<mission.3 鉄の産毛>
「よし、全員揃ったみたいだな」
夕方を周り、西の地平線に近づき始めた太陽を背にしながら、飛行教導隊隊長、オスカー・リットンはアレン達五年生を見渡した。
未だ8月の中盤ということもあり、夕方であるにも関わらず吸い込んだ空気が喉の奥をひりひりと焼く。
加えてアレン達がいるのは、基地の滑走路とは別に学校での訓練に使われる滑走路のエプロン(乗員の乗降、燃料の補給、簡単な点検整備などのために航空機を留めておく場所。駐機場。)であり、ただでさえ暑苦しい対Gスーツ(パイロットスーツ)を着込んだ彼らは更に直射日光と地面からの放射熱をもろに浴びるという悲惨な状況の真っただ中にいた。
「それでは、今回の訓練及び演習についてもう一度説明する!全員、聞き洩らしがないかよく確認しろよ!」
アレン達が余りの暑さにげっそりとしているのとは対照的に、オスカーは意気揚々と説明を始める。
(毎回毎回、ブリーフィングルームで説明してるにも関わらずもう一回外でも説明するんだよなこの人・・・ありがたいんだけど長いんだよ・・・)
教官の話を右から左へ受け流しつつそう心の中で愚痴ったアレンは、徐に額をぬぐったスーツの袖が汗でぐっしょりと濡れているのを見て更に気が滅入るのを感じた。
隣にいるアッシュに目をやると、いつもはキリっとした表情を崩さない彼もやはりこの暑さのせいか怠そうな顔をしている。
「・・・今日の最高気温、何度か知りたいか?」
と、いつの間にかアレンの視線に気付いていたアッシュは、アレンの方へは顔を向けないまま訪ねる。
「聞きたいような気もするし、聞きたくない気もする」
「じゃあ言うよ。39.8度、今月の最高気温だ」
「・・・やっぱ良いよ。言わなくていい」
「遅いよ」
笑いながらアッシュは返す。
幾分か気分が晴れるのを二人は感じた。
「因みに何をやるかは分かってますな、アレン班長?」
わざと畏まって質問してきたアッシュにアレンもオスカーの声を真似ながら返す。
「『あぁ、勿論だとも!我らパイロットコース所属五年生第12班は、本日午後0600よりレイル空軍基地管轄のB-65空域にて、飛行演習及び班対抗模擬空戦を行う!』・・・意外と似てるだろ?」
「お見事。」
アッシュは皮肉半分称賛半分の拍手を返す。
「おいお二人さん。そろそろ終わるぜ」
「ん、分かった。」
ひそひそ声で談話していた2人の横からニッキーが告げた。
前を見ると、言った通り説明は終わりかけていた。
「・・・ではこれで最終確認を終わる!全員、各々の格納庫へ移動し0520までに滑走開始できるように。遅れるなよ!解散!」
オスカーの説明が終わる。と同時にアレン達は一斉に立ち上がり、自分達の背後にずらりと並ぶ格納庫を振り返った。
「・・・よし。行くか。」
「おう!」「あぁ!」「うん!」
アレンの一言に他の3人も威勢良く返す。先程までの猛暑から来る倦怠感はすっかり抜けているようだった。
4人は、元気よく駆け出した。
(続く)
投稿日がかなり遅れて誠に申し訳ございません。また、3話は2パートに分割させて頂きました。各話の長さが未だ安定していないことをここにお詫び申し上げます。