3話 神々の思惑
この話にあわせて2話のステータス部を少し改変しました
夢を見ていた。
なぜかこれが夢であると理解できる。
なのに動くことも言葉を発することも出来ず、ただ見ていることしか出来なかった。
「さて、何とか残っている魂と霊体、肉体の一部の保護は目処が立ちました。
肉体は魂を失ってすでに消滅、いえ正しくは焼失ね。」
「……」
「あら?もう意識が…聞こえるかしら?」
「…?」
「貴方は召喚の際、予期せぬ事故にあったの……」
『この夢は…そうか初めて精霊神フレイティアルと話したときの夢か。
だがなぜ人物像が見える?あの時は自分の姿すら見えなかったのに』
場面が変わり数人の人物が見える。
淡々と目の前に見える人物達の考えが伝わってくる。
――召喚魔法とは、かつて栄えた大国によって研究開発された魔法
無理やり世界を繋ぎ、そこにいる人物をさらってくる魔法
発動に多くの命を生贄に捧げ、多くの失敗の元完成された忌むべき魔法
今世界にある召喚魔法は神によって改変された全く別の魔法
開発した国は召喚魔法が元で滅びるも、その時代にあった魔法は語り継がれる
完全に消してしまうと逆に同じような魔法を作り出そうとする国が出てきてしまう
そうなる前に御伽噺、伝説、歴史や魔法そのものを改変する。
異世界に穴を開ける、ここは一緒。
対象とした人物をスキャン、肉体、記憶、精神、魂までもデータとし、こちらにコピーする。
コピーしたデータからこちらの世界で肉体、記憶、精神、魂を構築する、この際に精霊、こちらの知識を封入。
物体ではなく情報をコピーすることにより必要な魔力を減らす、さらにコピーした情報と戻すため異世界にマーキングを打ち込み時間を固定する。
これにより召喚条件を満たした場合、帰還を望めば保存した情報との差異から増えた部分、スキル等を抜き出し、肉体等重なった部分は魔力に変換する。
変換した魔力を使いマーキングした時間に情報を送り出し、本体に追加、書き換える。
本人からは召喚され、異世界を堪能し、無事にもとの世界、時間に戻ってきたように感じる。
もし条件を満たせず死んだとしても本体には影響は無い。返すべきデータも無く、本体はそのまま何事も無く生き続ける。いや異変《召喚》すら感知できない。
こちらに残ると決意しても同じ、魔法陣に保存されている情報を消しさればいい。
召喚に必要な魔力も魔法陣に数年単位で収集させればいい、故意に召喚されたものを殺し再度召喚するような事態も防げる。
もっとも魔法陣には監視のため精霊を付けるので悪質ならば、陣を破壊すればいい。神から授けられた魔法陣を誤った使い方をしたとして。
以上が神から見た召喚魔法の意とするものである。
そして地上に残された魔法陣は5つここまで減るのに長い時間がかかったが、このままいけば失われた魔法、神から託されていた魔法としてこの世界から消すことが出来る。
再度開発しようにも魔法陣はわざと残すのでこれを基にした研究しか出来ないだろう。
内容を調べ、魔力を流し、反応を見ても、それだけでは足りない。精霊を監視に付けるのは、精霊自身を魔法陣の一部とするため。表面だけを調べても無意味。ゆえに消えていく魔法に出来る。
ただひとつ間違いがあるとすれば――
唐突に場面が変わる。
そこに立ってていたのはフードを被った一人の男性だった。
眼下に広がるのは荒れ狂う海、ひび割れ砕け散る大地、吹き止まぬ嵐
――人類は思った以上に愚かだったようだ。
多種族を排し、同族同士で殺し合い、自然と精霊を消し、世界を崩す。
神話にあったように自分に似せて作ったのがいけなかったのだろうか。確かに元の世界では救いようが無かったが、積み重なった歴史や宗教も問題だと思っていた。発達しすぎた科学が神秘をかき消したことが間違っていたとも。
やはり人類には監視が必要だ。光と闇と空間、大地と水と木、太陽の火に月の輝き星の瞬き、これら始まりの精霊を神とし、世界を監視させる。八百万の神を精霊とし世界の守護を。
あぁ神よ、貴方もこのように感じていたのだろうか。私も貴方と同じように――
さらに場面が変わる。
ただ他の場面と違い古い図書館のようにも見える、見上げれば本棚が延々と続き、後ろを見ると限りなく本棚が続く、視線を前に戻すとドアの無い部屋があり、中には女性が一人椅子に座って読書をしている。
ふとスカルは自分が動けていることに気がついた。
「あら、久しぶりですね、骨の人」
「貴方は……」
「お忘れかしら?まぁ1度しか会ってないものね、その時は姿も見えなかったでしょうし。
私は夢をつかさどる精霊王ノレリア」
スカルに椅子を勧めながら続ける。
「その体きちんと動いてるようで嬉しいわ」
「動かない可能性も有ったのですか?」
「可能性といても少しだけ。それより骨の人ステータスを出して見てください」
名前:スカル
称号:召喚されし勇者、眠り人、世界の真理を垣間見たもの、火の精霊王の加護
職業:なし
種族:人
状態:精神不安定(微)
攻撃力:10
防御力:10
魔法力:10
スキル:不壊、骨、属性「火」
「内容がいくつか変わっている?」
「やはりですか…先ほどまで見ていたものが何か分かりますか?
