表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム転生。大賢者が養女エルフに抱きしめられてます  作者: 月夜 涙(るい)
第六章:【影】のエンライト、クレオ・エンライトは潜む
135/141

第十六話:スライムは、スライムファイブを褒める

 ニコラの発明品、大陸間弾道ミサイルで【強欲】の邪神マモン、超重量の黄金巨人をぶっ飛ばして、この国最大の湖に叩き落とした。


 本来は国家間の戦争を早期に解決するための兵器であり単体に使うようなものではない。

 しかし、邪神相手ならこれぐらいのものは要る。


 俺たちは、スライムファイブの背中に乗り、湖に移動する。

 スライムファイブは、それぞれの推し娘を乗せているあたり、ちゃっかりしている。


 俺は心が広い、それぐらいは許してやろう。

 ただ、変なことはしないように目を光らせている。


「ぴゅいぴゅ(わかってるな)」

「ぴゅいっさ!(いえっさ!)

 ちょうど今、スラレッドと目があった、あいつ全力で何もしないし、するつもりもないとアピールしている。

 よくわかっているようで安心した。


 ニコラとヘレン、レオナは湖からしばらく離れたところに待機させている。

 ニコラは新たな兵器を設置し、ヘレンは先ほど周囲に巻き散らかされた【強欲】の邪神を分析している。

 そしてレオナは、後方から偽スラちゃん経由で指示を出す。


 ニコラたちを運んでいた、スライムファイブの面々が前線に戻ってくる。

 初撃は彼らに任せるためだ。

 湖のふちに、オルフェとシマヅ、レオナも降ろされる。


「こうして、見るとやっぱり大きさに驚かされるよね」

「この湖、数十メートルは水深があるわ、それなのに、へその下あたりまでしか水に浸かってないなんてね」


 呆れてしまうサイズだ。

 そんなものを巨大湖に叩き落したものだから、津波のように水が押し出されて周囲が悲惨なことになっている。


 ……まあ、あれが城や街の近くで暴れるよりはだいぶましだろう。

 何百人、いや何千人死ぬかわかったものではない。


 そんな様子を見ているうちに、スライムファイブたちが、必殺技の準備を進めていた。


 五匹の精鋭スライムたちが空を舞い、まるで五芒星を描くように【強欲】の邪神マモンを囲んだ。

 この飛行ルートそのものに魔術的な意味がある。

 奴はスライムファイブたちのことをコバエ程度にしか思っていないのか無視をして陸地を目指していた。


 所定の配置につき、いよいよ必殺技が放たれようとしていた。


「ぴゅいぴゅう、ぴゅるっぴぃ(我が名はスライエロー、揺るがぬ大地の力をここに)」

「ぴゅいぴゅ、ぴゅいっぴゅる(我が名はスラレッド、情熱の火炎の力をここに)」

「ぴゅるぴー、ぴゅるぴっぴぃ(我が名はスラグリーン、吹き荒れる風の力をここに)」

「ぴゅるっぴ、ぴゅいっぴゅぴゅ(我が名はスラブルー、鮮烈なる水の力をここに)」

「ぴゅるっぴい、ぴゅいっぴゅ(我が名はスラブラック、純然たる力をここに)」


 スライムファイブたちが五色に輝き、体色に合わせた属性の力を全力解放する。


 力と力がひかれあい、五体のスライムファイブが魔力のパスで繋がれ、空中に五芒星が描かれた。

 さきほどの飛行では、事前にそうなるようパスを張っていたのだ。


「お父さん、すごいね。あれ、五体の偽スラちゃんが完全に同調して、五つの同量異質の力を重ね合わせるなんて。人間には絶対無理だよ」

「ぴゅい(そうだな)」


 どれだけ、すごいことをしているのかがわかるオルフェが息を荒くする。


 魔術をかじるものなら、戦慄する光景だ。

 それにしても……。


「ぴゅい、ぴゅいっぴゅ(良かったなスラブルー)」


 必殺技でハブられなくて。

 スライムファイブたちの輝きはさらに増していき、ついに必殺技が完成した。


「「「「「極大消滅五芒星スラフィニッシュ!!」」」」」


 地、火、風、水。

 基本四属性をフルパワーで解き放ち、同調させる。

 極限まで高まった四属性のエネルギーは重なり合い、高めあい、やがてどの属性でもない消滅の力として昇華される。


