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召喚された者達の狂想曲  作者: 山トマト
冒険者を始めよう
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プロローグ2(改)

11/30 会話と文章の修正と追加


魔王様涙目

 その日の王国は朝から雨が降っていた。

 雨雲のせいで少し薄暗く、降りしきる雨のため大通りを歩く人の姿も少ない。

 雨風のため鎧戸を閉めている家屋がほとんどだし、窓ガラスは貴族の家にしか普及していないので外をうかがい知ることもない。

 ガラスが普及していないのは別に窓ガラスが高いわけではない、取り替えるなら窓枠からの交換が必要になる。

 そして、ちょっと強い風が吹いて窓が閉まると、衝撃で割れることが多い。

 交換には窓をはずしてからの取替えとなると手間も時間もかかる。

 さらに大昔の勇者の作ったとされるランプが効率がよすぎた。

 ランプ本体と魔石さえ用意できれば何十年も使えるし、魔石の魔力は町のあちこちにある補充所で無料で補充できる。

 火を使わないので空気も汚れないので窓を頻繁に開けなくてもよい、もちろん天気のいい日は窓を開け風を通したりもする。

 そんな町並みが一般的な王国では、窓ガラスが流行るはずもなく使われるのは王宮、神殿、貴族の家それと商店ぐらいであった。


 雨は降り、人通りも少なく、戸は閉められ、そんな状態の町でそれは始まった。


 まず雨雲より黒い雲が空に広がった。が、すでに薄暗いので誰も気がつかない。


 次に雷鳴が鳴り響く。が、やはり雨のせいで天気が悪くなった程度にしか思われない。


 最後に空に大きな人の姿が浮かび上がった。その人物は美しい女性で、角が生えていて、黒いドレスの上に黒い光沢の鎧を着ていた。


「私はこのたび新たな魔王に就任した鬼神ミカゲである!王国の諸君よ心して聞け」


 空に浮かび上がった女性は魔王と名乗るが、その声は土砂降りの雨音にかき消され民衆に聞かれることはなかった。




 はっきり言ってタイミングが悪すぎたのである。




 魔王は横にチラチラ視線を送りながら、そこにいるであろう人物に話しかける。


「……ちょっと、爺。何の反応もないんやけど、壊れてないよなコレ……この魔法具、双方向って言っとったよな。相手の声も聞こえるっちゅーて」


「さようでございます、魔王様。

 この魔法具「放送室(世界征服宣言室)」は広範囲に映像、音声を伝え、その反応を観察することの出来る魔王城の機能の1つでございます。

 効果範囲といたしましては、大陸全土、国、都市、建物、一室まで柔軟に対応し。先ほどのような雲や雷鳴等の演出も多種多様にございます。」


 爺と呼ばれた人物が映像に表れながら説明を続ける。

 その姿は人の形をした薄い青色のスライムであった。


「少し失礼します。……魔法具に誤作動はありません、ただ王都()雨が降っているようですね」


「え?あ、雨?」


 スライムは映像範囲外に手をかざし何かを操作しているようだ。


「はい、映像をよくご覧ください。王都の大通りは人影も少なく、あっても傘を差していますので、上方の我々に気がつかないかと」


「えーなんなんよ、それ。せっかく格好よく見せようおもたのにぃー」


 魔王は気づかれていないことにがっかりしながら、映像外から椅子を引っ張ってきて腰掛ける。


「どっこらしょっと……で、どーすんべ。とりあえず弱み見せれんさかい格好良く登場したろ思たけど」


「はい、現状を改善するには各国の勇者を利用するのが一番かと」


『ブフッ(笑うでない、魔王に気づかれるぞ)(申し訳ございません国王)』


