(136)【1】夢(8)
初代女王として君臨し、二十代半ばで突如途絶えるところまでのソフィア・リア・メルギゾークの記憶を、ユリシスはかいつまむように見ることになった。
長いとは言えない一生の中、ソフィアはよく回想していた。
彼女が村をよく離れるようになるのは七歳の頃だった。それ以前を──。
四歳で母を亡くし、同時に姉シーラとともに魔力覚醒。
ソフィアはまごうことなき天才児だった。
天性の才と無意識の努力がその齢にして魔力をよく制御させたが、シーラは度々暴走──……その頃の家を五度も火事で焼いた。すぐにシーラは母恋しさか、寂しさが募ると魔力を暴走させるとわかった。
ただでさえ離れない双子が文字通りぴったり寄り添って生きるようになる。
一日の大半を眠るシーラは目覚めると妹を呼ぶ。シーラの眠りが深いと遠く出かけるソフィアだったが、そのささやかな声を精霊の力を借りて聞き逃さず、必ず姉の元に戻った。
しかし、生まれてから元気一杯だったソフィアに対し、母に似て病がちで一年の大半をベッドで過ごすシーラとでは──幼い日から薬漬けのシーラとは、性格や価値観のスレ違いを頻繁におこすようになる。
ほとんど窓からの風景しか知らぬシーラはシーラで、また早世した母と姉シーラの命を吸い上げているのだと揶揄される精霊の愛し子たるソフィアもソフィアで、どちらがと言えぬ苦痛の多い幼少期を過ごした。
やがて、ソフィアは育ての親である祖父と約束を交わす。十歳の時だ。
二年で魔術魔力を使いこなし、五年でメイデン国を打ち建てると──そうすれば、帝国の圧政と彼らが九割税金で持っていくという高い高いシーラの薬もとても安く手に入れられる。
ソフィア十歳の野望だ。
──しかし、二年目の約束の日にシーラは売られるように嫁にいった。十二歳の花嫁として。
ソフィアの野望の根幹、姉シーラを救うという夢は一旦、崩れる。
結局、十三歳まで農村メイデンで魔力を封じられた後、脱出。うっぷんを晴らすかのように快進撃をくり返し、並み居る敵をその強大な力でなぎ倒した。
一人で何千何万何十万の命を奪い尽くす。
──その殺伐とした記憶を、ユリシスはついに号泣する思いで眺めることになった。
世界がもう、違う。
自分もそれなりに大変な思いをし、試験に受からなくて苦労をし、ギルバートを救えず悲しみに暮れた。それでも、ずっときのこ亭のみんなや常連さんに明るく支えられ、日々の暮らしに困ることは無かった。ギルバートを失っても、寄り添ってくれたり、元気づけようとしてくれる人、導いてくれる人が行く先々で待っていてくれた。
だが、ソフィアの征く道は不条理と暴力と血にまみれていた。
赤子すら躊躇いなく粉砕の魔術で砕いて進む紫紺の瞳の乙女……あちこちで『紫紺の瞳の災厄』のおとぎ話が残り、不吉の象徴になるのも頷けた。
身体があったなら、ユリシスは、最早何の涙か説明しつくせないあらゆる苦痛の声で泣きつくし、また容易く切り刻まれる人の体と鮮血に嘔吐を繰り返しただろう。
両手で顔を覆い、目を逸したいのに直接脳裏に浮かぶように、心の内側から中心からその映像風景は湧き上がってきて止められない。
メルギゾーク魔道大国建国は覇道。殺戮と粛清を繰り返して短期間にまとめ上げられた。
たった一人の魔女──紫紺の瞳の女王に世界が震え、恐怖したと言っても過言にはならない。
流れ行くソフィアの記憶でこらえきれないものの一つとして、たまに感覚が繫がる点だ。
わざわざ剣を持って見せしめに権力者の首をはねて見せるソフィアのパフォーマンスの際、眺めるだけのはずのユリシスの感覚的意識、感触が繋がることがある。
