レベリングの結果
「マリーベルさん!」
俺がそう言うとマリーベルさんの棍棒が、ゴウッ、という風邪を切る音を出しながらスライムに向かって振り下ろされる。
さすが前衛職と言うべきか、マリーベルさんの棍棒を食らったスライムは勢いよく四散する。
俺は間髪入れずにスキルを使う。
「レイモンド!《オレンジ・シャワー》
レディー!」
『ラジャー』
そう言うと予め決めておいた《ミカン生成》のスキルと《ミカン加工》のスキルが発動する。
俺の右手のひらから勢いよくオレンジ色の果汁が四散したスライムに向かって放出される。
とびきり酸味の強いオレンジの果汁を浴びたスライムはすぐに液体になる。
「スライム、20体目撃破確認………、
マリーベルさん、今日はもう上がりにしましょう」
俺がそう言うとマリーベルさんはある提案をしてきた。
「ねえ、ボウヤ、もうそろそろ次の階層にいっても大丈夫なんじゃないの?」
「ええ、俺もそのつもりです、明日からは第二階層に挑戦しましょう」
俺はその提案に賛成するとマリーベルさんとともに最初の街へと帰り始める。
俺とマリーベルさんがコンビを組んでから既に10日が経過した。
マリーベルさんの固有スキルの様子を見たりどの基本スキルを取得するかなどの話し合いをしながらこの10日間はスライムを屠り続けてきた。
既にスライムに対してならばマリーベルさん一人でも十分対応可能だ。
10日間で俺のステータスはこのようになった。
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名前 井上 滉太
レベル 10
HP100/100
魔力 245/245
力 15
守備 12
体力 20
知力 35
素早さ 17
幸運 27
スキルポイント 10
ジョブ ミカン農家
基本スキル
説明
ステータス拡張
HP表示
直進 レベル2
物体を直進させることが可能
速度はMP1消費する毎に秒速10メートルずつ増加する
硬化 レベル2
物体を硬化することが可能
現在の硬度は銅板0.5センチメートル程度
消費MP10
破裂 レベル1
物体に刺激を与えると破裂する性質を付与する
レベルが上がると威力が増加する
消費MP5
発光 レベル3
物体を発光させることが出来る
消費MP30
固有スキル
ミカン生成::古今東西ありとあらゆるミカン オレンジ と名のつく柑橘類を作り出すことができる
消費MP1
レベル6
ミカン加工::ミカン、オレンジと名のつく柑橘類を好きなように加工できる
現在、液体化、サイズ10倍化、が可能
消費mp2
レベル4
ミカン生産::ミカンの種を植え好きな大きさまで成長させることができる
1mにつき消費mp5 1本につき消費mp5
レベル3
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新たに直進、硬化、破裂、発光のスキルを取得した。
必要スキルポイントはそれぞれ、10、15、25、15だった。
俺とマリーベルさんで考えた結果、このようになった。
このチョイスには俺たちなりの考えがある。
次にマリーベルさんのステータスだ。
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名前 斉藤 源五郎
レベル 7
魔力 104/104
力 51
守備 23
体力 17
知力 15
素早さ 19
幸運 8
スキルポイント 0
ジョブ ゴリラ
基本スキル
ステータス拡張
体力強化 レベル1
体力にプラス5する
知力強化 レベル1
知力にプラス5
跳躍 レベル1
ジャンプしたときに飛ぶ高さを5メートル増加する
固有スキル
《ゴリラ化》
力を一定時間5倍にする代わりに知性を5分の一にする
姿はゴリラになる
1秒につきMP5消費
《バナナブースト》
バナナを食べると三十秒間全パラメータ二倍
その後一分間全パラメータ二分の一
クーリングタイムは10分
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マリーベルさんには体力強化、知力強化、跳躍のスキルを取ってもらった。
必要スキルポイントはそれぞれ、30、30、10だった。
なぜ体力と知力を強化するのか、それはレベリングを始めた最初の日のことだ。
俺はチュートリアルダンジョンにつくとマリーベルさんに《ゴリラ化》の使い勝手が知りたい旨を伝え、《ゴリラ化》を使ってもらった。
するとゴリラになったかと思うと俺の方へといきなりハグしてきたのだ。
MPが切れるまでの2秒間だけだったが俺のHPは半分以上削れていた。
元の姿になるとマリーベルさんはすぐに謝ってきた。
俺がゴリラになった時のことを聞いてみるとなんと本能で動いていたらしい。
おそらく知力が足りなかったのだ。
ただでさえ低いマリーベルさんの知力はゴリラになると5分の1になる。
これではまともに戦えない。
ということでなんとかゴリラ状態を使えるようにするために知力を強化することになったのだ。
ついでにパラメータの低い体力も強化することにした。
今のところ前衛はマリーベルさんだけだ。
戦闘時間が長くなるのは必然的なので体力の強化は必須だった。
跳躍はゴリラになった時のためのスキルだ。
移動の為のスキルは他にもあったのだが必要スキルポイントが3桁代のものばかりだった為、必要スキルポイントが低い跳躍で代用することにした。
さらに大きな発見が一つあった。
短縮詠唱の存在だ。
スライム狩りをして何日かたつとスキルをいちいち唱えるのがめんどくさくなってきた。
そこで何か良い方法がないかレイモンドに尋ねてみると、ナビに予めスキルの組み合わせを教えておき、特定のワードで一気にスキルを使うという所謂、ショートカットのようなことができるらしい。
これによって効率良く戦闘をすることができるようになった。
俺とマリーベルさんは街につくともう既に日が落ちておりかなり暗くなっていた。
第二階層へ行く準備は明日することにして宿屋近くのレストランで夕飯を食べ、すぐに眠ることにした。
次の日、俺たちはマップで道具屋の場所を調べ行くことにする。
本格的にダンジョン探索をする為には色々と物資が入り用となる。
それらの物を運ぶ為のリュックのような物を得る為だ。
俺とマリーベルさんはマップを見ながら進んでいく。
最短距離で道具屋に行く為に路地裏を進む。
この街には飛ばされてきた人間以外はNPCしかいない。
なので余計なトラブルなく道具屋に行くことができるはずだ。
「ねえ、ボウヤ、あれを見て」
マリーベルさんが路地裏にひっそりとある横道の方を指差す。
マリーベルさんが指差した方を見てみると四人くらいの若い男女がひとりの女の子を取り囲んできた。
あれは明らかにNPCではない。
元の世界なら警察を呼んで終わりだが、
この世界に警察のような存在がいるとは考えにくい。
「マリーベルさん、行きましょう」
俺はそう言って男女の方へと向かう。
「ねえ、ボウヤ、一つ聞いていい?」
「何ですか?」
「なんでトラブルに首を突っ込むようなことをするの?」
俺は少し考えてこう言った。
「…………ハードボイルドじゃないですから」
「ふうん…………」
マリーベルさんはそう言うと俺についてくる。
マリーベルさんもなんだかんだいってほっとけないらしい。
俺はマリーベルさんとともに若い男女の方へ進んでいった。