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第一階層、その一

あれは俺が6歳の時だ。

親父が居なくなる前俺を庭のミカンの木のところへ連れて行き俺にこう言った。


「コウ、この木は此処に家を建てるときに植えたんだ。

蜜柑の花言葉は親愛、家を離れていても家族への愛を忘れぬ様に植えたんだ。

お父さんは少し遠くへ行かなくてはならない。その間、この木を頼めるか?」


「うん!」






そして親父は帰って来なかった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「………………ハッ!」


危ない、あまりのショックに昔のことを思い出しちまった。

落ち着け、俺。

ハードボイルド、ハードボイルド。


「ステータス」


確認の為にもう一度ステータスを表示した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 井上 滉太


レベル 1


魔力20/20


スキルポイント 10


ジョブ ミカン農家


基本スキル


固有スキル

ミカン生成::古今東西ありとあらゆるミカン オレンジ と名のつく柑橘類を作り出すことができる消費MP1


ミカン加工::ミカン、オレンジと名のつく柑橘類を好きなように加工できる消費mp2


ミカン生産::ミカンの種を植え好きな大きさまで成長させることができる

1mにつき消費mp5 1本につき消費mp5



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ………」


思わずため息がもれる。

期待していた分だけ落差が激しかった。

しかし、ミカン農家ってなんだ?


もしかして10年欠かさず毎日庭のミカンの世話をしていたからなのか?


ハードボイルド小説を読み漁っていたことよりもミカンの世話の方が経験になっていたということなのか?


そんな事実に落胆しながらもステータスを眺めているとある事に気がついた。


「なあ、レイモンド、この世界がRPG 風の世界ならなんで筋力値とかHPとかがないんだ?」


『スキルが足りません』


成る程、詳しくステータスを知りたいならポイントを使えと。


そう思いステータス欄からスキル欄へとウインドウを変える。


すると多種多様なスキルがずらっとウインドウに表示された。




「レイモンド、スキルの検索は出来るのか?」


『初期の状態では検索ワードは二つまでです』


此処でもスキルか、よく考えてスキルは取得しなくては。


取り敢えず俺は【ステータス】と【詳しく】という単語で検索をかけた。


するとザッと10くらいまで候補を減らす事が出来た。



それは、表示、拡張検索、強化検索、ステータス拡張、予想、予見、予知、直感、鑑定、説明、のスキルだ。



それぞれ必要ポイントは5、20、30、3、10、100、10000、1、5000、5だった。



まずはポイント10以下のスキルを考えよう。


ステータス拡張、これはそのままステータスの機能を拡張すると考えていい。

おそらく体力などの隠しステータスも見る事が出来るだろう。

デメリットは取得したスキル以外のスキルの内容がわからないということか。


次に表示、これはおそらく鑑定の下位互換だ。ならばスキルを取得せずともこの検索画面から表示スキルを使えばいい。

デメリットは《何を》表示するか細かく指定しなくてはならないかもしれない、ということか。


次に予想と直感、これはダメだ。予想は今もできているし直感は戦闘では役に立つかもしれないがステータスというRPGでは大切のファクターではギャンブルのような事はしたくない。


次に説明、これは取得していいかもしれない。レイモンドは此処までの事から推測するに聞かれた事にしか答えてくれない。

ならば貴重なポイントを使ってでも《説明》というこの世界の説明書を得るのは良いかもしれない。


(あれ?俺、すごく冷静じゃないか?

ハードでボイルドじゃないか?)


そう思いながら《説明》のスキルの取得をタッチしようとすると頭にかぶせておいたレイモンドの渋い声が頭に響く。


『敵が接近しています』


その声が頭に響いた瞬間、


ネチョ………ネチョ………という音が背後からした。



ダンジョンの中は薄暗くよく見えない。

誰かの血の音か………?と戦々恐々としながら目を凝らして近づいてくるものを観察する。













スライムだ。










あの風貌はステレオタイプのスライムだ。


「なんだ、スライムか。」


俺は敵がスライムである事に安堵していた。

某クエストでは序盤の雑魚敵だ。

おおがらすやア◯ミラージならまだしもスライムならば素手でも行けるはずだ。




「いくぞ!」


俺は頭の上のレイモンドにそう言うと先手必勝とばかりに走ってスライムに走り出した。


「はぁっ!」


気合いを入れて右ストレートをスライムに叩き込む。


するとスライムは俺の右手を体の中に入れたまま少しづつ粘度を上げていった。


「くっ………、このまま俺の右手を溶かす気なのか⁉︎」


俺は渾身の力で右手を振り回し、脱出する事に成功した。


「レイモンド!マップとかは表示出来ないのか?」


『スキルが足りません』


「クソっ!」


そう言うと俺はスライムとは反対方向へと駆け出した。


そのまま分かれ道もなく走っているとレイモンドの声が頭に響く。


『敵が接近しています』



前を見るとそこにはもう一体と思しきスライムがいた。


幸いスピードはあまり高くないがこのままでは五分と経たない内に二匹のスライムによって全身が包まれてしまう。



「どうする………」


焦る気持ちを抑えながら対抗策を考える。




今の自分にあるもの、スキル、10ポイントのスキルポイント、スライム、粘性があがる…………………








二分ほど考えると一つ方法が浮かんだ。


成功するかはわからない、だがもしあいつらが俺が知っている、元の世界で触れた事のあるスライムなら………⁉︎


俺はその方法にかける事にした。



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