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スライム転生。大賢者が養女エルフに抱きしめられてます 作者:月夜 涙(るい)

第五章「【王】のエンライト、レオナ・エンライトは率いる

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第六話:スライムは娘を守る

おかげ様で、百話突破しました! 皆様、応援ありがとう!
 オルフェは俺を抱っこしたままソファーで横になる。
 スライムボディの癒し効果で、魔力の回復効率を上げているのだ。
 そして、俺自身も魔力バッテリーに充填するために気持ちを落ち着かせている。オルフェに抱っこされると気持ちいのだ。ぴゅふっ、極楽。
 順調に馬車は走り続ける。
 このまま、何もなければいいが……。

 ◇

 アッシュポートを出てからすでに二日経っていた。
 その間、襲撃どころか監視されている気配すらない。
 俺自身、【気配感知】を定期的に実行しているが怪しいものは見つからない。
 そして、アッシュレイ帝国最後の街、グランネルにたどり着いた。
 ここら先に行くとグランリード王国の領地となる。

「オルフェねえ、もう暗くなってきたしそろそろ野営の準備しないと。街が見えてるけど、どうする?」
「たしか、グランリード王国の王都って、かなり遠いよね。途中に街はあるけどレオナがまずい状況って言うぐらいだし、まともに休めないかも。今日は街で休も。馬車の長旅で疲れちゃった」
「ぴゅいっ!(賛成)」

 馬車の旅はオルフェの言う通り疲れがたまるし、精神的にも良くない。
 国境を越えてからは、より危険度が高まる。
 アッシュレイ帝国にいるうちに、一度疲れを抜いたほうがいいだろう。

「わかった。オルフェねえのサバイバル料理は美味しいけど毎日は辛い」
「そういうこと言うと、ニコラにはもう作ってあげないよ。ニコラだけ味気ない保存食を食べてればいいよ」
「うっ、オルフェねえ、それはずるい」
「冗談だよ。それに情報収集もしたいしね。国境近くにある街なら、今のグランリード王国のこともわかるし」
「情報収集なら酒場。酒場でご飯を食べながらいろいろと話を聞く」

 こうして、グランネル行きが決まった。
 俺たちは馬車から降りる。
 そして、馬車を【収納】するために、偽スラちゃんたちと合体、ぱくっと一口で馬車を【収納】する。

「スラちゃん、ありがと」
「スラがおっきくなれるようになってから、馬車隠す手間がなくなって楽になった」
「ぴゅっへん!」

 口に入るサイズしか【収納】できないという制限をなくすには、俺が大きくなればいいという解決方法に気付いていろいろとできることが増えた。
 大きなものを【収納】できるというのは、ただの便利能力ではなく戦闘にも使える。
 いつか披露できる日が来るだろう。

 ◇

 グランネルは、港街で人と物があふれるアッシュポートと比べると規模が小さいが、十分栄えていると言える街だった。
 人通りが多く、夜なのに客寄せの声が響き渡る。
 オルフェはいくつかの商店で買い物をしつつ、隣国であるグランリード王国の情勢を聞く。

 オルフェが買い物をしている店はすべてグランリード王国の商品を扱っている店ばかり。
 つまりは、商品の仕入れで向う側と関わっている店だ。
 あえて、高額の品物を買っていることもあり、快く店主たちもいろいろと話を聞かせてくれる。
 オルフェが礼をして店から出てくる。

「ニコラ、この街のおすすめの酒場教えてもらったよ。料理が美味しいところ。そこで、情報収集した結果を話すよ」
「さすがオルフェねえ。ニコラにはない社交力」
「ニコラも、家族以外ともっと話すようにすればいいのに」
「ポーションを納入するときにはいろいろと話す」

 逆に言えば、ニコラはそれ以外では買い物ぐらいでしか他人と口を利かない。
 この子は、家族以外に心を開かない子だ。
 別に、対人恐怖症というわけではなく純粋に他人のことに興味を持てないため、会話が続かない。

 シマヅの母国で、刀鍛冶のカネサダとはうまくやっていたが、あれもカネサダに興味があったわけではなく、彼の技術に興味があったから、かろうじて意思疎通ができた。

「ぴゅい……(心配だ)」

 こんな調子だと、ニコラは一生お嫁にいけないかもしれない。

「スラちゃん、眉間にしわ寄せてどうしたの?」
「ぴゅいっぴゅ!(なんでもないよ!)」

 ニコラに普通の友達を用意しないとな。損得抜きでただ一緒に居たい、話したいと思える相手がいればニコラも変わるだろう。
 その点では、巫女姫エレシアはいい線を行っていた。
 すべてが落ち着いて、屋敷を取り戻せたら、そのときは彼女に遊びに来てもらおう。