 かすかに誰かが噴出したかのような音が聞こえたが気のせいと魔王は切り捨てた。


「なんか聞こえたような……まぁいいか。

 とりあえず現状の確認もっかいやっとくで。

 現在地は元魔王の山の上、湖のど真ん中、孤立無援で食糧難の魔王城や。この地形何つったかな」


「カルデラ湖でございます。

 外輪山までの距離は測定できておりませんが、魔王様の魔力では飛行魔法でも届かないかと。

 さらに湖の水がすべて水スライムですので途中で下に降りることも出来ません。

 スライム自体は魔王様に忠誠を誓っておりますので、魔王様が溶かされることはありませんが」


「服とか溶かされて、まっぱで外出れるかいな。山から下りれてもその外は深遠の森、魔獣も居って近くの街の方向もわからんとこで裸とか……」


 魔王は椅子に座ったままガックリとうなだれる。

 爺はティーセットの乗った台車を、映像外の者から受け取ってお茶を入れている。


「船作ろう思うても木がないし造れへん。

 筏くらいなら作れるかもやけど操船できひんし。

 庭園の果樹はうちの生命線や、絶対切れへんし数も足らん」


「水スライムも性質、いえ本能的に色々溶かしてしまいますので。

 本来の体長は2~10cmで、普段は湖の底にほんの少数おり、沈んできたものを長い時間をかけてゆっくり溶かしていきます。

 王国では王族貴族が観賞魚の水槽で水質管理用に飼われているとか、コケやぬめりなどや食べ残しのエサの掃除も彼らの仕事です。

 どうぞ、紅茶です」


 ズー

 魔王は紅茶を受け取り、すするように飲んでいた


「最初の作戦は。勇者迎えによんで、気ぃ入れて泳いでいって、外輪山で合流、助けてもらう、やったな」


「水スライムのせいで溺れかけ、服も溶かされましたな」


 見た目普通の湖に見えたため、魔王は泳いでみようかと飛び込んでいた。

 透き通って綺麗な水に見えていてもスライムだったため服は溶かされてしまう。

 本来はそこまで簡単に溶解しないが湖全体がスライムのため溶かす力が強くなってしまっている。

 魔王の体が溶かされていなのは、それは魔力が肉体を保護、強化していたためであり、普通の動物だと服と同じように溶けてしまうだろう。


「次は飛行魔法」


「ためしにと城の周りを飛んでいて魔力切れ、湖に落下し、また服を溶かされましたな」


「この辺で自力では無理、詰んだ思うて城まで勇者任せにしよってなって……」


「何をどう拗らせたのか、あの放送ですからね。あれなら素直に救援を頼んだほうがよろしかったのでは?」


「あぅーやめてやー今思うたら恥ずかしすぎる。

 つーかあんたもお遊び入ってたやんか、「我輩は魔王である」とかの台詞」


「最近エルフの国で流行っていた、小説の出だしをお借りしたのですが変でしたかね?」


「あんたほんまにスライムかいな……わてより頭いいとか。

 あ、メイドスライムのえーさん、鎧脱ぐの手伝ってや」


「…」


 無言で、メイド服を着た薄いピンクの人型スライムが鎧を脱ぐのを手伝っている。

 硬い結び目を解く様子からは、かなり器用に見える。


「会話できればいいんやけどなー」


「彼女等はその機能はございません、わたくしを通じての会話のみとなります。

 進化すれば会話できますが、その場合料理等のスキルが消えますので」


「料理なんてできんわ、お腹すいたからご飯にしよか」


「それでしたら『びー』か『しー』が準備中かと」


「肉食いたいなー、牛や豚とまで贅沢言わん、せめて鳥か魚が…」


 鎧を脱ぎ終え椅子から立ち上がった魔王は爺と呼ばれたスライムを引きつれ部屋を出て行った。


『(ここまでの会話からするに危険性は低いかと)

