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第二話 かれ

とある未来、とある惑星にて……

惑星の臍と呼ばれる巨大な建造物、ドーム型スタジアム…

…そのグラウンドに現れた20メートルの巨大な球体に、かれは、その手を…触れた……

 かれがかれなりに一閃一閃を味わい読み解いて編纂していったその光の一筋の束は、あたかも……

 遺された我らがいま、いかなる方式で存在していたのかというかれ以外には知ることのできなかったその正確なプロセスを、窒息しそうなほどの深い霧の迷宮に覆い尽くされたプロ野球の一試合という膨大なミステリーのその真相を……

 かれの叙述はひとつの秩序として再現してしまった。

 

 これは、世界にひとつだけの再現であり、当然ながらその当時の人々が絶対に知ることのできなかった叙述である。

 よって、かれの遺した価値は絶対なのだ。


 では、この球体を利用して、他に編纂されたかつてのプロ野球の再現はないのか?

 答えは、今のところ、ない。

 一試合として整然とされたものに関して言えば、彼以外にそれを成し遂げたモノはひとつもないのであった。

 

 なぜというに、この球体の内奥、蠕動する微細なるその一閃の保有するイメージの量は、たった一場面に過ぎず、それは文章にして一文が限度、対話にして一問一答が限度のようなものであるから。

 そしてそれを一日30分を過ぎてなお身に受けることは、精神衛生上また、肉体上危険であり禁止されている。

 これは、魂と忍耐の大事業であるのだった。


 だからこそ、かれが一日たった30分の対話の、しかも錯綜に継ぐ錯綜の連続のカオスに痺れながらそれを深く刻み記憶して、その毎日毎日を、勇猛果敢挑戦し続けた戦場風景の再構築たるたましいの建造物へと昇華し得たことについて、奇蹟を感ぜすにいられない。


 危険を渡り歩き、とおいとおいベクトルを羨望し続けたかれ、人生を賭し、通いつめ見事なその情景を構築して、再現するにまで至らしめたホンモノは、かれ以外にはいなかった。


 そしてそれがある種の整然へと落とし込められたモニュメントとして輝き、この世界に叫び上げられた衝動となって、我らの胸を打ち、なおも奥深い場所へと向かい続け、鳴り響くのではないか! 

 


 さあ…かれと…私とをむすぶ……

 

 そんな電撃を私はわが魂へとながした…

 かれの叙述は、世界中の好事家へとむけられて量産された。

 閃光する、ボール大の魂の叫び声と結実して……


 


 さあさあいまはなき、忌まわしき、ぼうれいとの諸君、交えるは刃の一閃よ…


 これはおれがながいことかけてつみあげた瓦礫の塔である…


 それでは諸君、ゲームセットでまた会おう!!!

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