第3話~
―連合艦隊司令部―
「米国相手に長期戦はできんな…しかしどうすれば頼みの吉田は日米開戦の責任をとり辞職してしまった…堀も予備役となっては…」
そう呟いていたのは、連合艦隊司令長官山本大将であった。
現状で海軍大臣は繁田太朗、軍令部総長は永野大将であった。しかしこの山本の同期の二人は対して当てに出来るものではなかった…
山本大将は完全に孤立し悩んでいた…今帝国海軍も軍令部もマーシャル沖海戦の勝利で気が大きくなっていた。
「一体米国との早期戦争終結させ和平するためには一体どうしたら…」
山本はしばらく悩んだあげく、一言呟いた…
「堀に聞いてみるか…」
そうして山本は部屋を後にした…
―某料亭―1800―
山本は堀を良く使っている料亭に呼び出し顔を合わせると堀はまるで山本の心中を察しているかのように会話を始めた…
「山本よ!米国とやるからには連合艦隊に全ての命運が掛かっている!」
その言葉に対して山本は…
「私もその事は良く解っている。しかし長期戦が無理だと言う事も解っている。もって一年か二年…」
「確かに…長期戦は無理だな…山本何か考えでもあるのか?」
「無くもないが…それをどうすべきか堀に聞こうとおもってすると堀は冷静に話をはじめた…
「山本よ…確かにそうだが米国のふところにいきなり飛び込んでいくんだぜ!しかも空母は勝っていてもオアフ島には飛行場だってある、第一軍令部が認めないだろ。」
「軍令部は何とかしてみせる!」
「山本…もしハワイを占領する気なら陸軍の協力だっているんたぜ!どちらにせよ八方ふさがりだよ…」
山本は黙りこんで腕をくみ深くため息をついた…
山本のその姿をみた堀は山本に言い放った。
「確かにな山本、俺から見てもハワイをやるしかないと思っている…ハワイをやって米国が和平に応じるかもわからん。しかしハワイを占領するしてもだそれなりの準備をしなければならんのだ!今は陸軍が協力するようにもっていく材料が欠けている…海軍が独自で材料をつくるしかないだろうな!」
「はたして、そんなものが存在するのだろうか…」
「今解っている事は陸軍がその気にならないとすればやはり自軍にかかるリスクを考えているからだろう…しかしながらそのリスクを先に海軍が除いてやればいいと思う。」
山本は堀の話を聞いて訳が解らなくなり頭を撫でまわし口を開いた…
「私にはさっぱり解らん!だいたい堀の考えが読めん!一体どうするというのだ?」
「だからオアフ島の飛行場に対抗する為に砦をもう一つ作ってやるんだよ!そうすれば陸軍も納得するんじゃないのか?」
山本はそれを聞いて考えたそしてある島の名前が出てきた…
「ミッドウェイか…を占領するというのか?」
「確かにそれもいいだろう!しかし俺の考えは砦とは空母の事だよ!それでさらに身近な所から陸軍を援護してやるのさ!」
「確かに堀の言うとうりだ!それならば、ハワイ占領の切り札になる!」
「現段階では軍令部と陸軍が納得さえすればハワイをやれる。だから空母をつくり、さらにミッドウェイを占領するのが次善の策かもしれんな!」
そう堀が言うと山本も納得したらしく二人は深く握手を交わしてその日の会話はおわった。
山本は帰りの車内で。
「米国との早期和平にはまずハワイを占領するのが最善の策だと言ってくれた!忙しくなりそうだな!楽しみだ。」
山本は司令部に帰るとさっそく起案書を作ると軍令部に提出した。すると案の定軍令部はあっさりとハワイ占領を否定してきたのである。
なぜなら軍令部は南東太平洋にしかけて米国とオーストリアとの間を遮断させる〔米豪遮断作戦〕をやろうとしていたからである。
しかしなが山本大将は全く興味がなくさらに軍令部を納得させる為連合艦隊戦参謀の渡辺中佐を派遣した。
軍令部側が対応したのは航空参謀の三好中佐であった。
渡辺中佐は始めにハワイ占領に対する理由を説明した。
「三好中佐!いくら南方資源を確保したって今の日本では米国を相手に戦うのは無理だ!早期に先手をとり終わらせる必要があるのだ!だからハワイ占領をやるのだ!」
そして渡辺中佐の話を黙って聞いていた三好中佐は落ち着いて対処した。
「渡辺中佐、君が言いたい事は良くわかった。しかしながらもう戦争は始まっている。米国だって馬鹿じゃないだろ?防備を固めているに違いない。そんな場所にあえて行くなんて自殺行為としか思えない!」
これに対して渡辺中佐は反論した。