あれは世界の記憶です、過去にあったこと、世界が見て聞いて感じたことなのです」
「変わることの無い世界の軌跡……(やべ、中2った)」
「増えてしまった称号は私が隠しておきましょう、そうすれば同じ精霊神以外には分からなくなります」
「ありがとうございます(流してくれて)」
この後、体の説明を聞かされる。
微精霊、人の認知できないほど、微細な精霊。属性に染まることがなく。
数千、数万と集まり人として動けるように、内臓や筋肉の代わりになっている。
各部位に固定されているが、精霊は普通の人には見えないため骨のままである。
もし精霊が欠けても、空気中の微精霊を取り込み、特性を周りの微精霊から複写することで補充すると。
「滑らかに動けるのは、軟骨の性質を持った微精霊で間接を覆い、人の筋肉と同じ配置で筋肉の役割を持った美精霊が骨をつなぎ、神経の変わりに霊体が肉体に指令を出しているから」
説明を聞きながら、手を閉じたり開いたりする。召喚前の世界のゲームでのスケルトンと違いカタカタ骨同士がぶつかる音も無くスムーズに動いている。
「食べたものは精霊がエネルギーに変換し取り込まれるから、特に気にせず食べてもいいわ。ただ魔法だけは気をつけなさい。種類によっては精霊が削れるから」
ポーション等の回復薬は普通の食事に比べ多くの魔力を含むので、魔法の攻撃を受けたらそれらの薬品を使って回復すれば早いと説明を受ける。
暫らく色々な説明を聞いていると急にあたりが暗くなり始める。
「そろそろ貴方の目が覚めそうね」
「色々とありがとうございました」
「本当なら2~3回、勉強会が出来てその時に話すと思っていたんだけどね。何かに影響を受けたのか急に覚醒したからフレイティアルかなり慌ててたわよ。あと一度は王都の神殿に行きなさい貴方の召喚陣のリセットが必要だから」
残念ながら今の精神では記憶を戻せないと言われる。
先ほどの見たものが事実ならば、向こうではこちらと関係なく普通の人生を送っているはずなので、帰れないことに問題は無い。
「分かりました、よろしくお伝えください」
そういうとスカルの意識は暗闇に飲まれるようにその場から消えていった。
「ふぅ、聞き分けのいい子で助かったわ。
後はフレイティアルに連絡と……」
「レノリア、ありがとねー」
連絡するまでも無くその場にフレイティアルが現れる。
「いいけど、何であの骨の人、記憶が抜け落ちてるの?」
「それはね、肉体に保存されてる分が丸々無いからなの」
記憶は脳、霊体、肉体に保存されるが、スカルはそのうち脳と肉体のほとんどが無い。
霊体と骨に残った記憶が統合され、思い出せないことは気にしないように誘導されている。
ちなみに誘導は本人の了承済みで、誘導がないと自己崩壊になるかもと伝えてあった。
「なるほどね、じゃあ……」
「ちなみに……」
後には精霊神二人の会話が部屋に響いていた。
今回は世界の神話?と召喚に関することですね
この世界の神は滅びた地球出身という設定です
歴史学者で各地の神話の同一性から歴史を紐解いていく系の人
なのでちょっと聖書から天地創造とノアの箱舟をお借りしました
バベルの塔が無いため言語は統一のままとかネタに走っています
個人的に聖書あんまり好きじゃないんですよね、ネタにはなるけど
そして私はキリスト教でもない