スキルとジョブ
「寒いな…」
取り敢えず俺は立ち上がると自分の格好を確かめた。
学校の制服である学ランにベルトそして運動靴、それ以外には何もなし。
体に怪我もない。
(あの不定形が言うことにはナビがいるはずだ…)
そう考え周りを探してみると足元に小さな不定形がウネウネしていた。
俺は取り敢えずそのミニ不定形を観察していると頭の中にこえが響いてきた。
『形状を設定してください』
「形状…?」
『形状を設定してください。』
成る程、形をある程度決められるのか。
俺は迷わずにこう答えた。
「ソフト帽で」
『宜しいですか』
最終確認か、まあいい、ハードボイルドと言えばよくドラマにも出てくるあの帽子だ。
形からハードボイルドボイルドに入っていこう。
「ああ」
俺がそう答えるとミニ不定形はグニャグニャと形を変えて、渋い感じのソフト帽に変化した。
『名前を設定してください』
名前か…ハードボイルドと言えば…そうだなこれがいい。
「レイモンド」
有名なハードボイルドの作家だ。
親父の形見のなかにもこの人の作品があった。
『了解しました これより本ナビの名称はレイモンドです。レイモンドとお呼びください。』
なんだがとても渋い声が頭に響く。
この帽子、俺よりハードボイルドっぽいじゃねえか…。
「レイモンド、先ずはここはどこなんだ?」
『ここは所謂、ダンジョン、というところです。』
「ダンジョン?」
『はい。計100階層ありここはその最も地下の第一階層です。』
「100階層か…」
レイモンドに対して冷静に対応しているが
内心俺は冷や汗ダラダラだった。
ダンジョンと言ってもせいぜい5階層くらいだと思っていたのだ。
しかも俺はダンジョン物のゲームはあまりやったことがなく、唯一やったことがあるシレソの不可思議なダンジョンでは最高33階層までしか行ったことがないのだ。
「レイモンド、何か装備はないのか?」
俺はRPGの基本を思い出す。
どんなゲームでもどうのつるぎくらいは最初に貰えるはずだ。装備を整えれば100階層までいけないこともない……はずだ。
『ありません』
「はい?」
『ありません』
ハードボイルドを忘れて泣きそうになった。
最高33階層というのは装備持ち込みでの結果なのだ。
裸でダンジョンに入ったのは最初の一回だけだ。
俺の人生はここまでなのか……。
せめてハードボイルドに死にたかった……。
『ですがスキルはあります』
なんと!少し希望が見えてきた!
「どんなスキルなんだ!教えてくれ!」
俺はスキルという響きに興奮してまさにハードボイルド(笑)と言った状態でレイモンドに掴みかかる。
『では説明をします』
レイモンド曰く、スキルには2つの種類があるらしい。
一つ目は基本スキル、何か物体に性質を付与させるというものらしい。
例えば《火》に《直進》のスキルを付けると火が真っ直ぐ飛んでいき、
《自分》に《増強》のスキルを付けると身体能力が上がるといった具合らしい。
だがこの基本スキルは戦闘による経験を積み、自分のレベルといった物を上げてその際に手に入るスキルポイントを使わなければ手に入らないらしい。
しかも《爆発》や《増強》といった協力なスキルは大量にスキルポイントを使わなくては手に入らない。
もう一つが固有スキルだ。
これは個人個人が持っている《ジョブ》によって変化する物でどんなスキルが得られるのかが決まるらしい。
ジョブは元の世界でしてきた事で決まるらしい。
元の世界では俺は親父が居なくなった10年前からハードボイルド小説を読み、出来るだけハードボイルドに振る舞ってきた。
当然、ジョブもハードボイルドな刑事や探偵になるはずだ。
異世界で、という条件付きだが憧れの職業につけるという事で俺の異世界生活に一筋の光が射した。
「レイモンド、どうやってジョブを調べるんだ?」
『ステータス、と言えばウインドウが開きます』
俺は胸に期待を込め言う。
『ステータス!』
俺の前に半透明のウインドウが現れる。
名前 井上 滉太
レベル 1
魔力20/20
スキルポイント 10
ジョブ ミカン農家
基本スキル
固有スキル
ミカン生成::古今東西ありとあらゆるミカン オレンジ と名のつく柑橘類を作り出すことができる消費MP1
ミカン加工::ミカン、オレンジと名のつく柑橘類を好きなように加工できる消費mp2
ミカン生産::ミカンの種を植え好きな大きさまで成長させることができる
1mにつき消費mp5 1本につき消費mp5
ミカン農家とソフト帽のダンジョンアタックが始まった。
なんでもいいので感想頂けたら嬉しいです
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