「貴様何を弱気な事をそれでも帝国軍人か!確かに防備を固めているかもしれない、だか空母の数では圧倒的に有利なんだ!」
「確かに空母は圧倒的有利かもしれんが、こちらとしては渡辺中佐!ハワイを占領する気などさらさらないのだ!斬減邀撃と海軍は決まっているんだ!」
渡辺中佐は今にも爆発しそうだったがグッとこらえて三好中佐に問いたざした…
「まったく軍令部は石頭ばかりだな!でわ聞かせてもらうが一体いつまで守っているのだ?」
「そんなもの!米国が降伏するまでだ!」
三好中佐も少しムキになっていた。
「何を言い出すかと思えば、降伏するまでってあのな三好中佐!攻めてもなければ米国からすれば、攻めても来ない腰抜けに一体何処の国が降伏するだ!?軍令部は寝ぼけているのか?」
二人の会話はまだまだ続いた次第に熱を帯びて険悪な中会話が進んでいった。
そして三好中佐は苦し紛れに一言放った…
「とにかく今は、ハワイ占領は危険すぎる!しかし〔米豪遮断作戦〕は陸軍だって同意しているのだ!戦争というのは海軍だけではできんのだ。わかるだろ?」
「言いたい事は良く解ったよ、しかしながら俺だって山本長官に頼まれてきているんだ!無理と言われて引き下がれないんだよ。だから山本長官に聞くから少し待ってくれ!」渡辺中佐はしばらく山本長官と電話をしたのち受話器を置き三好中佐に山本長官の意見を話した。
「山本長官の意見を伝える!今回は連合艦隊が折れる!しかし、それには条件が2つある。一つはハワイ占領は山本長官の信念であるだから軍令部が近い将来必ず陸軍を説得しハワイ占領を具体化する事。もう一つ、連合艦隊はハワイ占領に変えて、今回はミッドウェイを攻略占領する!それに対して軍令部に承認していただきたい。この条件がのめないと言うのなら司令長官として国防に不備が生じ最終的には辞職するほかないと言っておられる!」
三好中佐はしばし困惑したが、今ここで聞いても三好中佐個人で決定をくだせないので、三好中佐は渡辺中佐を連れて軍令部次長の伊藤中将の部屋に行き渡辺中佐の話について検討する事にしたのである。
まず、口を開いたのは伊藤中将だった…
「確かにハワイ占領の必要性は認めよう!だが陸軍を説得できると言う約束はできない!!」
すると隣で聞いていた渡辺中佐が伊藤中将に対して提案をしてきた。
「でしたら、只今改装中の大和型三番艦《信濃》を空母にしては如何ですか?ハワイ占領に対して軍令部は依存はないのでしょ?だから、《信濃》を空母にしてそれを中心に護衛艦隊を編成し陸軍部隊をしっかりと護衛致します!ですから陸軍と交渉して頂きたい!
渡辺中佐が必死に説得していると伊藤中将は、その熱意にひかれて伊藤中将は山本長官と渡辺中佐に対して粘り強く陸軍と交渉する事を約束した。
渡辺中佐も伊藤中将の決意に対してこれ以上言う事はないと思い頭をさげて退出しようとしたが三好中佐が意義を唱えた…
「ハワイ占領は構わないがミッドウェイは賛成しかねます!ミッドウェイはハワイから近い!であるからして長く持ちこたえられない!」
この後しばらく討論は続いたがなんとか伊藤中将が納めて事なきをえた
そして帝国海軍は昭和17年11月にポートモレスビー攻略、12月にミッドウェイ攻略作戦を昭和18年には米豪遮断作戦を本格的に行う事になったのである。そして帝国海軍では、空母《赤城》の修理を急がせ、10月30日に終了した。
そして帝国海軍は〔ポートモレスビー攻略作戦〕を発動させたのであった。その結果、〔ポートモレスビー攻略作戦〕には、空母《翔鶴》《瑞鶴》を率いる第三航空艦隊が行う事になり司令長官は、山口中将である。
あくまでも本命はミッドウェイ攻略なので、先日軍令部からは、三、四隻の空母を求めてきたが山本長官はこれを拒否した。理由としては、連合艦隊が本土防衛に空母をのこさなければならないので、米国にとってもハワイ防衛の為に空母を残さなければならい。ニミッツ大将はオーストリア方面に全ての空母を出す訳にはいかないだろうから、ポートモレスビーに米国空母が来たとしても一隻が限度であろうと考えた。
仮に米国が二隻出して来たとしても山本長官の信頼が厚い山口中将ならば戦上手だから負ける事はあるまいと考えていた。
もし本当に二隻出してきたのなら、こちらとしては戦況を見て南雲中将に機動部隊を率いて出てもらい総数五隻の空母でポートモレスビー及びミッドウェイを叩く。
かなり長くなってしまいすみません<m(__)m>