皮膚を肉を、がつんと手応えのある骨を切り裂き、血しぶきがこちらの頬を叩く感触を生々しく味わうはめになる。記憶のはずなのに。
そんな時はうずくまる思いだった。
生あるものの命を奪い尽くす。
赤子だろうが今日明日が余命という者の命も強引に刈り取る。老若男女問わず、罪の有無も省みず、倒すと掲げたその国にいたというだけで躊躇なく殺してまわることがあった。
──そうして、肉体から抜けてゆく魂を……精霊を、ソフィアは満足そうに見る。
ソフィアの蛮行を誰かしらもなく、逆に、精霊にとっての“善行”であり、精霊の愛し子として相応しい行動と慄きながら噂する。精霊のための女王。さすが精霊の愛し子、世を、大地を精霊で満たすために人を狩る──と。
ソフィアの記憶は続く。
十六歳で帝国を討ち滅ぼしてメルギゾーク王国を興した。
その後、神秘的で美しい外見を利用され、ゼヴィテクスの興した宗教の始祖に祀り上げられていた姉シーラと再会する。
ソフィアはソフィアで、シーラはシーラで……双子の運命は非情にすれ違い続けた。
双子の辿る暗い宿命に疲弊するユリシスに、短命ながら苛烈かつ過酷な他の七人の女王達の記憶も襲いかかる。
時代や順番もでたらめで、まるで走馬灯のように様々な、象徴的な記憶が浮かんでは消え、浮かんでは消え──ユリシスを苦しめる。
八人分の女王達の記憶は、どれ一つとして幸福と呼べない。普通の暮らしですらない。
薄汚れた陰謀と裏切り続き、結局は殺戮が目の前に広がる。そこには初代の囁きかけもあった。
唆し、これぞ正しい道と己と同じやり方を示すのだから、殺戮も終わるわけがない。それは特に最後の女王を除く六人において顕著で、彼女達は人生の大半を初代の言いなりで死んでいく。
この魂を通してどれほどの数の精霊を開放したか……否、もう何百万人を殺めたのか──一代一代積み重なる。それぞれ、一人殺し、二人殺して、十人百人を殺すと躊躇いも消え、何万人もの人々をただの一発の魔術で消し去る。
もうやめてと何度叫んだか知れない。しかし、今のユリシスには体も無ければその心の所在もわからない。
叫んだところで既に終わった遥か昔の出来事、何の意味もない。それでも「やめて」と叫ぶ以外、何もできなかった。
その殺戮に、どんな理由があってまかり通っているのか理解が追いつかない。
ユリシスにある夢は「人を笑顔にすること」だ。ギルバートも褒めてくれた。それが砂糖菓子のように溶けて消えてしまいそうだ。
目の前に浮かんでは消えていく紫紺の瞳の少女達が生きた世界は──ユリシスの人生を生ぬるいと高みから見下ろしてくるようだった。
八人分の──十六の紫紺の瞳がユリシスを真っ向から見つめ、試してくるようだった。身じろぎすら出来ない。逃げ場もない。
うつむくような思いではあったが、実際のところ、心の底には反抗の芽がちゃんとある。
その点、他の女王達ならば子供の頃から聞かされ続けた初代の囁きを、ユリシスは僅かも触れずに自我を確立できた強みがあったせいかもしれない。
フツフツと湧き上がるものをユリシスなりに感じながら、視界はまた別の女王の記憶を押し付けはじめる。
──まずは『音声』がユリシスの意識に侵食してくる。
「なんということだ!」
誰とも知らぬ、老けた男の声は怒りに満ちている。
「なんということか! 我らが代に本物の紫紺の瞳の乙女が降臨するとは」
やがて、はじめに見ていた前代の──八代目たる最後の女王ディアナの記憶が再び断片的にユリシスの前に広がりゆく。
「ついにきてしまったのか」
「なんと──なんたる不運……!!!」
──不運……?
