装備の準備とレベル上げ
宿屋から10分程歩くと鎧やら剣やらが展示してある店についた。
看板をみると剣と盾のマークがある。
ここが武器と防具の店か。
店の入り口から店に入るとなかなか広い。
所狭しと剣や槍、盾や弓などが置いてある。
キョロキョロと辺りを見回しているとカウンターらしき所に髭をこれでもかと蓄えたガタイの良いおっさんが居た。
俺はそのおっさんに話しかける。
「武器と防具が欲しいんだが…………」
「へい、らっしゃい!」
おっさんがそう言うと俺の目の前にウインドウが現れる。
そこにはズラッと武器の名前やパラメーター、装備できるジョブの種類などが表示されていた。
「沢山あるな…………」
俺はできるだけハードボイルドな武器が良いと拳銃を探す。
ハードボイルドな男たちの武器といえば己の肉体と拳銃だ。
ウインドウを操作していくと拳銃の欄があった。
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拳銃
この装備で攻撃した場合力にプラス30
弾は9発
リロードにはmpを30消費
装備可能ジョブ
刑事、犯罪者、ヤクザ、マフィア、猟師
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「ダメか……………」
このミカン農家とかいうジョブになった時に薄々感づいてはいたが完全にこのジョブ戦闘職じゃないだろ…………。
俺はそんな事を考えながら俺のジョブであるミカン農家専用の武器を探す。
するとある武器が検索にヒットする。
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剪定バサミ
この装備で攻撃した場合力にプラス5
植物系のモンスターに対して二倍ダメージ
鉱物系のモンスターに対して攻撃半減
定期的に研がなくてはいけない
装備可能ジョブ
農家 、庭師、メイド
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ダサい……………
しかもハードボイルドのハの字もない……
だが俺に装備できるのはこの装備以外には
木の棒と錆びたナイフ位しかない。
どちらも大したプラス効果もない。
妥協するしかない。
俺は仕方なく剪定バサミを買う旨をおっさんに告げる。
「この剪定バサミをくれ」
「はいよ、その剪定バサミは0ゴールドだ、持って行きな、武器と防具はステータスで装備しなきゃ意味ないぜ」
俺はおっさんの忠告通りにステータスを開き装備欄から剪定バサミを装備した。
するとステータスの力の値が5ポイント増加した。
俺は他にも何かステータス欄で見落としている事がないか調べているとステータス欄のジョブの下に小さく下向きの矢印があるのを見つけた。
そこをタッチするといくつか文章が現れた。
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ジョブ特性
《対森林》
樹木が10本以上生えている場所で体力、力を二倍にする
《ミカンの加護》
柑橘類を食べると低確率でバットステータス解除また小回復
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ジョブ特性か……………
どんな能力にしろデメリットになる効果がないのはありがたい。
俺はジョブ特性の欄を読んだ後、防具を選び始める。
すると武器と同じくミカン農家専用の防具がウインドウに現れる。
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丈夫なツナギ
装備している場合守備にプラス10
軽い切り傷程度ならダメージを受けない
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ダセェ……………、ハンパなくダセェ!
よりにもよってツナギなのか………⁉︎
仮に俺がツナギを装備したとしよう。
周りの人間から見てどんな風に見える?
上下・・・・・ツナギ
武器・・・・・剪定バサミ
頭の上・・・・ソフト帽
なんだよコレ!
ダサいってレベルじゃねえ!
一歩譲ってツナギと剪定バサミはいい、俺のジョブはミカン農家だ、ここは譲ろう。
ハードボイルドではないが仕方がない。
生きる為だ。
だがソフト帽!!!テメーは何なんだよ!!!
この世界のどこにソフト帽被って農作業するミカン農家が居るんだよ!!!!!
「レイモンド!お前の形は変更できないのか⁉︎」
俺は店の中というのも忘れて大きな声でレイモンドに問いかける。
『できません』
『何か方法は?』
『ありません』
「本当に?」
『ありません』
「シット!!!!」
俺は昨日の俺に向かって悪態を吐く。
どうして俺はソフト帽なんて選んだんだ………⁉︎
俺は後悔しながら俺のジョブでも装備可能な防具を探していく。
当然装備可能なジョブを問わない防具はあまり良い能力ではないものばかりだ。
もう学ランのままでもいいかな…………。
と半ば諦めているとふと、ウインドウにこんな装備を見つけた。
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トレンチコート
装備をしている場合守備にプラス3
ただのトレンチコートのため斬撃に弱い
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…………………….、あるじゃないか、
ぴったりなのが。
俺は迷わずトレンチコートをおっさんから受け取るとすぐに装備して鏡の前に行く。
「フフッ」
思わず笑みが浮かんでしまう。
鏡の中に現れたのはいかにも探偵の様な格好をした男だ。
中に着ているのが学ランなのが玉に傷だがまあいい。
次の街か何処かでスーツを手に入れればいいのだ。
俺はしばらく鏡の前で俺が考えるハードボイルドっぽいポーズをいくつか堪能した後にトレンチコートのポケットに剪定バサミを入れて店を出る。
その後、そこらの露店でパンをいくつかもらいながら次にする事を決める。
「やはりレベル上げか…………」
これから先、どんなモンスターが現れるかわからない。
今の俺のスキルではゴブリン一匹倒せないだろう。
まずは最初のチュートリアルダンジョンに戻りMPの続く限りスライムを倒す。
そしてレベルを上げ、新たにスキルを身につけてから第二階層に進んだ方が良いだろう。
俺はそう考えてチュートリアルダンジョンへと足を運ぶ事にした。
時間はまだ正午くらいだ。
ダンジョンまではそこまで時間はかからない。
俺はダンジョンへ足を運ぶ。
ダンジョンについた俺を待ち構えていたのは、巨大なスライムの中でもがく、筋肉モリモリでフリフリのふくを着た…………
おっさんだった。