(そうじゃの次の4ヶ国議会での題材とするか)』


 キィー、パタン

 扉の閉まる音とともに魔王の会話が聞こえにくくなる


「ちなみに魔王様?」


「何や?」


「部屋を出るまで映像が繋がったままでしたが、よろしかったのですか?」


「げっ、マジで?」


「さらに言うと、王都は雨ですが開拓村は晴れております」


「うそやろ……つまり最初から……あかん、はずかしゅーてもう表歩けへん……」


 廊下を歩いているのか魔王の声は遠ざかっていった。


『これは、次の放送とやらは当分なさそうじゃの』

『仕方ないかと』


 しばらくして、先ほどえーさんと呼ばれたスライムが装置を止めに来るまで、王国の空には黒い雲が浮かび上がったままだった。





 前回と同じ白い空間で女性と男性の会話が聞こえる、壁一面に映し出された映像を一緒に見ているようだ。


「精霊神様、何かなこれは?」


「今代の魔王、あの子お笑い目指したら良いと思うの」


「ノーコメントで」


「さてと魔王ちゃんの面白動画のせいで時間とったから精霊の階位は簡単に説明するね」


 動画を写していた画面が消え、代わりにホワイトボードが現れる。

 ボードに付属していたペンがふわりと浮き上がり文字を書き始める。


「まず上から創造神、精霊神、精霊王、上位精霊、中位精霊、下位精霊、微精霊と並んでいます。

 精霊じゃないけど創造神は世界を作った神様ね。で、次の精霊神は私達、基本大陸ごとに一人で大陸の管理者。

 精霊王は大陸に属性ごとに存在する私達の部下。上中下の精霊は意識を持った精霊。

 微精霊は意識のない精霊で、大陸に存在しない場所はないわ、魔力素とも言われてるし」


 精霊神の言葉に合わせ、ペンが高速で文字を書き綴っていく。

 創造神を頂点としたピラミッドも開いたスペースに書き込まれていた。


「えらく急いでますね」


「ごめんね、この後用事があるのよ。

 えーっと、どこまで話したかなっと…よし。

 後は人口精霊ってのがあるんだけど、これは人の数だけ存在する精霊で、人の作った精霊って事じゃないの」


 わざわざボードに人工精霊と書き二重線で訂正し人口精霊と書き込む。


「話が変わるけど「ステータス表示」ってどう思う?

 自分の能力、スキル、称号や職業なんかの表示機能……」


「ふむ……世界に法則として組み込まれているのではないのかね?」


「世界が出来たときはそうしてたんだけどね、ある時一ヶ所で大人数が一斉に表示させるとその場所の魔力濃度が一瞬0になったの。

 原因は表示させるのに魔力を使いすぎたからで、なぜ使いすぎたかというと、表示させるための手順が多かったの」


 ボードに文字を書きながら話し続ける


 ステータス表示→ステータスを世界が本人から引き出す→世界が表示できない内容をチェック→

 使っている種族、言語をチェック→表示するために言語の変換→表示→本人が消すまで世界が維持


「と、まぁこの工程すべてに魔力が使われてたの。

 毎回これじゃ効率が悪いとなって、今の人口精霊方式に切りかえたってわけ」


 ステータス表示→体内の人口精霊がデータを選択し抽出→精霊が表示→精霊が表示を維持


「ちなみに何で言語変換がないかというと、人口精霊が統一言語を使ってるからなの。

 たとえば子供は親の会話から言葉を覚えるけど、親のいない捨て子とかも共通語を話せるのや、獣人で系統ごとに言葉が違っても会話が通じるのは人口精霊(これ)のおかげ」


 もちろん読み書きは種族言語と共通の二つとも覚える必要があるんだけど、と続ける。


「なるほど」


「後は『魔獣かどうかを瞳の奥を見て判断する』って言い伝えもこれに関係してて、魔力を透して相手の瞳を見ると青い光が見えるの。

 だから一般的な魔獣はいいけど、森の奥とかで見つけた新種の魔獣はこれでチェックするの。

 ただ、まだ人類認定されてない獣人もいたりするから、相手の動向はよく確認したほうがいいわ」


 ちなみにコボルトは獣人のコボルトとモンスターのコボルトの2種類いるため必ず眼を見て確認する必要があったりする。


「たしか何回か前の勉強会で聞いたな、ラミア種やアラクネ種だったかな。

 上位精霊により発見され経過を観察、獣人種と認められたと。

 さらに精霊を埋め込み相互理解できるようにし、性格も人類に対する敵対心を軽減させたと。

 埋め込まれたのはこの精霊だったのか」


「そうよ。

 っと、ごめんなさいね時間だわ」


「そうか用事なら仕方ないしな」


「宿題として魔王と一緒にいたスライム、あれも人類種に加えれるかどうか貴方なりに考えてみて、次のときに発表ね。

 じゃ、またね」


「また、とんでもない宿題を……」


 そう言いながら二人は空間を離れていく、そして誰も居なくなった空間は闇に包まれた。

魔王様は残念系です。

黙って立ってれば綺麗系ですが



キャラ情報

名前:爺

種族:バトラースライム(パペットスライムの亜種)

スキル:執事 Lv5

    会話 Lv8

    情報統括 Lv4

    理性 Lv5

    知性 Lv5


見た目はスライムで出来た顔のないマネキン。

ほかのスライムと違い形がほぼ固定で溶かす能力もほとんどない。

スライム同士が持っている情報伝達能力を使っての情報収集が得意。

ほかのスライムは情報を生かしきる知性がないため彼のみの能力といってもいいほどである。


一言

「キングスライム?あぁ知性も理性もない

ただ集まり固まっただけの群生馬鹿のことですか

キングサイズスライムに名前変えればいいのに」

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