 四属性がまったく同じ出力でなければ、術式は崩壊し、水が高いところから低いところへ流れ込むように、出力が低い側に力が流れ込み術者が死ぬ。


 全員が、俺から分裂したスライムであり意識を共有できるからこそ可能な魔術だ。

 スライムは、一が全であり、全が一なのだ。


「ぴゅいぴゅ(にしてもすごいな)」


 一人で四属性を同時に練り上げるなんて不可能だし、そもそも他人とまったく同じ出力で、異なる属性の魔力を同調させるなんて真似も大よそ現実的じゃない。


 おそらく、地球上で【極大消滅五芒星スラフィニッシュ】を放てるのはスライムファイブだけだろう。


 ……ぶっちゃけ、四体でも放てる。実際、スライムブルーがエレシアの護衛に出ている間に、残りの四体で完成させていた。

 それをわざわざ五体用の必殺技で練り直したのだ。


 ぶっきらぼうな一匹狼に見えて、妙に気を配るスライムブラックが、水属性ポジを譲り、ブースト役に回っている。

 このことから、微妙なスライムファイブの人間関係、もといスライム関係が透けて見える。

 なんだかんだ言ってこいつら仲がいいよな。

 推し娘が違うせいで、たまに喧嘩しているが。


「「「「「ぴゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」」」」」


 スライムファイブが各々に無駄にかっこいいポーズ(本人たちはそう思っている)を決めながら、絶叫。

 魔術が完成し五芒星から白い光の柱が落ちてくる。


 光に触れた瞬間、邪神の体表にある黒い苔のようなものは消滅し、黄金までも分解していく。


 あまりの威力に、魔術の高度さがわかるオルフェだけでなく、シマヅとクレオすらも驚愕する。


【強欲】の邪神は黄金光を放ち始めた。

 シマヅの斬撃すら耐えられた、黄金を凌駕する超黄金の肉体ですら【極大消滅五芒星】には耐えられないと判断して防御に力を注ぐ。


【強欲】の能力は、白い光の柱すら黄金化するが、白い光は黄金化した端から消滅し、新たに表面が黄金化され、また消滅しと繰り返されていき……結果は対消滅。


 スライムファイブの【極大消滅五芒星】と【強欲】の打ち合いは続く。

 もはや、どちらの出力が大きいかの戦いだ。

 数十秒後、結果はでた。


 白い光の柱は喰らい尽くされ、空に浮かぶ五芒星に【強欲】の力が触れると、五芒星が砕け散る。


「「「「「ぴゅひいいいいいいいいいいい」」」」」


 力を使い果たしたスライムファイブたちが落下していき、水面に落ちた。


 待機させていた。偽スラちゃんたちに回収を命じる。

 あいつらはよく頑張ってくれた。あとは俺たちの仕事だ。


「GUMOOOOOOOOOOOOOOOOO」


【強欲】の邪神マモン、その叫びと共にスライムファイブが削った黄金の肉体が再生していく。


 いや、再生じゃないな。

 周囲の水を黄金化して埋めているだけだ。

 いよいよもって、クレオの推測が当たっていると思えてきた。


 あの巨体のほとんどは、ただの鎧であり、本体はあの巨体のどこかに隠れている。

 それを見つけて、潰さない限り、無限に周囲を黄金に変えて肉体を修復されてしまう。


「ぴゅいっぴゅ(よくやった、スライムファイブ)」


 結果的に、スライムファイブの必殺、【極大消滅五芒星スラフィニッシュ】はダメージを与えられなかった。


 しかし、ただでさえ封印と、俺が仕込んだ罠によって弱っていた【強欲】の邪神、その力を大きく削り、クレオの説の裏付けができた。

 なにより、いい囮になってくれた。

【極大消滅五芒星】が押し負けると察した瞬間、シマヅとクレオの前衛組は走り出していた。


 あの二人がスラファイブに気を取られている好機を見逃すわけがない。

 足裏に気を貯め、水を弾かせて、湖面を走り、懐に入っている。

 スライムファイブたちが、ぶちかまさなければ、すでに警戒されているシマヅは、ここまで簡単に懐に入り込めなかっただろう。

 ……さあ、前座は終わった。主役の登場。

 一気に、クライマックスだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