ポツリと浮かぶ疑念。紫紺の瞳の女王が現れる度、国は一層栄えたはずだ。紫紺の瞳の乙女は歓迎されていたのではないのかとユリシスは思う。同時に、女王達の短命さに思いを馳せる。
視界は暗いまま、声だけが響いて聞こえてくる。
「いや、大丈夫、大丈夫だ」
「我らは何百年と研究研鑽を重ね、いよいよ完成を間近としている……!」
「幾度と……二代目より六度も“失敗”を重ねたが、今代八代目こそ、紫紺の瞳の女王、さいごの時ぞ!」
──これを過去世はいつどうやって聞いたんだろう……。
ユリシスは疑問に思うが、ぼんやりと『精霊の目と耳で遠くを覗き見たのかな』と理解した。そういうことをこの魂は初代からやっていて、その上でたった一人で戦い続けてきたのだ。
この手の反女王の会合は傍聴対策に精霊のいない場所でされることが多い。代々あまり拾えた例は無い。
だからこれらの声は、八代目にしてもたまたま聞きおおせたのだ。
「初代をのぞき、他の女王たちの統治は十年以下におさえ、止めてきたのだ、八代目はそうだ、八代目でこそ、悲願を達するのだ」
「女王が現れるたび、人の知恵も努力も踏みにじられ、それまでのすへてが否定され、淘汰されるしかなかった。しかし、この八代目でこそ、その肉体の暗殺にとどめず、転生を許さぬ魂魄の消滅を!!」
「──魂の滅殺を!!」
オオーッと雄々しく応じる鬨の声は百や二百で効かないだろう。最早決起集会だ。
「精霊の支配など不要! 人の国を人の手にかえすのだ!!」
「今こそ、人のため、子々孫々の繁栄のため、紫紺の瞳の女王ディアナディアには、死では足らぬ消滅を!!」
……紫紺の瞳を引き継いだが最後、その怨恨の念もすべて背負い込まねばならない。
ただ、瞳の色が紫紺の色をしているだけで、不吉だと罵られる。魂の消滅を願われる──。
それが事実。積み重ねられ、繰り返された本当にあった事──。
巨大な力で絶大な権力をもって大陸に覇を唱えた魔道大国メルギゾーク。
たった一人で国を容易く滅ぼしてみせる圧倒的カリスマたる紫紺の瞳の女王。
そこしれぬ大魔術師たる紫紺の瞳の乙女──。
ユリシスは淡々と見ているが、それとは別に頭の中に再生される自分の記憶の中の声がある。
ネオのおばあさん──オルファース総監にこぼしたユリシスの、自分の声。
『──た、例えば、その大きくて素晴らしいものが、大罪を犯して在るのだとしても、それは、使われなければ、意味が無い……ですか? 使えば罪になるのに……使ってはならない、事はないですか?』
──つまり……。
『大きすぎる力は、あるだけで罪か?』
八人の紫紺の瞳の女王の記憶を眺め、思わずにはいられない。
──存在そのものが罪……?
