ニ身同体
これから一章分は毎日0時に投稿します。(土日は2話分)
「……分かった。
このまま俺はお前の剣を抜く。
だからお前も同時に俺の剣を受け取れ」
追い詰められたこの状況で
ようやく決心してくれた彼の言葉に
僕は少し安心できた。
どっちみちこんな状態では、共倒れだ。
周囲は敵で囲まれ、体は満身創痍、
それだけでここからは逃げられない。
俺だって引くわけにはいかない。
生まれてこのかた、まともな人生を
歩めてねぇっていうのに、
ここで意味の分からない連中に
意味の分からない理由で死ぬなんて御免だ。
それにここでくたばれば俺の今持っている剣も、そして守るべき人間も守れない。
曲がりなりにも自分を『剣士』
だと思ていた俺がこうも手も足も出ないとはな。
全く自分の力のなさに嫌気が差す。
だったら、せめて一矢報いる位はしておきたい。
なぜなら、ここで諦めるのはきっと僕にとっても『正解』ではないから。
血で霞む視界で、
必死で気を奮い立たせて僕たちは立ち上がった。
そのまま互いの背中越しに、
背後に手を伸ばしてそれぞれの剣の柄を手にかける。
紅い髪の彼の左手から僕の右手に。
そして黒い髪のこいつの右腕から俺の左手に
それぞれの剣は渡って……
二つの身体は一つになった。
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