を混ぜつつ、不思議な光を放っていた。

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