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努力

作者: もち。

私は走っている。雨の上がったばかり、濡れた地面にできた水溜りに光が差し込み始めている。そんな光の筋が屋根からビルからに次々に伸びているのが見える。両脇には白いガードレールがあり、雨に濡れた草がアスファルトのひび割れから見えている。ここは比較的緩やかな坂道で、周りの景色を俯瞰できるように少し高くなっている。そんなところだ。カバンの脇にしまった折り畳み傘は濡れ、私の靴も然り、スカートも一部雨が滲んで色が変わっている。そんな状態の私、しけてベタつく髪を靡かせながら、昔でいえばみっともないなんて言われるかもしれないが、今パシパシと足音を立てて坂を走って下っていく。下がれば下がるほど空が高くなり家が伸びていく。最終的に私は下まで降りて、いつも通り誰もいない街を満喫する。昔は賑わっていたこの街も今や私1人である。ただ、私は農家の生まれで農作業は慣れているし、人が所有していた畑や種は山ほどある。季節ごとの食物を育てれば食料には困らない。動物もいる。水の確保も川が流れているからその川の水を利用すればよい。何なら人々が消えた直後から非常な努力をして一部開墾することができた。そこでも作物を育てている。そこで育てているのは稲だ。陸稲で栽培するにしても比較的水がいる。よって面倒でないようにそこに植えたのだ。しかしそんな中でも少し問題なのが綺麗な水が作れないことだ。体を洗うのも、飲み水を汲むのも山の上へ登らなければならない。先ほど坂を下っていたのも飲み水を汲みに行った帰りである。2リットルのペットボトル10本をカバンに詰めて走ってきた。ただ他の点においては大して困ったこともない。もし作物が不作でも保存食も余るほどあるし、鎮痛薬もビタミン剤も風邪薬、精神安定剤から睡眠導入剤、さらには生理用品までなんでも残っている。そんなこんなで1人の時間を勝手に使い、両手を広げてクルクル回りながら倒壊寸前の、ひび割れ、蔓の生い茂った建築物の隙間を移動していく。回っていると色々なものが見えてくる。2階から逃げようとしてベランダの柵に引っかかって死んだ、一部乾いた肉片のついた白骨遺体や、私が隅に片づけた人骨の数々。私はそのうちの一本を取って、皆が亡くなる寸前に舗装され、まだ黒さを保つアスファルトに対し、こう書いた。「私は生きる。」

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