また、声が聞こえる。
「……敵十万をお一人で……か」
「あの女王は何もわかっておらんな」
「槍を持って二十年……腐らせるばかりだ」
「偉大な魔力も初代の頃のように人の足りぬ時は良かったであろう……しかし今、各々が磨いた力、知恵をふるう機会がまるでない我々は、どうしろと」
「立身出世の機会は全くないな」
「女王がひとりでなにもかもやってのけてしまわれるからな」
戦後処理の詰めも終え、会議の場を去れば後ろから聞こえる声がある。
「陛下、お気にとめられぬよう──」
「気にしていない」
意識して顎をあげ、歩幅広く歩くディアナ。
声だけのイメージが一気に色づいて映像が加わる。王城の廊下をざっと描きあげ、視界が明瞭になる。
広い廊下、長く敷かれた絨毯の上を足早に進む。
あんな陰口は聞いても仕方がない。それに、彼らの言っている言葉に嘘偽りは無く、本当のことばかりだ。
「はっきりしている」
先を歩くディアナが歩調を緩め、止まると背後のキリーを見上げた。
「私の理解者は一人いればいいんだ」
にこりと笑って見せるディアナ。
強がりではなく、真実。本心。
視線を上げてキリーの瞳の色を覗き見る。
「……」
キリーの心配が募るばかりだということを察した上でディアナも言っている。
そもそも、暗殺の手は四方八方から伸びてきている。
過去の女王達もそうだった。いかに強大な魔術の使い手であっても、常人からすれば無尽蔵に見えるほどの魔力を持つ女王でも、彼女達は生身の人間に違い無く、等しく心をそなえている。
肉体的な消耗、心の疲弊は止めきれない。
──そう、私達は……私達にだって、潰れそうになりながら前を見たいと願う心がある。
ディアナの晩年は諦念と悔恨の念にかられるばかりだった。どれほど精霊と通じ、強大な力を持っていても、変わらないのに──そこかしらの民草と同じなのに。
──……同じ、なのに。
過去の女王達と自分の記憶を照らしてしまって沈むユリシスの意識をよそに、景色はまた変化する。
しんと静まり返り、音がしない。
先程よりもずっとずっと深い闇の底のようだ。
──暗い。
しばらく待っていると視界に青白い横線が走ってゆっくりと見えてくるものがある。瞼が開きゆく。
地面が顔スレスレにある──否、倒れているのだ。ならば今、意識を取り戻して目を開いたところだ。
黒い床には瓦礫や埃が散らばっており、壁などから青白い光が降り注いでいるのだとわかる。
ず……ずず……と、音がやけに遠く、くぐもって聞こえた。
それが、今ユリシスが重なっている記憶の主人公──ディアナの最期が近いと知らせてくる。
微かに湿り気も含んだ音が、倒れ伏した後、利き腕を目の前に引きずり寄せている為だったとわかったのは、時折暗転する視界に入り込んできた親指と人差し指しか残らない血濡れた手が見えたせいだ。隙間に白い骨が見え、中指以下どこぞに落としてきたのだとわかる。
「……は…………はぁ……ぅ……」
宿主のか細い声をユリシスはただ聞く。
すでに初代から七代目までの女王達の今際は見た。大半が誰ぞに殺されていたが、何度も繰り返し見るうちに「それもそうかも……」とユリシスは醒めた思いもあった。それほど彼女達は殺しすぎていた。半ば初代の傀儡にも見えたが、大陸中の国々を何代もかけて討ち滅ぼし、飲み込んできた。彼女達の覇道は一身に復讐と恨みつらみを受け取るにしても、それでもなお生ぬるかろう。
だが、この八代目ディアナは少し違うらしい。次は大陸外に出るか、小国連合程度の敵しかいなかったという点もあるが、国の外へ出なかった。初代すら黙殺して──。
ランダムで映し出される景色には最期の少し前の時系列も見たのだ。
成熟した王国で、右腕のキリー宰相だけを信じ、国を導く女王ディアナ。国を、民を守るべく魔術を展開してみせる。
頭の中で騒がしい過去の女王達をかわしながら、ディアナなりの理想を追う姿は、古いもの、既存のものを叩き潰すばかりのソフィアとは違うとユリシスなりに感じてはいた。
体調を崩していた頃にタイミングを見計らったかのように押し寄せる青白い獣の群れ。獣を皆、変異体と呼んでいた。
