キス
せつない恋を書いてみました。
忘れられない人がいる。
僕が同じクラスの彼女と
仲が急速に深まったのは、
15歳の夏の頃だった。
手紙のやり取りをしたり、
誰にも気づかれぬように
電車に乗って
5つ離れた駅から降りて
小さな公園のベンチに座り、いつまでも
夢を語り合って
過ごしたことを
よく思い出す。
2人でフリスビーをして遊んだり、キャッチボールをしたり、リュックサックに入れて持ってきたお菓子を食べたり、マンガや本などを一緒に読んだ。
時には肩を寄せあったり。
彼女とキスをしたのも、
あの公園のベンチだった。キスをしたあと
「夕陽が綺麗」と言って、
彼女は泣き出した。
僕は涙の意味が
分からなかった。
帰りの電車に
乗っていた時、
彼女は、突然、
「明日から会えない」と、言ったのを、
今も鮮明に覚えている。
「僕のことが嫌いになったのかい?」と聞いたら、
違うと首を振る。
僕は理由を知るのが怖くて窓の外の
夕陽を見つめていた。
彼女は
僕と手を繋ぎながら、
肩を震わせて、
嗚咽をあげて、
ずっと泣き通していた。
翌日、学校で、彼女は
父親の仕事の都合ために
引っ越し、転校をしたと聞いた。「なぜ、なにもいってくれなかったんだ?」とクラスメートも、皆、唖然としていた。
僕は時が
止まったように感じた。
あの娘が座っていた席が
泣いているように見えた。僕は喪失感で
胸が張り裂けそうだった。
もう二度と
彼女に会えないと思うと
涙が出てきた。
バレないようにアクビをしたけれど、隣の席の女の子はこちらを見ていたから、気づいていたと思う。
「トイレに行きます」と先生に言って、廊下に出ると僕は泣きながら外に駆け出していた。上靴のままで、
彼女の家まで走ろうと思った。 しばらく放心状態で歩き続けて、立ち止まり、僕は考えてしまい、来た道を引き返して学校へと戻ることにした。
僕は心の中で、
さようなら。
ありがとう。
好きだよ。
と何度も呟いた。
いつの日か
再び彼女に
会えることを
願いながら
僕は涙を拭いて歩いた。
愛は永遠にいつまでも。
読んでくれてありがとう。