<mission.2 いつもの顔ぶれ>
学校の食堂は基地のそれとは別に学校本館に隣接して設置されている。
バレーボールコート三つ分の広さを誇るこの食堂は今まさに昼食時を迎えており、生徒と職員併せて千五百名余りで埋まり、和気あいあいとしていた。
「おーいアレーン、ニッキー、こっちこっちー。」
生徒の合間を縫って歩きながら、何処か座れる席はないものかと辺りを見渡していたアレンとニッキーの耳に、聞き慣れた低い声が後ろから響く。
振り返ると、ランチを受け取ろうとしていた生徒の列の中で、頭一つとびぬけた大柄な生徒と、その横の栗毛の生徒がこちらに手を振っているのが目に入った。
「モーガン。それにアッシュも。先に来てたのか。」
「うん。ちょっと早めに授業が終わったから。二人の分のランチもついでにとっておこうと思って。」
「おっ、ありがと。助かる。」
「良いよ、お礼なんて。同じ部屋の仲じゃないか。」
モーガンと呼ばれた大柄な生徒は少しはにかみながらそう返した。
そんなモーガンを見ながら、相も変わらずいい笑顔だなとアレンは思った。
「ったく、ほんとおめえは温厚な性格だよな。軍人にゃ向いてないし、やっぱりおめえ、実家の花屋の後継いだほうがよかったんじゃねえの?」
そう意地悪に言ったニッキーに対し、モーガンは少しムッとしながら返す。
「もう、ニッキーまぁたそうやって言うんだから。僕だって弱虫じゃないし、やるときはやるよ。」
「そうそう。それにパイロットに適しているか否かは別に性格だけで決まる訳じゃないしな。」
トレーを取りながらそうモーガンを擁護したのは、栗毛の生徒、アッシュであった。
「むしろお前のその大雑把な性格を直した方がいいんじゃないか?いや、今すぐにでも直すべきだな。」
「うっ・・・お前って時々すっげえ毒舌家だよな・・・。な、アレンもそう思うだろ?絶対何とかした方が良いって、あれ!」
アッシュに冷静に論破され立場の危うくなったニッキーはアレンに話を振る。
そんなニッキーに対し、アレンはとどめを刺すかのように淡々と返した。
「そうだな。お前のそのすっからかんの脳みそに思いやりって言葉を覚えさせるのは確かに最優先の課題だな。」
「なっ・・・アレンそりゃあないぜ!裏切り者ォ!」
嘆くように非難したニッキーに対し、アレンはアッシュの取ったランチを受け取りつつ、半ば呆れながら
「勝手に言ってろ。」
そう言い放った。
「それよりお前、せっかく二人が取ってくれた昼食いらないのか?食べるぞ?」
「ああ待て待て!もちろんいただくとも!二人共ありがとな!」
一瞬前とは打って変わって笑顔になったニッキーを見た三人は、
(まったく、ほんと調子良いんだから)
と、心の中で苦笑した。
「ん?なんだよ三人とも。そんなニヤニヤして?」
「・・・いや、何でもない。ほら、さっさと食べて訓練の準備するぞ。なんせ今日は久しぶりに飛べるんだからな。」
訝しんだニッキーに対し、アレンは笑いをこらえながらそう返した。
続く→