変異体は魔術の、世界の根幹たる精霊を食いつぶす恐ろしい化物だった。
二千年の栄華を極め続けた王都メイデンを蹂躙する変異体を、精霊が失われゆく中、結局、強大な力を持つ紫紺の瞳の女王が迎え撃つ。
民をすべて逃がし、変異体の発生源である地下深い施設をぶち破ってきたのだ。
その、底で──。
「もっと──もっと──もっと、いっしょにいたかった…………」
震える唇から漏れる声を、ユリシスは聞く。
二千年後のこの場所を、ユリシスはゼクスと共に訪れたことがある。
「はぁ……たまらない……後悔しかない……」
視界が揺らいで頬を涙が伝っていく。
血さえ枯れようとする身体から、止めどなく涙があふれる。
重なる意識に、発声できなかった声が響く。
『もっといっしょにいればよかった……この想いをすべて伝えておけばよかった……ひとりで死にたくない……ひとりできえなたくない』
──……ただの人なのだ。本来、脆く危うい、他と等しく、ただの人に過ぎない。
どれほど強大な力を持って権力を欲しいままにしても、過去世の記憶が何十何百年分あろうとも、ただの人──一人の二十歳に満たない年若い女にすぎない。
「ひとりは……いや……」
全身の魔力はとうに枯れ、あちこちの骨は砕け、ちぎれかけて垂れた肉、抑えきれずこぼれる臓腑、撒き散らしてしまった血液……その中、うごめくので精一杯。
そういった遺骸ならいくつ見下ろしただろう。今度は己がその番。
このような状況にもかかわらず、彼女の中には自嘲めいた感情が沸き上がってきているのをユリシスは感じる。
同時にディアナへ冷酷な声が届くのだ。
──だから言ったではないか、初代に代われと。私が良いようにしてやったものを。
その声にユリシスは聞き覚えがある。──そう、ソフィアだ。
メルギゾーク魔道大国を興したソフィア・リア・メルギゾーク。六人の女王達を祖父から学び取った洗脳技術で言葉巧みに籠絡し、破壊を繰り返して思うままに国を広げた人物。
しかし、ディアナには聞こえていないのか無視しているのか、声に反応しない。
ディアナの身に残るものなんてもうほとんどないのに、眼窩に残った紫紺の瞳は海の底にあるよう。とめどない涙に沈む。溢れてとまらぬ。枯れ果てた身のどこから湧き上がるのか──。
「ああ、キリー……あいたい、あいたい……」
生きたい理由が実はそれだったなんて──とディアナにはやはり自嘲的な思いもかすめている。
ずりずりと手が動く。
指先に力を込めて、心を床に文字として刻んでゆく。
微かに残った魔力と呼びならわす魂を遺す。
──いつか、読んで。いつか、気付いて。届いて。
ただずっといっしょに、とろかすだけの時をともにいたかった。それだけだった。
何もいらなかった──。
もう声は出ない。かすれた呼気が漏れるのみ。なのに、涙は止まらないのだ。
──ああ、でも、だから、次の生があるのならば、紫紺の瞳の乙女としての地獄のような檻から解放されますように……。
八代目女王ディアナディアの祈りに近い願い。
──愛する誰かとただその人生を余すことなくともに、ただ笑って過ごせるように……。
女王として、宰相としての2人でなければ、もっとみられたかな……。
たまにその頬を緩めて微笑みかけてくれた。ディアナがそこに安らぎを見ていたことをきっと彼は知らない。だって伝えられなかった。
逃げてくれと言った時、別れ際のキリーの苦渋に満ちた顔を思い出す。
──ちがう。それじゃない。
『笑って、キリー……』
また、伝えられもしない。声ももう出ない。
──……彼に笑顔を……あの人に笑顔を……。
ただ2人、笑いあって長い時を生きたかった……。
ああ、ああ……それはなんて、夢のよう……。
そうして、ディアナディアの記憶は幕を閉じた。
たき火を前にして温かな光を顔に浴び、苦しい思いを飲み込んでユリシスはこう言ったことがある。
『私の夢はそれでも、人を笑顔にする事だよ』
──そうギルバートに語ったことを、ユリシスはゾッとしつつも静かな思いで回想する。