 ◇

 商人たちのおすすめという店に来ると、評判通りの人気で酒場はほぼ満席だった。
 隅っこの小さな席に案内される。
 ありがたい。大きなテーブルだと、美少女であるオルフェとニコラと一緒に酒を飲もうと男どもが断りなく居座ろうとするが、三人でいっぱいになる席だと、いつまでも留まれない。
 店員が注文を取りに来た。

「えっと、この店の人気メニューを一番人気から三番人気まで三人前ずつ、飲み物は林檎酒シードルがいいかな」
「ニコラは蜂蜜酒ミード
「ぴゅいっ!(ウイスキー!)」
「スラちゃん、それじゃ店員さんはわからないよ。えっとウイスキーでいいかな?」
「ぴゅいっ!」

 さすがはオルフェだ。ばっちり俺の趣味をわかってくれた。
 正体がばれる前は酒なんて飲めなかったが、今なら注文しても問題ない。店員はスライムが酒を飲むのが意外なのか、引き攣った笑いを浮かべている。

 すぐに酒が運ばれてくる。
 三番人気の三種のチーズクラッカーが運ばれてきた。
 香ばしいクラッカーの上に、オレンジ色のチーズ、青いカビの生えたチーズ、まっ白いでとろとろのチーズの三種類が乗っていてどれも美味しそうだ。

「じゃあ、乾杯して、さっそく食べよ」
「ん。お腹空いた」
「ぴゅいっ!」

 グラスをぶつけ合う。触手の扱いがうまくなってきたのでこうやって乾杯もお手のものだ。
 乾杯どころかナイフとフォークで食事ができるぐらいにまで成長している。

 フォークを触手で操り、クラッカーを口に運んで咀嚼。
 青カビのチーズはかなり強烈な臭みと個性的な味わいがある。癖になりそうな味だ。
 ウイスキーを流し込むと、臭みが消えて旨味だけを味わえる。
 これはいいかもしれない。

「オルフェねえ、オレンジと白いの美味しいけど。青いのは無理。くさいし、変な味」
「私も苦手だね。青いのはスラちゃんに任せちゃおう」
「ぴゅい。ぴゅい(やれやれ、まだまだ子供だな)」

 オルフェとニコラに大人の味は早かったようだ。
 次の皿が運ばれてくる。
 まるまるとして焦げ目のついた大きな赤ピーマンが丸ごと赤いスープで煮込まれたもの。
 食欲をそそる肉の匂いがする。

 ナイフで赤ピーマンを切ると、中から引き肉と米が出てきた。
 なるほど、たっぷりの香辛料で炒めた羊肉と米をピーマン煮詰めてから、オーブンで焼き、さらにトマトソースで煮込んだのか。

 これはいいな。肉詰めされたピーマンだけでもうまいのに、米が一緒に詰められているから満足感があるし、トマトソースで煮込まれてより旨味を増している。

「オルフェねえ、これ美味しい」
「面白い発想だね。私じゃ、炒めて、赤ピーマンに詰めて、オーブンで焼いてから、さらに煮込むなんて思いつかないよ。帰ったらアレンジして作ってみたいかも」
「ぴゅいっ!(食べたい)」

 オルフェが、どうアレンジするか気になるものだ。
 何に詰めるか? 何を詰めるか? 何で煮込むのか? でどんな料理にも変身する。オルフェのセンスはいい。きっと、今日の料理より美味しいものができるだろう。
 この料理も酒が進む。
 お酒のお代わりをもらう。

「スラちゃんはよく飲むね。私も、お代わりをもらおうかな」
「ニコラもお代わり。スラが美味しそうに飲むから釣られちゃう」

 二人が酒を飲みすぎるのは、ちょっと危険だが林檎酒も蜂蜜酒もジュースみたいなものだ。
 特段問題ないだろう。

 最後のメニューが来た。
 大きな船形のピザだ。
 たっぷりのとろとろのチーズにひき肉、卵、ホウレンソウ、さまざまな具が乗っていて食欲を誘う。
 シンプルな料理だが、それ故に手が引き寄せられる。

「うわあ、すっごいボリューム」
「チーズが糸を引く」
「ぴゅいぴゅい」

 生地が分厚く食べ応えがある。
 生地にスパイスとナッツが混ぜ込まれており、具の旨味を引き出してるし、生地そのものが美味しいため具があまり乗ってないところも美味しく食べられる。

 こういうピザは初めてだ。
 さすがは人気メニューだけはある。オルフェとニコラも気に入っているようだ。

 あっという間に、すべてのメニューを食べつくしてしまった。
 デザートを頼むと、面白いものが来た。
 伸びる白いアイス。
 アイス自体が珍しいのに、伸びるアイスなんて魔法のようだ。
 アイスは酒ではなく、薬効があるハーブティと共に楽しむ。

「ぴゅふぅー(満足)」
「いいお店だったね」
「帰りにもまた来たい」

 旅の疲れを、十分に癒してくれる素晴らしい料理だった。
 オルフェがニコラの口元を拭う。ニコラはそれを自然と受け入れていた。

「さて、お腹も膨れたし、街で集めた情報を話すよ」
「ん。オルフェねえ、グランリード王国はどうなってる?」

 ニコラも俺もオルフェに意識を傾ける。

「……それがね。すごく平和なの」
「おかしい、あの国は国王よりも人気がある将軍がクーデターを起こして、国が真っ二つに割れた。だからこそ、レオナが救いに行ったはず」

 ニコラの言う通り、もともとレオンハルト将軍のクーデターを鎮めるためにレオナが向かった。
 グランリード王の望みは、無血で戦いを終わらせること。
 なにせ、レオンハルト将軍が率いているのも、グランリード王国民だ。殺したくはない。

 ただレオンハルト将軍を倒すだけなら、オルフェやシマヅでも対応できる。だが、戦いそのものを起こらないようにして解決なんて芸当をできるのはレオナだけだ。
 だからこそ、レオナを派遣した。

「それがね。レオナが向うに行ってからは、多少の小競り合いはあったみたいだけど、大きな戦いは起こらなくなったみたい。たぶん、レオナがうまくやっていたんだね。一か月ほど前に、レオナが王とレオンハルト将軍を同じテーブルにつかせて無事和解させてクーデターは終結した。【王】のエンライトの力は本物だった。彼女は英雄だって、みんなが口をそろえてそう言うんだ」
「ありえない。だったら、レオナはニコラたちを呼ばない」

 おかしなことだらけだった。
 一人の店員がこちらに近づいてくる。
 普通なら、誰も警戒しない。なにせ、酒場の店員がこちらに注文を取りに来るのは当然だからだ。

 しかし、俺は身構えていた。
 ニコラの背後に彼は立ち、にこやかに笑顔を浮かべ、胸元からナイフを取り出して突き立てようとして……吹き飛び、壁にぶつかる寸前に消えた。

 予め、クリア偽スラちゃんを二体用意していた。ニコラの近くにいた一体が、店員を弾き飛ばし、壁際にいたもう一体の大きなクリア偽スラちゃんがぱくっと、透明な体で包み、体内の睡眠薬を使って気絶させると同時に隠してしまう。

 男が襲撃者であることは、歩き方でわかっていたし、いくつかの魔術を使い胸にナイフを隠していることを見抜いていた。
 だから、オルフェとニコラの足元にクリア偽スラちゃんたちを移動させ、武器を抜けば体当たりするように命じていた。
 気絶した男を体内に隠した偽スラちゃんには、こっそり酒場から消えてもらう。

「オルフェねえ、今すごい音がした」
「なんだったんだろうね?」

 ちなみに、今のは一瞬の出来事だ。
 大きな音がして、みんなが振り向くまでにすべてを終わらせている。
 オルフェとニコラは自分たちが命を狙われていたことにすら気付いていない。

「ぴゅい、ぴゅい(やっぱり、俺がいないとダメなようだ)」

 オルフェやニコラは【魔術】と【錬金】により規格外の攻撃力と防御力を持っている。
 だが、結局のところ強いだけの素人だ。
 一般人に偽装されれば無力。敵を敵だと認識すらできずに殺される。
 だから俺が守る。

 可愛い娘を襲おうとしたのだ。それなりの報いを受けさせよう。
 ついでに、どうせ末端だろうし多くの情報を引き出すことは期待できないが、可能な限り情報を引き出す。
 俺は、娘に手を出す連中相手なら鬼になれるのだ。
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